ハイブリッド車や電気自動車がゆっくり走っている時、「ヒュー」とか「ヒュンヒュン」といった不思議な音が聞こえてくることはないだろうか。これは「車両接近警報装置」と呼ばれるもの。
機械が発生するノイズではなく、人工的に作りスピーカーから流している音だ。音を発する目的は、歩行者などにクルマの存在や接近を知らせるためである。
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しかし、純粋なガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車からこの音を聞いたことがある人はいないだろう。なぜなら、音を発する装置が装着されていないからである。
どうしてハイブリッド車や電気自動車には車両接近警報装置が必要で、純粋な内燃機関車には必要がないのか。
文/工藤貴宏 写真/TOYOTA、NISSAN
【画像ギャラリー】2010年に初めて車両接近警報装置が標準装備された日産初代リーフをみる
なぜハイブリッド車には「人口の音」が必要?
なぜ、ハイブリッド車や電気自動車には車両接近警報装置が必要なのか? その理由は、エンジン音に関係する。
純粋な内燃機関車であれば、走行時は常にエンジンがかかる構造になっている。だから走行中は常にエンジンが音を発し、周囲の人が音でクルマの気配を感じ取ってくれるのだ。
いっぽうでハイブリッド車は、低速走行時はエンジンを止めて走ることもあり、その際はエンジン音を発生しない。そもそもエンジンを積んでいない電気自動車や燃料電池車も然りである。だから、あえて人工で作った音を、スピーカーを通じて車外へ流しているのだ。
一般的に人間が周囲の状況を把握するために大きな役割を果たすのは視覚(目で見る)だが、視界に入ってこない後方の様子などを認知するのには聴覚(耳で聞く)に頼ることになる。
2代目プリウス(2003年~2011年/全長4445×全幅1725×全高1490mm)
かつて、初代や2代目の「プリウス」には、車両接近警報装置が備わっていなかった。狭い道路において後方からまるでゴーストのようにエンジンを止めて無音で忍び寄るそれらに気付かず、振り向いたら近くにクルマがいて驚いたことがある人も少なくないに違いない。
そんな安全面において好ましい状況を防ぐために、車両接近警報装置が組み込まれるようになったのだ。静かすぎるゆえのウィークポイントを解消するための対策といっていいだろう。
写真は車両接近音のイメージ。プリウスでは3代目モデルで初めて搭載された
もっと深刻なのは、視覚障害を持つ方々である。視覚に頼れない彼らは、音で状況を認識することになる。しかしエンジン音を発しないクルマは認識が難しく、彼らの安全のためにも車両接近警報装置が必要とされたのだ。
音はメーカーによって異なるが、モーターが発する音を模したもの。騒音にならないように配慮しつつ、クルマが走行していることをイメージさせる音になるように工夫している。
また、車速の変化に応じて周波数を変えることで、速度変化も表す仕掛けになっている(車速に応じて音量が上がるタイプも存在)のもポイントだ。
「『車両接近通報装置』とは、低速でモーターによる走行をしている時に、エンジンルーム内に取りつけたスピーカーからモーターが回転するような音を出力させ、歩行者に車両の接近を知らせ、注意を促すものです」とトヨタはWEBサイトで説明している。
実はメーカーごとに違う!! 接近音が発生する「条件」
そんな車両接近警報装置は、どんな状況で作動するのか。音を発生する車速域について各社の説明を見ると、
ホンダ:約20km/h 以下で走行しているとき。
トヨタ:時速25km以上になると止まります。
日産:発進時、車速が30km/h以内のとき。減速時、車速が25km/h以下になったとき。
スバル:発進時車両が動き出した時から24km/hまで音を発生し、速度に合わせて音量・音色が変化し、速度感を表します。減速時は速度が21km/h以下になったら鳴り始めます。
メルセデス・ベンツ:30km/h以下での走行時。
三菱:EV走行時、車速が約35km/h以下のとき。
とそれぞれ異なるが、保安基準では「発進から20km/hに至るまでの速度域及び後退時」に音を発することが必要とされている。それ以上の車速域に関しては各社の裁量というわけだ。
音を発するのはあくまで駐車場や狭い道などでクルマと人が混在するような状況を想定したもの(スバルは「車両の前後左右から2m以内の場所にいる歩行者にしっかりと音が届くように」と説明)であり、幹線道路などでは機能しない。
車速が上がるとタイヤが発生するノイズが大きくなりエンジンを掛けなくても走行が無音でなくなることも理由のひとつである。
また、エンジン音の代わりと考えているので、EVは常に作動するが、ハイブリッドカーではエンジンが作動していないときに音を出す(エンジン作動中は人工音を発しない)のが基本だ。
初の標準搭載は2010年発売の日産 リーフ! 接近音は昨年より完全義務化
車両接近警報装置が標準装備された日産初代リーフ(2010年~2017年/全長4445×全幅1770×全高1545mm)
そんな車両接近警報装置だが、登場したのはここ10年ほどだ。最初に標準搭載されたのは、2010年12月に発売された日産リーフの初代型。電気自動車の静かさゆえのウィークポイントを補うアイテムとして採用された。
ハイブリッド車では、トヨタが2010年8月に3代目プリウス用に設定。タイミングとしては日産 リーフよりもはやいが、こちらは標準採用ではなく販売店オプションとしての用意だった。メーカーの市販車として展開されるのは、このプリウスが初めてのケースだ。
いずれも同年1月に国土交通省が策定した「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」に沿って開発されたものである。
その後、国土交通省は道路運送車両の保安基準を改正し、電気自動車やハイブリッドカーへの車両接近警報装置の装着を義務化。新型車では2018年3月8日から、継続生産車では2020年10月8日から装着が必須となっている。
それを受けて現在では、低速走行時にエンジン音を発することのない全ての新型車に車両接近警報装置が装着されているのだ。
電動車の「音」は今後ますます身近に! 個性化進む可能性も
車両接近警報装置の義務化以前にあった車両接近通報音の発音保留スイッチ。(写真:日産現行型シーマ)
そんな車両接近警報装置だが、かつて用意されていたタイプと義務化以降のタイプでは大きな違いがあるのをご存じだろうか。
それは「キャンセルスイッチ」の有無だ。かつての車両接近警報装置は、ドライバーが任意の操作で音の発生をオフにして低速走行時に無音にすることができた(作動オンがデフォルトなのでシステム再始動時は自動的にオンになる)。
いっぽう義務化以降のタイプにはキャンセルスイッチが禁止され、ドライバーの操作で音を止めることができないのだ。理由はもちろん、安全を最優先に考えているためである。
歩行者に車両の存在を感じてもらうためのエンジン音の代わりといえる車両接近警報装置。電動化車両の増加に従い、今後はますます拡大していくことは間違いない。
さらには演出として、高級車はよりエレガント、スポーツカーはひときわ爽快な音とするなど、音の個性化が進んでいく可能性もゼロではないだろう。
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特にタイトルは記事の顔なんだから、正確に書かないと記事全体が胡散臭く感じられてしまう。