自動運転にまつわる連載企画、第9回となる本編は、トヨタの最新自動運転技術を搭載した新型MIRAIの試乗記をお届けします。
2021年3月に、ホンダは世界初となる公道で走行可能な「レベル3」技術「ホンダセンシングエリート」を搭載したレジェンドを発売しました。トヨタもすぐさま「レベル3」技術搭載車を発売するかと思いきや、発売されたのは「レベル2」。MIRAIとレクサスLSに搭載された「Advanced Drive」とはどのような技術なのか? どこが新しくて、なぜ「レベル2」に留まっているのか? 西村直人氏に試乗記をお願いしました。
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文/西村直人 写真/TOYOTA、西村直人
シリーズ【自律自動運転の未来】で自動運転技術の「いま」を知る
■トヨタの最新「高度運転支援技術」はあえてのレベル2??
2021年4月8日、トヨタ/レクサスから、将来の自動運転社会に向けた高度運転支援技術「Advanced Drive」が登場しました。
本連載ではこれまで自動化レベルについて国土交通省から発行された「自動運転車両の呼称」を用いてきました。それにあてはめると、現時点でのAdvanced Driveは「レベル2」の「運転支援車」に該当します。「現時点」としたのは、この技術がこの先のアップデートによって「レベル3」の「条件付自動運転(限定領域)」へ進むのでは……、と予想しているからです。
トヨタの新技術「Advanced Drive」が搭載され発売されたのは、レクサスLSとMIRAI。今回はMIRAIに試乗しました
今回Advanced Driveを搭載したのは、トヨタの燃料電池車(FCV)の「MIRAI」と、レクサスのフラッグシップセダンにしてハイブリッド車(HV)の「LS500h」、この2台です。ベースグレード車両から、MIRAIで55万円、LS500hで66万円それぞれ上昇します(消費税10%込み)。
けっこうな追加額ですが、そもそも元値が高額なのでMIRAIで約6.8%、LS500hで約3.8%のAdvanced Driveの価格上昇分は、想定されるユーザー層からすればさほど問題にならないのかもしれません。
■ディスプレイが「灰」→「青」で手が離せる合図
前置きはこの程度にして、早速試乗してみます。
筆者は今回、MIRAIのAdvanced Drive搭載車を運転しました。舞台は首都高速道路の中央環状線と高速湾岸線です。試乗に先立って行われた説明の場では、トヨタ自動車自動運転・先進安全開発部第8開発室長である川崎智哉氏からAdvanced Driveの機能が紹介されました。
試乗は東京都文京区のトヨタ東京本社を出発して、首都高をぐるっと回って湾岸線の千鳥町出口を降りて、戻ってくるルート。渋滞もありました
そのなかで氏からは、「MIRAIが100%電動モーター駆動のFRであるのに対して、LS500hはハイブリッドシステムを用いたAWDなので、その差分を制御で調整していますが、Advanced Driveのシステムは構成部品を含めて同じ」であることが語られました。
本線上を走行し、Advanced Driveメインボタンを押すとシステムが稼働します。最初はACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)機能とLK(車線中央維持)機能が働きます。これは、これまでToyota Safety SenseやLexus Safety Systemで実現していた高度運転支援(自動化レベル2)と同等の世界です。
現行型(2代目)MIRAIは2020年12月に発売されたばかり。それが4カ月後に新技術「Advanced Drive」搭載グレードを追加設定したかたちとなる
この時点の主体はドライバーであり、ステアリングを握って運転操作を行います。ドライバーに提供されるディスプレイ表示の背景は灰色基調で、全体的に見慣れた画面です。
その後、ディスプレイ背景の配色が灰色から青色基調へと変化し、ヘッドアップディスプレイの基調色も青色に同調します。ここからが「Advanced Driveモード」です。この青色となったことがステアリングから手が離せるシステムからの合図で、青色基調の間はいわゆるハンズフリー走行が行えます。
■トヨタ流自動運転技術の真骨頂は「人の目視」??
Advanced Driveでは、「(1)ハンズフリー走行」、「(2)追い越し」、「(3)ドライバーのウインカー操作による車線変更」、「(4)システムによる分岐」が行えます。
ハンドル奥の12.3インチTFTカラーメーターディスプレイが(グレー基調から)上記のように「ブルー基調」になると、ハンズフリー可能の合図。この状態ならハンドルから手を離してもOK
ここまでの機能であれば、同じくレベル2技術である日産スカイラインの「ProPILOT2.0」や、スバル・レヴォーグの「アイサイトX」と同じですが、Advanced Driveでは、ドライバーとシステムの意思疎通方法が大きくことなります。
「ドライバーの目視による安全確認を求める」。これが「Mobility Teammate Concept」 に端を発するAdvanced Driveの真骨頂です。
Mobility Teammate Concept とは「人とクルマが気持ちを通わせながらお互いを高め合い、仲間のように共に走る」とするトヨタの高度運転支援技術に対するスローガンです。
いわば人とクルマが協調する世界は、将来の自動運転技術へと継承される考え方として、こうして実車にも活かされています。筆者はこれを「人と機械の協調運転」と名付けています。
しかしながら、ステアリングから手を離すことはあくまでも副次的な効果であり、Advanced Driveが目指した目的ではありません。手が離せるくらい精度の高いステアリング制御をシステムが行い、システムに足らない部分を人が補うことで、安全な運転環境を少しでも長く継続する、これが目的です。
今回、首都高速道路を走りましたが、条件が整えば規制速度プラス15km/hの世界で行われるハンズフリー走行も、安全な運転環境を作り出す、その延長線なのです。
■運転中の「2秒程度」は長すぎるのでは…?
では具体的に、Advanced Driveではどんな協調運転が行われるのでしょうか。
前述の「(2)追い越し」では、状況に応じてシステムから「前のクルマを追い越しするか」と提案されます。これを承認するにはステアリングを握り、さらに車線変更する側へ目視による安全確認が求められます。
ステアリングコラムの上には近赤外線LEDを用いた二眼の「ドライバーモニターカメラ」が設置され、このカメラがドライバーの視線と顔向きを検知し、その情報をもとに目視を行ったかを判断します。
トヨタでは、国内に初投入した初代レクサスLS(2006年)からドライバーモニターカメラを実装し、ドライバーが正面を向いていない、もしくは眼を閉じている状況で前走車への急接近など危険が近づいた場合には、「衝突被害軽減ブレーキ」の警報ブザーを最大で1秒早出しするなど協調運転を早期に導入していました。
レクサスLSにも「Advanced Drive」搭載グレードが設定された
同様に、(3)ドライバーのウインカー操作による車線変更と、(4)システムによる分岐にも、ステアリングを握ることと、車線変更する側への目視による安全確認が求められ、これらが行われない、もしくはシステムが十分でないと判断した場合には、(2)~(4)の運転支援は中断されます。
しかし筆者には、ドライバーが目視を行ったとシステムが認識するまでの時間が1秒程度、長いと思えることが何度かありました。
人により程度の差はありますが、一般的な「目視」は視線移動が中心です。その上で、移動したい車線側に顔をサッと向け、必要に応じてそれを繰返し安全を確認します。対してAdvanced Driveのシステムでは、しっかりと2秒以上、顔と視線の両方を移動したい側に向け続けている必要があります。
ここでの2秒はやはり長く、筆者はちょっとした不安を覚えました。試しに1秒ごとの目視を繰返してみましたが、システムは確認不足と判断したのか、正しい目視と認識してくれません。
■人が「目視で確認した」という動作を機械が理解する時間が必要
冒頭、「Advanced Driveはレベル2技術からレベル3相当へアップデートされる」と述べました。このアップデートには制御ソフトウェアとして、こうした「目視時間」の微調整も含まれます。事実、トヨタの技術者は、「オーナーからの声が多ければ、より短時間で目視としてシステムが認識できるようアップデートを行うことができる」といいます。
Advanced Driveでは、「目視」がシステムとの意思疎通手段に加わりました。「この実装には、長い時間をかけてトヨタ社内/外で研究を重ねました」と前述の川崎氏は声を大にします。
かねてより筆者は、人がクルマを、そしてクルマが人を理解することが安全な運転環境の一助になると考えてきました。Advanced Driveで我々ドライバーに対して新たに示されたHMI(ヒューマンマシンインターフェースorヒューマンマシンインタラクション/人と機械の接点)、すなわち「目視する/目視を確認した」という人と機械の共通言語はこの先、自動化技術を普及させるにあたって双方にとって非常に有益です。
しかし、これまで「見護る側」にあったドライバーモニターカメラが、人(ドライバー)のふるまいを正しく理解するには時間が必要です。我々が新しいシステムを受け入れるのに時間がかかるのと同じく、システムも人に寄り添うには時間が必要なのです。
Advanced Driveが準備を進めるアップデートの内容は、そうした人のふるまいを一層、正確に理解する、言い換えれば「阿吽の呼吸」を見据えたものといえます。
今回新設定されたMIRAIの新グレード「Z“Advanced Drive”」は8,450,000円。新技術が搭載されていない同仕様車は7,900,000円なので、550,000円高となる。トヨタによると、この技術は随時アップデートしていくとのこと
さらに、Advanced Driveにはこうした制御ソフトウェアのアップデートのほかに、センサー自体を追加するハードウェアのアップデートも控えています。
現状、Advanced Drive搭載車には、左右フェンダー部分に黒い樹脂カバーで覆われた部分があり、車体後部中央にも長方形の型取りが残ります。じつはこの3カ所に、将来のハードウェアアップデートとしてLiDARが搭載されるのです。
■「レベル3」へのアップデートはいつ頃?
すでにAdvanced Driveでは、電源システムの冗長性が図られており、その意味でも当初からレベル3技術を意識したシステム作りは明確です。その冗長性はメインとサブ、2つの電源システムを用い、グループ1とグループ2に分類されています。
グループ1では「演算装置1/電動パワーステアリング/HDマップ情報/認識センサー1」、グループ2では「演算装置2/ブレーキシステム/認識センサー2」をそれぞれ担当させています。さらにグループ1の電動パワーステアリングでは、演算装置と駆動回路を2つ搭載した上で、パワステモーターの巻き線を二重にしてそれぞれに確認用のセンサーを搭載しています。
こうしたことから、将来的なハードとソフトのアップデートによって、たとえば自動化レベルの向上や人に寄り添う制御システムの構築が、ユーザーの手に渡った後も可能です。
このソフト&ハードのアップデートはAdvanced Drive搭載車を購入したユーザーに無償で提供されます。そして早ければ、初のアップデートは半年以内に行われるであろうと筆者は予想しています。
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