いまだにアキュラもインフィニティも日本上陸を果たしていない。レクサスが2005年から日本での開業を果たしたのに対して、この2ブランドが日本市場に参入してこない理由を米国事情に精通する桃田健史氏が分析する。
文/桃田健史、写真/レクサス、アキュラ、インフィニティ、ベストカー編集部
レクサスが日本開業18年となるも……いまだ「アキュラ」と「インフィニティ」が日本導入しないワケとは?
■レクサスとアキュラ、インフィニティの日本市場での方針の違い
ジャパンモビリティショー2023に出展されたレクサスLF-ZC。2026年にも登場予定
ジャパンモビリティショー2023で、レクサスはEV推しだった。レクサスは2030年に北米、欧州、中国で販売する新車100%をEV化、さらに2035年には日本を含めてグローバルで新車EV100%を目指すとの事業方針に基づいた出展内容である。
そのほか、欧米の富裕層を中心に近年広がっている、冒険心が強いアウトドア「オーバーランド」を意識した装備品を拡充したモデルにも来場者の注目が集まった。
ジャパンモビリティショー2023でホンダが出展したGMとの協業で開発している自動運転車のクルーズ オリジン。三部敏宏社長がプレスカンファレンスでスピーチ
一方、ホンダブースには、ホンダジェット、電動垂直離着陸のe-VTOL、GMと共同開発しているレベル4自動運転車「クルーズ オリジン」、そして交換型バッテリーシステムのMPP(モバイルパワーパック)といった、二輪・四輪・パワープロダクトというホンダらしい事業構成の展示となっていた。
アキュラインテグラ。2023年6月には東京のホンダ青山本社ウェルカムプラザにも展示されていたが、ジャパンモビリティショーには出展されず
そのなかに、「プレリュード」などの量産見込みのコンセプトカーもあったが、2023年6月にホンダ青山本社のウェルカムプラザで展示されたアキュラ「インテグラ」の姿はなかった。
ジャパンモビリティショー2023に出展されたEVコンセプトの日産ハイパーフォース
また、日産のブースに目を移すと、かなり思い切ったデザインのEVコンセプトカー「ハイパーフォース」にSNS上では賛否両論。インフィニティについては、ジャパンモビリティショー開幕直前に海外市場向けを想定したEVコンセプトモデル「Vision One」と「Vision QXe」をオンライン上で公開した。
こうして、日系プレミアムブランド御三家である、レクサス、アキュラ、インフィニティは日本市場に向けた事業の方針が大きく異なる印象だ。
なぜ、そうなっているのか?
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■アキュラブランドは1986年に誕生
北米アキュラは初代クイントインテグラと初代レジェンドの2車種から1986年にスタートした
舞台は1980年代後半のアメリカだ。
アメリカでは「ロングリード」と称される複数の大手自動車雑誌に、「ACURA」(アキュラ)の広告が目立つようになる。初代クイントインテグラを使って北米のスポーツカーレースにACURAチームが参戦する様子などが紹介された。
当時、筆者がホンダのアメリカ法人であるアメリカンホンダに「アキュラって、何ですか?」と聞いたところ、「ホンダをベースにしたスポーティブランド」との回答で、「プレミアム」という発想はさほど強くなかった。
アキュラブランドはホンダの主力市場であるアメリカで発想されたものであり、日本人にとっては理解しづらい感覚もあった。北米国内での販売網をさらに拡大させたいホンダにとって、セカンドブランドの展開は必然だったとも言えるだろう。
その後に発売された各種アキュラブランドも、ベースとなるホンダ車に対する価格差はさほど大きくなく、あくまでもスポーティ性やハイパフォーマンス性を重要し、さらに大人のお洒落さを追求する、といったブランドイメージであった。その流れは、2023年時点でも変わっていないと思う。
■インフィニティはアキュラを意識して1989年に設立
XVLというコンセプトで登場し、紆余曲折を経て11代目V35スカイラインとして日本では販売されたインフィニティG35
そんなホンダのアキュラ戦略を意識し、動いたのは日産だった。当時、ロサンゼルス近郊にあった北米日産の拠点で各種のインフィニティ車を度々借り出してテストドライブした。
印象としては、ベースの日産モデルのサスペンションを硬めにしたり、排気系の一部を改良し、またボディパーツを軽度に装飾してタイヤ・ホイールを変更するといった、いわゆるライトチューニングであった。
その後、「G35」(日本のV35スカイライン)が大ヒットとなり、これを契機にインフィニティは基本的にFR中心のスポーティブランドという戦略へとシフトしていく。
■レクサスは慎重な日本のトヨタ本社からなかなかOKが出ず……
1989年の開業当初からラインナップされたレクサスのフラッグシップ、初代LS400(日本名:セルシオ)
こうしたアキュラとインフィニティに対して、トヨタは実に慎重な姿勢だった。
1990年代に入ってから、1980年代にレクサス立ち上げに直接関わったアメリカ人の北米トヨタ幹部から、レクサス誕生までの苦労話を聞いたことがある。
アキュラの動きを早期に察知した北米トヨタは、のちにレクサスとなるプレミアムブランド戦略の基本構想を練り上げ、それを持って日本のトヨタ本社を何度も訪問したという。
だが、慎重に慎重を重ねて市場調査を進める姿勢をトヨタ本社が崩さず、なかなかGOサインが出なかった。ところが、GOサインが出た後は「まるで大きな岩が一気に転がるようにレクサス計画は一気に加速した」という。
そんなレクサスだが、2005年の日本上陸時にはトヨタ販売店各社や、欧州系ブランド販売店の見方はかなり慎重だった。なぜならば、「北米市場を念頭に生まれたレクサスが日本市場に通用するのか?」という懸念があったからだ。
■日本市場で確固たるポジションを築いたレクサス
2005年からの日本参入後、現在ではSUVを中心に豊富な車種ラインナップを展開しているレクサス
だが、モデルラインナップがSUV主流で拡充するなか、レクサスは日本で確固たる地位を築いていく。
一方、ホンダは一時、アキュラ日本参入を目指すと発表するもそれを撤回。日産でも本社内ではこれまで何度もインフィニティ日本導入が議論されたという事実を、筆者は日産幹部らから確認している。
結局、アキュラ、インフィニティは日本に導入されず、レクサスのみとなっている最大の理由は、販売会社の資金力と販売力の差ではないだろうか。
ただし、国内市場ではプレミアムブランドがEVシフトを牽引する可能性が高いと見られており、そうしたタイミングでアキュラとインフィニティの日本戦略が再検討される可能性は否定できないだろう。
今後の市場の動きに注目だ。
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ホンダは軽の会社
ニッサンは国内見切ってるし。