新車が登場すると、大きな魅力とともに、一番のウリ(飛び道具)が大々的に宣伝されることが多い。その一方で、重箱の隅を突くように探すと、意外な盲点が見つかることもある。今回は新型セレナ、新型プリウス、そして軽自動車のベストセラーのN-BOXに迫ってみたい。
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部
セレナ プリウス N-BOX これがあるから売れるのよ! 人気車の「飛び道具」と意外な「弱点」とは
■新型セレナの飛び道具と意外な弱点
今春発売予定のセレナe-POWERは飛び道具満載だ
2022年12月22日にガソリン車が発売され、2023年春にはe-POWER車が発売予定の新型セレナ。
まずは新型セレナの飛び道具について解説していこう。やはり、全車速域でハンズオフが可能なプロパイロット2.0をミニバン初搭載したことを真っ先に挙げたい。
ルキシオンに標準装備となるプロパイロット2.0。ナビゲーションで目的地を設定し、高速道路の本線に合流するとナビ連動ルート走行を開始。状況に応じて同一車線内でステアリングから手を離すハンズオフも可能。高速道路同一車線走行時に40km/h以上でのハンズオフ機能の採用がミニバン世界初
そのほか、自宅など使えるシーンが拡大したメモリー機能付きのプロパイロットパーキングや日産初となるメーカーオプションのインテリジェントルームミラーと統合したドライブレコーダーを搭載したこともトピックス。
ボディサイズもある意味、飛び道具に値するだろう。これまで5ナンバーサイズミニバンとして凌ぎを削ってきたノア&ヴォクシー(1730mm)、ステップワゴン(1750mm)が3ナンバーサイズになるなか、セレナの標準車は1695mmを死守したことは嬉しい限り(ハイウェイスターは1715mm)。
やはり1.4Lエンジンのe-POWERユニットも飛び道具だろう。会話をしやすくするための静粛性向上対策として先代よりも出力を16%アップして低騒音を狙ったe-POWER専用の新型1.4L、直3エンジン(最高出力98ps/最大トルク14.5kgm)に組み合わせるEM57モーターも出力を20%アップした163ps/32.1kgmとし、静かでなめらかな走りを可能にした。
みなさんもぜひ試乗してほしい。走り出しからこれはいいと感じるハズだ。また、路面状態やナビルートから充放電ポイントを先読みしてエンジン作動頻度を制御することで、エンジン作動音を制御したり、さらには、遮音ガラスを採用するなどの車体遮音構造も徹底的につくりこんだそう。これによって、会話明瞭度は、先代を遥かに上回り、最上級のルキシオンは特に静粛性が高い。
また、クルマ酔い対策としては、e-Pedal stepは身体が振られにくいよう、初期にガツンと効かず後半で効くように特性を適合し、より滑らかでリニアなブレーキにした。
毎年支払う自動車税種別割もポイント。自家用乗用車の標準税率で、ノア&ヴォクシーとステップワゴンのハイブリッドは3万6000円なのに対し、セレナe-POWERは3万500円と安くすむのも大きい。
ゼロクラビティシート(スパイナルサポートシート)。脊椎への負担を減らすために、より広い範囲で上体を支えられる中折れ(スパイナルサポート)形状の背もたれパッドを採用。疲労感を最小限に抑え、振動吸収3層構造との効果で疲労を低減
さらに、疲れにくいゼログラビティ(無重力)シートと採用しているのも特筆すべき。スパイナルサポート機能付きシートとも呼ばれ、実は10年以上前の2011年10月に発表。このスパイナルは、背骨、脊髄という意味があり、NASAが無重力状態で計測した「中立姿勢」をもとに、背骨や筋肉に負担がかからないように設計。
そして今回の新型セレナがライバル車同士を比べて、居住性で最も差が生じるのは3列目だ。セレナでは、ライバル2車と違って、3列目にも前後スライド機能が備わる。後方に寄せた状態では、足元空間がライバル2車よりも広い。
サードシートがスライドするのはセレナだけ。ノ&ヴォクシー、ステップワゴンは固定式だ
全高1.8m以上の1.2~2Lクラス 7/8人乗りミニバンNO.1の広さを誇り、3135mmの室内長はNO.1、1545mmの室内幅はNO.1、サードシートのシートスライド(120mm)をするのはセレナだけで他車は固定式だ。
また、営業マンがアピールしやすい飛び道具としては、前席ではセンターコンソール、後席ではセンターシートとなるスライド式のマルチセンターシートを装備(7人乗りのルキシオンを除く)しているのもポイント。
スライド式のマルチセンターシートも飛び道具の一つ。また1列目、2列目に疲れにくいゼログラビティシートも飛び道具だ
■新型セレナにも弱点はあるのか?
セレナのラゲッジスペースの広さも飛び道具の一つだが、ストラップで固定する方式が弱点か
という感じで、飛び道具が多すぎて完璧に見えるセレナだが、弱点もある。特に、3列目シートの格納場所の高さや格納方法には、少し難があるように思う。
ライバルのノア&ヴォクシーも跳ね上げ式だが、跳ね上げた状態でロックされるように改善された。使いにくかったからだ。しかしセレナは、まだストラップで固定する方式を採用しており、固定にやや手間がかかる。
さらに跳ね上げの位置が低いため、3列目を格納した際のラゲッジスペースが、広くなったように感じにくい。荷室の使い勝手は、ノア&ヴォクシーが一枚上手だろう。室内の広さ、3列目のシートスライド機構、ラゲッジスペースの広さが新型セレナの飛び道具だが、こうした細かいところにも目を向けてほしい。
それと、新型セレナには、2列目のオットマンがないことも弱点ではないだろうか。この点についてはセレナのメインユーザーはファミリー層のため、シートアレンジが限られ、ウォークスルーがしにくいということから採用されなかった。ただし、ディーラーオプションは用意されている。
ディーラーオプションの手動調整式のオットマン
■新型プリウスの飛び道具はそのスタイリングにあり!
世間をあっといわせた新型プリウスのスタイリング
新型プリウスはやはりなんといってもスタイリングが飛び道具といってもいいだろう。
ここまでAピラーが傾斜している(寝ている)クルマは世界のスポーツカーを見渡してもそうそうないなか、セダン(ハッチバック)で、ここまでやったのは凄い。
実際に運転席に乗り込んでみると、見た目で想像していた視界の悪さは「そうでもない。思ったより悪くない」といった印象。
PHEVのスポーツカー並みの動力性能というのも魅力的だが、やはり2Lのハイブリッドモデルは速くて楽しい。19インチタイヤの少々硬めの乗り心地と相まって、ある意味、昔スポーツカーに乗っていたおじさんは、スポーティなので、喜んで乗るかもしれない。ただし、先代、先々代のプリウスオーナーは乗り換えるのかはわからない……。
除電スタビライジングプラスシート。緑色の部分が導電性表皮材
わかりやすい飛び道具が1つあった。新型プリウスのZとGの運転席に採用されている「除電スタビライジングプラスシート」がそれだ。
このシートには導電性表皮材が使用され、除電機能を付加。ドライバーと周辺に溜まっている静電気を分散させて帯電量を軽減し、静電気軽減機能により、 車両の挙動が安定し、より疲れにくく、気持ちのいいドライビングに寄与するとしている。
スタイリングと走りの楽しさ、これが最新プリウスの飛び道具だと思う。
■新型プリウスに対する厳しい意見が多くあがる、弱点とは
Zは12.3インチの巨大ディスプレイが備わるが、他のグレードは8インチ。ビジネスグレードのXはオーディオレスとなる
新型プリウスに関しては、この装備が欲しかったとか、不満点がSNSやYoutubeで多く挙がっていたので、箇条書きにしてまとめてみた。
●シートヒーターは最上級グレードのZだけに付き、GやUで選べない。そのほかパノラマルーフ、デジタルインナーミラー、デジタルキー、12.3インチのディスプレイオーディオ、パワーバックドアといったメーカーオプションもZにしか設定されていない
●7インチのデジタルメーターが小さい。スピードの数値は見やすいが、HVインジケーターの文字が小さく見にくい
●エネルギーモニターやエアコンの画面がシンプルすぎるというか立体感がない。高級感のある演出にしてほしい
●全車標準装備ディスプレイオーディオプラス以外は5年間無料だが、6年目以降は月額1210円を払わないとナビが使えない。最上級Zグレードのみ+6.1万円のオプションで継続して使える
●4WDしかグリルシャッターが装備されない。先代は2WDのみにもあり
●アダプティブハイビームシステムが装備されない
●195/50R19タイヤは特殊なためタイヤ代が高い。スタッドレスタイヤは1本3万~4万円と高価
といった感じで、装備に関するものが多かった。みなさん、研究されていますね~。
そんななか、こんなにカッコいいスタイリングにしたおかげで、やはり後席の居住性が弱点になっていることはたしか。
もちろん、身長や体格さなどで変わってくるが、後席の乗り降りの際にかがんで乗り込まなければいけない場合が出てくるのではと思った。実際、筆者(身長175cm)が後席に乗る際も頭こそぶつけなかったが、とっさではあるが、かがんで乗り込んだ。
新型プリウスの後席
後席に座ると、頭上空間はこぶし1つ入るか入らないかというものだったし、膝前空間はこぶし1つしか入らなかった。
ほとんど後席に人が乗る機会のない人は気にすることもないだろうが、後席に大人が長時間座るのにはちょっと厳しいかなというのが正直な感想。
■ベストセラーモデル、N-BOXの飛び道具と弱点とは?
8年連続軽自動車販売NO.1を誇るN-BOX
軽四輪車の暦年新車販売台数8年連続でNO.1を誇るベストセラーのN-BOX。もはやN-BOXに関してはクルマの出来のよさは熟成域に達しており、弱点はないのではと感じる人も多いだろう。そこをあえてピックアップしていきたい。
N-BOXはコクピットの質感の高さ、室内の広さ、運転のしやすさ、乗り心地、扱いやすさのバランスがとても優れているクルマだ。突出した飛び道具はないものの、やはり真っ先に挙げたいのは、室内の広さではないだろうか。
Bピラーレスのスライドドアや工夫を凝らしたリクライニング機構が光るタントのよさにも目移りしてしまうが、やはりN-BOXの飛び道具は、燃料タンクを前席の下に搭載したセンタータンクレイアウトにあると思う。
N-BOXのセンタータンクレイアウト
床も低く、後席を跳ね上げれば背の高い観葉植物やベビーカーも縦に積むことができるし、ラゲッジルームの床も低いので自転車を積む際も前輪を大きく持ち上げる必要もない。
またユーザーからの要望が多かった電子式パーキングブレーキやオートブレーキホールドが2021年12月の一部改良で標準装備となり、合わせて「Honda SENSING」のアダプティブクルーズコントロールが渋滞追従機能付にアップデートし、高速道路での渋滞時などのドライバーの負担を軽減することとなった。
従来の足踏み式を改め、電動パーキングブレーキ、オートブレーキホールドを標準装備。その恩恵でクルーズコントロールの機能強化にもつながった
一見、まったく弱点がないようにも見えるが、実はある。その前にフルハイブリッドはおろか、マイルドハイブリッドがないじゃないかと、突っ込まれそうだが……。
N-BOXはインパネの最上部に装着されたメーターは見やすいが、上端の位置が高いから前方視界は良くないし、圧迫感も少し感じる。
機能性に優れたN-BOXのコクピットだが……
身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席のスライド位置を後端に寄せたときの膝先スペースは、タントとスペーシアが握りこぶし3つ半、N-BOXは握りこぶし4つに達する。
ただし、後席は頭上と足元の空間は広いが、タントなどに比べて座面の柔軟性が乏しい。後席を格納して荷室を広げる機能を重視したからだ。
また後席を格納する操作は簡単で、背もたれを前側に倒せば良いが、広げた荷室の床面には少し傾斜ができる。平らな荷室にはならない。
N-BOXのシート
といった具合に、強いて弱点を挙げてみたが、弱点以上に魅力があるからN-BOXは売れているのだ。
ちなみに2023年秋に登場予定の新型N-BOXの電動化がどれほど進んでいるのか、期待して待ちたい。
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みんなのコメント
プリウス″は″飛び道具
分かっているのにこの1行だけでお茶を濁そうとする。
燃費性能にさえ一切触れない。
ベストカーはホンダの接待漬けなのだろうか。