フルモデルチェンジした新しいホンダ「フリード」を今尾直樹が雪上で試乗。ひと足早い冬支度に備える。
適度に静かで、ものすごく乗りやすい
GQ DRIVE──Vol.1 速水もこみち×マセラティ・グレカーレ
新型フリード4WDは雪に強かった!
北海道にある「ホンダ鷹栖プルービンググラウンドで」、筆者はそれを体験した。本年2月に新型フリード雪上試乗会が開かれ、それにGQ JAPAN枠で参加したからだ。
雪上試乗会には新旧フリードのAWD(または4WD)と、参考車両として他社AWDが用意されていた。GQ JAPAN枠は他社AWD、先代フリードAWD、そして新型AWDという、わかりやすい順番で試乗することができた。ありがたや。タイヤは3モデルとも、ブリヂストンのスタッドレスで統一されている。
試乗コースは3種類。その1が圧雪路とアイスバーンが設けられた、総合コースと呼ばれる、全長たぶん1kmぐらいの長方形の、なにもない空き地で、スラロームや加減速時の挙動、トラクション・コントロール等の制御の様子を確認する。その2は100km/hまで出せる直線路で高速での安定性を、次に現れるアップダウンを伴うコーナーの連続でハンドリングその他をチェックする。全長2kmぐらい、いや、もうちょっとあったか、という郊外路という名のコースが近所にあったら、いいですよねぇ。という雑感はともかく、そこを3周する。最後は登坂路で、圧雪路面の坂の途中で一旦停止し、再発進するというシンプルなテストだった。
その1の総合コースはパイロンもなにもない、ただの空き地のため、おなじ操作を繰り返すことそれ自体が筆者のような気まぐれなドライバーにはむずかしい。それゆえ3台個別の印象についてはパスさせていただきます。
その2の郊外路コースは、心置きなくアクセル・ペダルを踏んで、つい一所懸命走ることに専念してしまった……。筆者のような気まぐれなドライバーに、3台の動きの違いを正確に叙述するのはむずかしい……。
それでも、筆者なりにわかったことを以下に記してみたい。ひとつは「他社AWD」の、4WD性能は別にして、デキのよさというか、まとめ方のうまさというか、材料以上の料理をつくってしまう腕のよさ、みたいなものを感じた。雪上でも乗り心地がよくて、適度に静かで、ものすごく乗りやすい。
先代フリードに乗り換えたら、タイヤがドタドタして、乗り心地が筆者好みではない。エンジン音も、まわすと、静かなときとの差が大きい。先代フリード、すなわちフリード+(5人乗り)のハイブリッド・クロスター4WDは最後期型とはいえ、発売からすでに8年。他社AWDは2022年発売だからして、致し方ないかもしれない。
さてそこで、本命の新型フリードe:HEVの5人乗り、つまりフリード+の後継に当たるモデルの4WDに乗り換えると、先代の弱点が改善されている。タイヤのサイズは185/65R15でおなじだし、銘柄もおなじブリヂストンの「ブリザック」なのに、ドタドタしたタイヤの動きが感じられず、しなやかに脚が動いている感がある。ガバチョとアクセルを踏みつけ、エンジンを目一杯唸らせても、ピークの音量が低くなっているし、音質もよくなっている。そういう印象を得た。
新型フリードは先代から継承したプラットフォームを基本に、フロント・サスペンションのブッシュの低フリクション化をはじめとするチューニングによって、乗り心地とNVHの改善に成功している。エンジニアとの懇談でうかがったところによれば、パワーユニットをe:HEVに載せ替えたことも大きい。エンジンが駆動の主体となる先代のハイブリッド、i-DCD(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)からe:HEVのモーター駆動主体に変わったことで、ピッチングの出方も変わってくるという。モーター駆動のほうがスムーズだから、である。筆者は気づかなかったけれど、フロントのシートに新しいフレームを採用したことも、乗り心地の改善に貢献しているらしい。最近、ホンダが「フィット」、「ヴェゼル」、「ステップワゴン」に使っているボディースタビライジングシートである。
モーターの違いは、走りの違いへしかして、この雪上試乗会は新型フリードのリアルタイムAWDの性能をお披露する機会である。他社AWDのヨンクとしての能力の違いは一目瞭然。それというのも他社AWDはリヤをモーターで駆動するアシスト型4WDだからだ。後輪が駆動するのは前輪が空転してからで、普段は前輪のみで走る。モーターのトルクも小さく、新型フリード4WDのリヤの駆動力の3分の1程度らしい。登坂路の再発進では前輪が空転してから動き出すのも、郊外路での直進でやや不安定なのも、コーナーで大きく膨らむのも、路面によってはちっともグリップしないのも、思ったように走らないのも当然である。ほとんど前輪駆動なのだから。
フリード4WDは違う。先代でも、登坂路での再発進テストで、アクセルを踏むや、スッと発進した。真打の新型フリード4WDはさらに反応が早い。まるでドライ路面のごとく、前に出る。これはなんの課題? と、クルマがいわんばかりに。
新旧フリードのリアルタイムAWDは、コンベンショナルなプロペラシャフト式で、リヤ電動式4WDとは4WDとしての本気度が違う。ホンダはより大きなトルクを後輪に伝えることができるプロペラシャフトのある、機械式の4WDにこだわっている。コスト的にも電動式4WDより安い。弱点があるとしたら若干燃費が劣ることだけれど、本格的な4WD性能を望むユーザーにとっては大きな問題ではない。とホンダは考えている。きっと、そうなんだろうなぁ、と、筆者も思う。
プロペラシャフトを持つホンダの4WDは、軽自動車とフィットはセンターデフがビスカス・カップリング方式となり、フリードやヴェゼル、そして「ZR-V」、現在は海外販売のみの「CR-V」は湿式多板クラッチを電動油圧ピストンで制御する方式を採用している。前者のビスカスが受動的4WDなのに対して、後者の多板クラッチは能動的な制御ができるところが強みだ。
新型ではこのリアルタイムAWDの制御方式を、先代のステップ制御からリニア制御に変更している。ステップ制御は階段状に変化する。てことは空白の時間が生まれる。リニア制御はより高い応答性が得られる緻密な制御だそうで、アクセル・ペダルを踏むと、すぐさま後輪にトルクが伝達される。発進時に効果があるのかは不明ながら(聞き損ねました)、後輪への最大駆動力を先代比10%アップしてもいる。
これはパワーユニットをi-DCDからe:HEVに切り替えたから、と、解すことができる。i-DCDは、1.5リッター直4ガソリンと、モーターを内蔵した7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)の組み合わせからなる。先ほども書いたけれど、駆動はエンジン主体で、モーターは黒子、アシスト役だ。ただし、内燃機関にとって効率の悪い発進はモーターが駆動する。
e:HEVは、1.5リッター直4ガソリンと、発電用と駆動用、2基のモーターを組み合わせたシステムで、高速巡航時以外、モーターが駆動の主役をつとめ、エンジンは黒子の発電役にほぼ徹している。
どちらも発進はモーターの仕事だとすると、で、モーターの出力の違いがクルマの動きの違いになる。先代のモーターは最大トルク160Nm、新型の駆動用モーターは253Nm。新型フリード4WDはe:HEVの搭載その他で100kgほど車重が重くなっているけれど、それを補う強力なモーターを搭載している。
たかが45mm、されど45mm郊外路において、新型フリードAWDがものすごく走りやすかったのは、リアルタイムAWDの制御にヨーレートを検知するパラメーターを追加していることもある。クルマの自転方向の変化をセンシングすることでドライバーの意思を推測して前後駆動力の配分を制御する。その配分は通常は50:50で、高速になるほど後輪への配分を20%程度にまで絞る。理由はそのほうが、スタビリティが高いからである。
コーナーで大きく膨らまないのは、「AHA(アジャイル・ハンドリング・アシスト)」という、コーナーリング時に前輪のコーナー内側にブレーキをかけてアンダーステアを消すデバイスの働きもあったかもしれない。
それと、助手席に乗っていただいたホンダの方からのドライバーに対する助言も大きかった。急激な姿勢変化を招く急なアクセル、ブレーキ操作は避け、スムーズなドライビングとスロー・イン・ファスト・アウトに徹すること。クローズドのコースだと、素人(私)はつい熱くなって忘れがちだけれど、やっぱり基本が大事。お世話になりました。
ところで、他社AWDはダメだと筆者は思わない。前輪駆動はもともと雪に強い。補助的な4WDで十分。という考え方もある。前輪が一瞬空転することで滑りやすい路面であることをドライバーに伝え、警告を発している、と受け止めることもできる。
雪道をよく知る、より上級のドライバー、あるいは雪国で4WDが必須の方々にとってはホンダ方式のほうが好ましいかもしれない。よりドライバーの裁量、自由度が大きい。それがリアルタイムAWDの、もうちょっと話を広げると、ホンダの魅力なのだ。
開発者の方々との懇談会でうかがった発言をひとつ紹介しておく。
「私なんかは、ホンダ車はあえて買ってもらっているものだと思っているので……。おなじものをおなじクオリティ、おなじ値段で出したら、トヨタさんのネーム・バリュー、ブランド・バリューで持っていかれるのは決まっていて、あえて選んでもらえるきっかけとか理由づけのためにちゃんとしたクルマを出す。私たちは一部のホンダ・ファンのために……、というか、そういうお客さんもいれば、ディーラーに行って(トヨタ)『シエンタ』とフリード、フリードは現行ですけど、両方に乗ったお客さんは、『なにがいいかわからんけど、こっちのほうがいい』と、いってフリードを買ってくれるお客さんがちょこちょこいるらしいんです。そこは逃しちゃいかん。せっかくディーラーを2軒もまわってくれるお客さんは逃したくない。そのためには止まってわかる、ドアを開けた時に、ガチャっと、『あ、なんか高級な感じがする』と、思ってもらって、座った時に、『あ、私のライフスタイルに合っている』と、思わせるところが大事じゃないかな……と、ホンダとしては。それを裏切っちゃいかんと思うので、動的な質感もそうですけど、静的な質感、スイッチ類とか、どうしてもがんばっちゃいますよね」
あと、安積悟開発責任者に、「開発で苦労したことは?」という質問もした。4WDに関することではないけれど、2月のことで筆者はすっかり忘れていた。すいません。こちらも紹介しておきたい。
「フリードで絶対なくしちゃいけないのが『ちょうどいい』という、ものすごく抽象的なコンセプトでした。数値ではない、その『ちょうどいい』という価値観をどうやって進化させていくのか……何馬力のものを何馬力にするとか、加速性能を何秒にするとか、それは目標がはっきりしているから開発しやすい。でも、『ちょうどいい』という言葉は、ものすごく難しい。悪くいうと、中途半端なサイズというか、大きくもなく、軽みたいにコンパクトではなく……たとえば全長を、新型はe:HEVの絡みで45mmのびているんですけど、『45mmのびていいのか』と、みんなで議論した。あとはデザイン。いまのフリード(先代)って8年つくっているんですけど、8年つくってまだ売れているというのは、たぶんデザイン的なニーズでではなくて、使い勝手だとか、お客さんのニーズに合っているということです。じゃあ、デザインをどっち方面にすればいいのか……それを決めるのにすごく時間がかかった。すごくむずかしいカテゴリーだし、むずかしいクルマ」
たかが45mm、されど45mm……なのだった。
文・今尾直樹 写真・本田技研工業、小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
走行途中の細かい制御は仕方ないとして、ゼロ発進時だけでも駆動させればいいのに。従来のデュアルポンプ4WDの時からそう感じてた・・・
と言っときながら凄いデタラメ記事だよね。
ホンダのなんちゃって4WDで機械式だから基本滑ってからでないと4WDにならないでしょう。だいぶ4WDの切り替えを早くしたみたいだけど、それって、もたつくんだよね。フリードの4WDはデブだから仕方ないけどね。
トヨタのe-four は夏場だろうが、発進時には四輪駆動で動くから冬道発進はホンダのようにタラタラした発進にはならない。まして記事に書いてある登坂発進時は4WDだよ。嘘ばっかりだね。
それにファミリーカーのフリードの車高程度で雪山は無理。クロスターなんてただの飾りを付けただけ。
それに燃費はさほど変わらないって?
笑っちゃうね。ホンダ車は燃費悪いよ。
4WDハイブリッドで実燃費は16も走るかなあ?ガソリンは10切るだろうね。
それにドライブシャフトがあるから、床面が高く相変わらず2列目シートは体育座りだよね。