この記事をまとめると
■フィアット500が生産終了となった
【試乗】フィアット500eの「日和らない」感が最高! EVでもハンドリングやサイズはちゃんとチンクエチェントしてた
■16年の間で数々の限定車が設定されていた
■アバルトが手がけたホットハッチも存在した
ついにフィアット500が生産終了
見る人をハッピーにするイタリア生まれのコンパクトカー、フィアット500が2024年5月、ついにその役目を終えることになりました。日本向けガソリンモデルの生産が終了となり、販売店での在庫限りで販売も終了することになります。
フィアット500は愛らしいデザインでも走りは元気いっぱい、高速走行も安心できる欧州仕込みのガッシリとした安定感など、魅力を挙げればキリがない名車で、日本では先代モデルがルパン三世の愛車としても有名です。
もともとは、1936年に誕生して「トポリーノ」の愛称で親しまれたコンパクトカーが始まりですが、21世紀の走行基準や安全性、環境性能などを手に入れるため生まれ変わったMINIやビートルなどと同様に、2007年3月に新型500として新たな歴史をスタート。日本にも2008年に導入されてその快進撃が幕を開けました。
デザインは、1957年に誕生して世界中で愛されたNUOVA 500をモチーフとした、コロンと丸みのあるボディ、つぶらな丸いヘッドライト、シンプルだけどセンスのよいインテリアが魅力的。全長3545mm、3ドアの4人乗りで後席が分割可倒式となっており、ラゲッジルームは185リットルから550リットルに拡大するため実用十分な使い勝手も備えています。この基本要素は16年の長きにわたりキープされてきましたが、もちろんその間にはさまざまなバリエーションや特別仕様車が登場。今回は日本でのフィアット500の足跡をたどってみたいと思います。
まず、日本での発表会は2008年2月にイタリア大使館で行われました。サプライズゲストにルパン三世の作者、モンキー・パンチ氏が登場したことでも注目を集め、世界的に活躍する現代アーティストのジュリアーノ・ゲッリがペイントしたモデルも展示されていました。
発売当初のラインアップは、1.2リッター直4SOHCの1.2ラウンジ、それをベースにボディ同色サイドモールやフォグランプ、フルオートエアコンなど、豪華装備で200台限定車の1.2ラウンジSSで、価格は1.2ラウンジが225万円、1.2ラウンジSSが233万円。
その後、1.4リッターエンジンの1.4 16V ラウンジが登場し、パドルシフトを装備したスポーツグレード、1.4 16V スポーツを追加。2009年2月には200万円を切る195万円のベーシックグレード、1.2 8V ポップ、同年9月にはオープンモデルのフィアット500Cを発売し、多彩なラインアップを揃えていきます。
そして2008年12月に、東京・青山に食や音楽でイタリア文化とフィアットブランドに親しんでもらおうというコンセプトの「フィアットカフェ」がオープン。1階にはフィアット500の展示があり、2階はカフェバー&レストランとなっており、トレンドに敏感な人たちが集まる場所となっていました。
異業種とのコラボレーションや特別仕様車、限定カラーなども多数発売してきたフィアット500ですが、2009年3月に発売されたのはイタリアのアパレルブランド「ディーゼル」とコラボした「フィアット500 by DIESEL」。専用ボディカラーとしてディーゼルの世界観を思わせるディーゼルグリーン、ディーゼルブロンズがとってもクールで、世界限定1万台、日本では150台限定の希少車でした。
このコラボは翌2010年に500Cをベースとして第二弾も実施され、インテリアにも専用デザインのファブリックシートなどが用意される、特別感あふれるモデルとなっています。
さらに、2009年11月に登場したのは、フィアット誕生110周年を記念した限定220台の「FIAT 500 HAPPY!」。これはユナイテッドアローズ green label relaxingとのコラボレーションで、HAPPYをテーマとしたショートストーリーを配信したり、コラボレーション製品の売り上げからマングローブ植林への寄付を行うなど、現在も環境保全活動に力を入れているフィアットらしい一面が垣間見えます。
いまでは伝説となりつつあるコラボといえば、イタリアを代表する一流メゾン「グッチ」とコラボした「500 by Gucci」。これは2011年がイタリア統一150周年とグッチ創設90周年で、それを記念した特別仕様車。エクステリアのベルトラインやシートベルトなどにグッチの赤とグリーンのラインがあしらわれ、ピラーにグッチのエンブレムが入るなど、プレミアム感いっぱいの仕上がりです。
そして、限定カラーで印象深いのはまず、2009年9月にわずか600台しか生産されず、日本での発売は50台のみとなった、「フィアット500 ピンク!」です。ソリッドなピンク色が目を惹く「ローザ ローザ」というボディカラーで、もちろんインテリアもピンク。特設webサイトからのみ購入予約ができたというのも、当時は珍しいことでした。また、同年10月に日本限定の特別塗装として登場したのが、淡い黄色がバニラアイスを思わせるやさしい色合いだった「バニライエロー」。ホイールキャップも専用デザインとなっていました。
その後もイタリア・ナショナルサッカーチームと同じカラーとなる「アッズーラ」や、鮮やかなオレンジカラーの「アランチャ」、アボカドグリーンの「ワカモレ」など、ほかにはないカラーで楽しませてくれています。
世界を沸かせるセンセーショナルなイベントにも、引っ張りだこだったフィアット500。2009年3月9日に50周年を迎えた着せ替え人形「Barbie(バービー)」に、スペシャルバージョンのフィアット500が誕生日プレゼントとして贈られたのは大きな話題となりました。フィアット社内のデザインスタジオと、バービーを製造するMattel社が協同で製作したもので、誕生日当日には実車にバービーを乗せて、恋人ケンの運転でミラノのファッションストリートを駆け抜けるイベントも実施。
フィアット500はドゥオモ広場に到着し、バービーが生きた50年の間の有名な流行歌をバンド演奏するなか、バービーがレッドカーペットならぬ「ピンクカーペット」を歩いたということです。
このフィアット500 Barbieは、その後6月から東京と横浜で実車が展示され、フィアットカフェでは展示期間中、スタッフ全員がバービーブランドのウェアでもてなし、スペシャルメニューも用意。そのほかさまざまな形でのコラボ企画が実施されました。
走りが楽しいモデルもたくさんあった
さて、フィアット500にはさまざまなファミリーモデルも誕生しています。まず2009年4月に登場したのは、蠍のエンブレムがアイコンとなっているカルロ・アバルト率いるチューニングメーカー、アバルトによるハイパフォーマンスモデル、アバルト500。5速MTモデルで、パワフルな走りが魅力的でした。
2010年8月には待望の5速MTモデル「1.2 スポーツMT」が登場。既存の2ペダルMTモデル同様、アイドリングストップ機構「スタート&ストップシステム」が搭載されていました。続いて2010年10月に登場したのは、電動ソフトトップモデルのアバルト500C。こちらは2ペダルMTが採用されています。
2010年11月からオーダー開始されたのは、アバルトとフェラーリというイタリアを代表する伝統のブランドがコラボした「アバルト695トリブートフェラーリ」。これは当時、アバルト史上最速の500と呼ばれ、世界で1700台の限定生産、日本では限定150台となっています。
2011年になると、ついにフィアットの大発明ともいうべき2気筒の「ツインエア」エンジンがフィアット500に搭載されます。同出力の4気筒エンジンよりも23%コンパクト、10%軽くなり、CO2排出量を30%削減しているのが特徴。これによってフィアット500のグレードは、1.2、1.4、TwinAirの3つとなっています。
2015年にはクロスオーバーSUVである500Xが登場。デザインは500のイメージを踏襲していますが、兄弟車がジープ・レネゲードであることからタフな一面もあり、エンジンは全車1.4リッターですが、FFモデルは6速DCT、4WDは9速ATを組み合わせています。
また、2012年のジュネーブショーで世界初公開された500LというコンパクトMPVがあるのですが、残念ながら日本未導入。ベースがフィアット・プントで、クロスオーバーテイストのデザインをまとうフィアット500Lクロス、精悍さを強調した500Lスポーツ、3列7人乗り仕様の500Lワゴンもありました。
そして2022年に登場したのが、フィアット初のBEVとなった500eと500eオープンです。その後、アバルト初のBEVとなるアバルト500eのハッチバックとカブリオレもデビュー。それまで電動化モデルに嫌悪感を持っていた人でさえ、この500eシリーズに乗ると「楽しい」と思わず笑みが漏れるような世界観が特徴で、フィアット500が積み上げてきた伝統は、しっかり継承されていくのではないかと感じさせてくれます。
今回、フィアット500は日本で築いてきた16年の歴史に幕をおろすことになりましたが、それもステランティス全体の電動化戦略によるところが大きいといいます。寂しいですが、これからは500eがこの世界観を引っ張っていってくれることを願います。ありがとう、フィアット500!
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みんなのコメント
「これルパン三世の車でしょ」と言われるのが一番の魅力でしたw