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高性能車の証「ミッドシップ」はなぜ減少傾向? じつは軽にも採用例が多いMRのメリット・デメリットとは

掲載 更新 47
高性能車の証「ミッドシップ」はなぜ減少傾向? じつは軽にも採用例が多いMRのメリット・デメリットとは

■ボンネットの中にエンジンがない!? ミッドシップレイアウトって一体何?

 クルマの駆動方式はいくつかありますが、一般的な「FF(フロントエンジン・フロントドライブ)」や「FR(フロントエンジン・リアドライブ)」、「4WD/AWD」のほかに、「ミッドシップ」と呼ばれるエンジンレイアウトがあります。

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 ミッドシップとは、クルマの中央付近にエンジンとトランスミッションを搭載することを意味しますが、現在採用されているミッドシップには大きくふたつあります。

 ひとつめは、「リアミッドシップ」とも呼ばれるレイアウトで、フォーミュラカーを起源とし、スポーツカーやスーパーカーに多く採用されています。

 一般的にリアミッドシップというと後輪駆動の「MR」を指しますが、最近はホンダ2代目「NSX」のようにAWD化されるものも登場。

 ミッドシップならではの高い走行性能を維持しつつ、ハイパワーを的確に路面に伝えるための最新手法も取り入れられています。

 もうひとつは「フロントミッドシップ」と呼ばれる搭載方法です。これはエンジンを前輪から後ろに運転席との間に配置するレイアウトで、機構的には「FR」と大きく変わりません。

 BMWなどが積極的に採用しており、運転席などがリア側にセットバックする反面、重量バランスが改善しコーナリングやステアリング性能を向上させる効果があるといわれています。

 なかでもリアミッドシップ(MR)のメリットは、フロントの足回りの設計の自由度が高いことで、シャープで切ったぶんだけノーズが内側に向き、回頭性に優れた理想的なハンドリングが実現できます。

 さらに、後輪に近い中央寄り後ろにエンジンがあるためリアタイヤにトラクションもかかりやすいことや、プロペラシャフトがないことから部品点数も減らせ、軽量化できることもメリットとして挙げられます。

「重量バランスに優れている」や「優れた走行性能」がリアミッドシップのメリットではありますが、逆に最大のデメリットとなるのは居住性が犠牲になることです。

 エンジンという大きな重量物をキャビン後方に据えることから、多くのリアミッドシップ車は2シーターとなっており、シートのリクライニングは必要最低限しかできません。

 また積載性を考慮して大型のトランクなどを追加すると重量バランスが悪化してしまう可能性もあり、影響の少ない大きさの荷室しか確保できないということもあります。

 この弱点を補うべくホイールベースを長くし過ぎてしまうと回頭性が犠牲になりますし、短すぎると今度は直進安定性が悪化するなど、ミッドシップの良さを台無しにしてしまう可能性もあってそのバランスが難しいのです。

※ ※ ※

 レーシングカーやフェラーリの複数車種、ホンダ NSXなどの高性能スポーツカーや、軽スポーツカーのホンダ「S660」といったモデルが代表的ですが、ミッドシップのデメリットが現代のクルマに求められるニーズに適合せず、近年は採用する車種が減少。

 さらに、S660は2022年3月、2代目NSXは2022年12月をもって生産終了することが決まっており、ミッドシップ車は減少の一途をたどっているのです。

■ミッドシップは軽自動車でも採用例が多い

 高性能なスポーツカーに採用されることが多いミッドシップですが、過去を振り返ると、意外にも軽自動車での採用例が多いエンジンレイアウトです。

 S660はスポーツカーとしての走行性能向上のためにミッドシップを採用。ほかにも、軽トラのホンダ「アクティ」やこのアクティをベースにした「Z」、三菱「i(アイ)」などがミッドシップを採用しています。

 とくに車重が軽い軽自動車のスポーツカーの場合、いかに駆動輪のトラクション性能を上げるかが課題でした。

 またエンジンの振動についても、フロントにノーズのない軽トラはエンジンの搭載位置が運転席に近くなるため、ステアリングに伝わる振動や熱などへの対策としてMRが採用されたということが考えられます。

 また、三菱 アイは、スタイリングの自由度と重量バランスの改善を考慮してミッドシップを採用。

 前方にエンジンがないためフロントサスペンションも自由度が高くなり、タイヤの切れ角が大きくできて最小回転半径も4.5mと、かなり小回りが効くモデルでした。

 では、実際にミッドシップ車の元オーナーはどんな印象だったのでしょうか。

 かつてトヨタ MR-Sに乗っていたFさん(50代・男性)は、ミッドシップが欲しかったというより手頃なオープンカーとして購入したといいますが、気難しさはあまり感じなかったそうです。

「先代にあたる2代目『MR2』と比べると、挙動はマイルドでした。上り坂などではフロントの接地感がなくてちょっとヒヤヒヤしましたけど。

 それでも1トン前後の軽量ボディとミッドシップらしいシャープさでキビキビと走ってくれたのを覚えています」

 完全な2シーターで不便さなどは感じなかったのでしょうか。

「その前にも2シーターオープンを所有していたので、あまり違和感や不便さはなかったです。

 それまで乗っていたオープンカーはFFベースだったので、ミッドシップならではの特性をつかむまで少し時間がかかりましたし、雨の日はちょっと扱いが難しいと感じたこともありましたが、普通に走っている限りは扱いが難しいというほどでもなかったと記憶しています」

 ホンダ「ビート」を所有していたTさんは、運転自体は楽しかったものの、前後でサイズが違うタイヤなどメンテナンスや維持が多少面倒だったといいます。

「ミッドシップならではのフロントノーズの軽さと低さ、軽快感は独特でした。コーナリング特性にも少しクセがありましたね。

 シート後方に横置きされたエンジンの整備性が良くなくて、安いパーツでも交換すると工賃が高くなるというジレンマがあったのも事実です。

 良くも悪くも、ビートは実用性よりもミッドシップレイアウトを優先させた部分もあるでしょうし、贅沢な作りだからこそ味わえる世界観がありました」

※ ※ ※

 ミッドシップは、クルマに求められる実用性を犠牲にしてでも実現させるべき魅力がありました。

 とくにスポーツカーのジャンルでは、重量物を中心に配置することで旋回性能を引き上げる狙いも大きかったといえますが、現在ではFFでも十分な性能を得られることから、ミッドシップはさらに希少になっていくでしょう。

 今後EV化が進みエンジンではなくモーターに置き換わるとミッドシップと呼ばれるようなレイアウトはなくなるのかもしれませんが、エンジンをすぐ後ろに感じる独特のフィーリングは、一度は体験してみてほしいと思います。

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みんなのコメント

47件
  • MR_Sに乗っていました。
    シートの後ろに結構収納できて日常生活でもあまり不便はありませんでしたよ。
  • そういえばコルベットはミッドシップになったねえ。
    元はRRだったアルピーヌのA110もミッドで復活。ミッドシップもまだまだ捨てたもんじゃない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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