この記事をまとめると
■2015年以降、日本でもタクシーのベース車両を自由に選べるようになった
一時期「稼げない仕事」だったタクシー運転士がアプリ登場で「稼げる仕事」へ! ただし忙しさはハンパない!!
■タクシー車両の構造要件があった日本では長らくクラウンやセドリックが活躍していた
■いまの法人タクシーではトヨタJPNタクシーが大多数を占めている
かつてタクシーに使える車両は限られていた
2015年にそれまで存在していたタクシー車両の構造要件が廃止され、それまでタクシー車両として使える車両は限定されていたのだが、廃止に伴いタクシー車両を自由に選ぶことができるようになった。
後部ドアの開口面積や、後席座面形状などの要件が残っていた時代の話になるが、初代トヨタ・マークXが登場したとき、個人タクシーとして使いたいという運転士さんがいたのだが、ドア開口面積が足りずそのままではタクシーとしては使えないということで、ワンオフで開口面積を拡大する改造を行って無事タクシーとして使えるようになったというケースがあったとのこと。登場して間もないころの話であり、以降は販売店で開口面積を広げる改造キットが用意されたと聞いている。
2005年に日本でもレクサスブランドが登場したのだが、ブランドステイタスを高めることも、デザイン重視ということもあるのだろうが、タクシーとして使われるのはいかがなものかという話もあったとも聞いているが、初代ISなどはドア開口面積がタクシー車両要件をクリアしていなかった。
2006年に世界市場では4代目、国内市場では初代となるレクサスLSが日本でもデビューした。それまでもLSの国内仕様のトヨタ・セルシオが個人タクシーとして使われることはあったが、LSもまたタクシー車両としては表立った販売は控えるような動きがあった。それでもセルシオからLSへ乗り換えたいという運転士が出てきて、デビュー間もないタイミングで個人タクシーとして販売したレクサス店があったそうだ。
タクシーは定期的に運賃メーターが不正改造もなく正しく作動しているかをチェックするため、公の期間で「メーター検定」を受けなければならない。新規にタクシーとして使う車両ももちろん必要となる。検定所へ車両をもち込み、ローラー上でタイヤを空転させてチェックするのだが、初代LSを初めてメーター検定にもって行ったところ、運転を支援するデバイスが作動してしまい、ローラー上で空転せずに停まって動かず検定試験ができないというトラブルが発生したという話を聞いたことがある。
また、初代アルファードがデビューしたころに、多人数乗車できるとして「ワゴンタクシー」として導入したときは、その当時はクラウン・コンフォート系やセドリックといったFR車がタクシー車両であったので、FFのアルファードがタクシー車両として導入されてタクシー会社の整備部門が困惑したという話も聞いたことがある。
タクシーは、都内23区あたりでは1台あたり年間10万km走るともいわれている。そのタクシーが準大手でもひとつの車庫で100台ほど保有することも珍しくないので、日々法定点検以外にも、さまざまな整備や修理事案が発生するので、効率化をはかる意味でも最低車庫単位でタクシー車両の統一ということが有効ともされているのである。
いまは灯火類のLED化が進んでいるが、バルブが主流のころは営業運行中の球切れは日常茶飯事であり、運転士はもちろん、タクシー会社の事務所にいる運行管理者でもバルブ交換に対応していた。そのため、車庫にはいつでもバルブなど最低限の部品がストックされるのだが、やはりそこでも車両統一というのがメリットとして大きくなるのである。
構造要件というものが設けられていたこともあり、日本では長きにわたりその要件をクリアしていたクラウン(コンフォート系やコンフォート系ベースのセダン含む)やセドリックがタクシーとして活躍していた。また、タクシーは大手や準大手を中心に自社で車両整備や修理を行うのが基本となっており、事業者ごとに車両を統一することは日常運行においても利便性が高いのである。
たとえば物損事故でドアを凹ませたとしても、新品のドアパネルへの交換といった、新品パーツへの交換というものはタクシーではほぼ行われない。過去に都内のタクシーは事業者や無線グループごとなどで、別々の派手なカラーリングとなっていたが、たまにタクシーがリヤドアを自動(運転士手動)開閉しているときに、外側と内側でまったくドアの色が異なることに気がついたひともいたはず。タクシー会社の車庫には廃車となった同型タクシーから取り外したり、解体屋などから買ってきたドアがたくさんストックされており、それらのいわゆるリビルトパーツへの交換が原則となっていることもあるので、車種を統一してきたという経緯がある。廃車といっても実車はそのまま部品取りとして車庫の奥などに置かれることも多い。
「なんでもいいよ」といわれてもタクシーとして使われる車両は偏る
いまの法人タクシーでは、とくに都内ではどの事業者もほぼほぼトヨタJPNタクシーとなっているが、これはタクシー専用車と呼ばれる存在がJPNタクシーの一択となっていることも大きい。似たようなキャラでトヨタ・シエンタもあるが、こちらは一般的な小売り(マイカー利用)が中心となるので、JPNタクシーと比べるとドアの開閉頻度も異なるなど、タクシーとして使うまでには耐久性に疑問が残ってしまうようである。
「どんなクルマでも好きにタクシーにしていいよ」といわれても、現実的にはなかなかひとつの事業者で、車両調達(リースが多い)の面も含めてバラエティに富んだ車種を用意するということにはならないのである。
個人所有レベルでは需要低迷期に入ったともされるBEVだが、世界を見ればバスやタクシーといった公共交通機関の電動化のスピードは衰えを見せていない。インドネシアでは最大手のブルーバードタクシーが、全体から見ればまだまだ試験運用レベルだが中国BYDオート(比亜迪汽車)車両が導入されているなか、ベトナムのビンファストが自社タクシー向けBEVを使用する、自社傘下のタクシー会社とともにインドネシアでタクシービジネスをスタートさせている。
アメリカでは自動運転タクシーの営業運行がいくつかの都市でスタートしているが、この運行主体はプラットフォーマー系となっている。
香港では従来のタクシー会社のサービスに対する利用者の不満が高いこともあり、車両のBEV化を見据え、電子決済、アプリ配車サービスなど利便性を一気に向上させたいとの狙いもあり、新たに5つの事業者にタクシー事業の認可を与えて運行を開始している。一部事業者ではトヨタや日産のHEV(ハイブリッド車)も併用するようだが、事業者ごとに上海汽車や広州汽車(PHEV[プラグインハイブリッド車]のみ)、凱翼汽車の車両がタクシーとして使われる(上海汽車車両の採用が目立つ)。
香港のお隣ともいえる広東省深圳に本拠地を置くBYDオートの車両がないのが不思議なのだが、ここからさらに最終的に使用車両が統一されることになるかもしれない。
日本では現状都市部を中心にLPガスHEVとなるJPNタクシーがタクシー車両の中核を担っている(地方ではまだまだクラウン系タクシーが目立つが)。路線バスでは政府からの補助金交付もあり、まだまだ本格導入まではいっていないものの、試験導入レベルではBEV路線バスの導入が進んでいる。いままでは中国メインの外資系車両ばかりであったが、いよいよ大手日系メーカー製のBEV路線バスが営業運行を開始している。
ただ、タクシーについては、日本の路線バスにおいてBEVで存在感を見せるBYDオートでも「参入予定はない」といった声を関係者から聞こえている。中長期的には、路線バス同様にタクシー車両のゼロエミッション化は日本でも進んでいくものと筆者は考えている。
日系メーカーも含め、いわゆる香港方式でゼロエミッションタクシー(あえてBEVにはこだわらない)車両の絞り込みが行われるのではないかと筆者は考えている。
いずれにしろ、「なんでもいいよ」といわれても、まさに諸般の事情でいつの世でもタクシーとして街を走るクルマはなんとなくでも偏ってしまうようである。
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みんなのコメント
ジャパンタクシーのメリットはない。
なぜ、こんな車種を導入するのだろう。
シエンタの福祉の方が使い勝手がよく、
乗務員、乗客からの声もいい。