■本物の木材が使われたり、木目調ボディのクルマを振り返る
クルマを構成する部品といえば、金属や樹脂というのが一般的です。内装では樹脂や金属以外にも、化学繊維や皮革、木材など、さまざまな素材が使われますが、ボディパネルはスチールかアルミ製となっています。
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ところが、かつてはボディに本物の木材を使っていたり、木目調のデカールを貼ったモデルもありました。
これは、クルマの成り立ちが馬車に由来するからと推測され、ステーションワゴンタイプのクルマで流行したことがあります。ちなみにステーションワゴンという言葉は馬車由来です。
とくに1960年代から1970年代のアメリカで木目調ボディが人気となり、日本にも流行が飛び火しました。
そこで、ウッディな外観が似合うクルマを5車種ピックアップして紹介します。
●BMC「ミニ トラベラー/カントリーマン」
英国製のウッディなクルマとして、もっとも有名なのは、いまや「クラシックミニ」と呼ばれるBMCミニの派生モデルとして1960年に登場したモーリス「ミニ トラベラー」とオースティン「ミニ カントリーマン」でしょう。
初代ミニは1959年に、BMC傘下のモーリスとオースティンというふたつブランドから発売されました。その1年後に追加されたステーションワゴンは、ミニのシャシをベースにホイールベースを伸ばし、観音開き式のドアを設置。さらにボディの後部には木材製の枠が取り付けられていました。
これらは、ミニの誕生より先に販売されていたステーションワゴンのモーリス「マイナー トラベラー」から受け継がれたものです。
この木枠はホワイト・アッシュという材料で、家具や建築用材のほか、野球のバット、エレキギターのボディなどに使われています。
かつて、馬車から進化した初期のクルマは、ボディの構造部材として木材が使われていましたが、ミニの場合はあくまでも装飾で、美しく維持するにはかなり手間がかかったといいます。
外装は雨にさらされるため、木枠には定期的にニスを塗り直す必要があり、それでも多湿な環境では経年劣化で腐ってしまうこともあります。
英国にはこの木枠をつくる専門業者があり、いまも新品の部品として入手可能です。
●日産「サニーカルフォルニア」
トヨタ「カローラ」と並んで、昭和後期に日本の大衆車として君臨していた日産「サニー」。4代目の310型でライトバンだけでなくステーションワゴンが加わりました。
1979年に登場したサニーのステーションワゴンは、米国風、とくに西海岸のライフスタイルを日本に広めたいという思いからか、「サニーカリフォルニア」と名付けられました。
外観では大胆に傾斜したリアハッチを採用し、積載量を重視するライトバンとは異なるボディパネルとするなど、かなり凝ったつくりでした。
サニーカリフォルニアは日産の目論見どおり、若い世代のユーザーから人気となり、オプションの木目調ボディは後継の5代目にも設定されました。
ちなみに、日産はサニーカリフォルニアをステーションワゴンではなく「5ドアスポーツセダン」と呼称していました。
●ホンダ「シビックカントリー」
1980年に、ホンダも2代目「シビック」のライトバンをベースにしたステーションワゴンをラインナップ。
ホンダ初のステーションワゴンは「シビックカントリー」の車名で販売され、サニーと同様な木目調パネル(ステッカー)が採用されました。発売から最初の1500台分には、この木目調ステッカーが標準で貼られていたこともあり、シビックカントリーのシンボル的な印象があります。
1.3リッターエンジンと4速MTのみの設定だったシビックバンに対し、シビックカントリーは1.5リッターエンジンと5速MTを組み合わせ、2ペダル仕様の「ホンダマチック」も選べました。
リアサスペンションはバン譲りの半楕円リーフリジッド式でしたが、タイヤはバイアスからラジアルにグレードアップされ、後部座席は4段階にリクライニングが可能で、たたむことでフラットな荷室が出現。
ボディサイドと同様の木目調パネルが貼られたテールゲートは、運転席からボタンを押すだけでロック解除できる電磁式オープナーが採用されるなど、装備も充実しています。
しかし、シビックカントリーの名前は1代限りで消滅。3代目シビックでは、一般的なステーションワゴンより全長が短く、5ドアハッチバック近いスタイルの「シビックシャトル」に引き継がれました。
■アメリカを代表するウッド調SUVとは
●日産「スカイライン ワゴン」
前出のサニーカルフォルニアが登場した1979年には、日産は「セドリック」/「グロリア」や「ブルーバード」、そして「スカイライン」にも新型のワゴンを投入。そのすべてに木目調ボディを設定していました。
なかでもスカイラインは3代目からワゴンボディが設定されており、1972年に登場した4代目スカイラインのワゴンには、早くも木目調パネルが採用されていました。
ただし、ボディサイドはスカイラインの特徴でもあった「サーフィンライン」と合わせられなかったためか、リアのテールゲート下部のみが木目調になっていました。
一方、通称「ジャパン」こと5代目のワゴンでは、サイドからリアまで回り込む木目調パネルとサーフィンラインを融合させることに成功。
なお、搭載されたエンジンは1.8リッター直列4気筒SOHCのみで、セダンやハードトップに設定された直列6気筒は、ワゴンには設定されていません。
その後、スカイライン ワゴンは7代目のR31型まで設定されていましたが、8代目で廃止され、ステーションワゴンは「ステージア」へと別車種に分かれました。
●ジープ「ワゴニア」
ウッディなステーションワゴンの本場、米国のクルマのなかでも木目が似合う代表的なモデルが、1960年代から1990年代までラインナップされていたジープ「ワゴニア」です。
ピックアップトラックのシャシをベースに、洗練されたステーションワゴンタイプのボディが架装されたワゴニアは、現在も人気が高いフルサイズSUVの元祖といえるでしょう。
初代ワゴニアは1963年にカイザー・ジープ社から登場。以降、ジープの製造権がAMC、クライスラーとなる間も、ワゴニアおよび、1984年に上級モデルとして追加されたグランドワゴニアは、1991年まで生産が続きました。
なかでも初代ワゴニアはいまも高い人気を誇っており、日本にも中古車が多数並行輸入されたことで、いまも市場で流通しています。
その後、グランドワゴニアの名前は1993年モデルとして1年だけ復活。当時の「グランドチェロキー」の最上級グレードとして設定され、ボディサイドにはしっかり木目調のデコレーションが施されています。
なお、ワゴニアの名前は2010年代より復活が計画されていましたが、2020年9月3日に新型ワゴニアの発表があり、2021年には発売される予定です。
※ ※ ※
車体に木材を使ったクルマとして有名なのが、英国モーガンのモデルです。かつては軽量化のために構造部材にも木材が利用されていましたが、現在、販売中の最新モデルでは、ボディパネルを支える部位や、内装などの一部に留まり、もはや伝統を守るためといっていいでしょう。
また、珍しいところで、ポルシェ「911」のペダルまわりにあるフロアボードには、1990年代までベニヤ板が使われていました。
これは強度がそれほど必要なく、軽量ということで長年使われてきたようですが、やはり腐食は避けられず、社外品のアルミ製や樹脂製のフロアボードが販売されています。
911のように見えない部分に木材を使っていたクルマは、意外と多いのかもしれません。
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みんなのコメント
経年で腐食するので貼り替えが必要です。
時々キノコが生えたりします。