2014年以来、10年ぶりの開催となったWEC世界耐久選手権のブラジル・ラウンドは、TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)の優勝によって幕が閉じられた。7月14日(日)に行われたシーズン第5戦『サンパウロ6時間』の決勝は、戦いの舞台となったインテルラゴス・サーキットが比較的コンパクトなトラックということもあり、序盤から細かなアクシデントが続出。さらに、ハイパーカーとLMGT3の両クラスで上位のクルマがトラブルに襲われるなどドラマ満載の一戦となった。
そんなサンパウロのパドックから第5戦決勝レース後のトピックスをお届けする。
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トヨタは先週末、サンパウロ6時間レースでWEC世界耐久選手権における通算勝利数を「47」とし、現行シリーズ初年度の2012年にマークした記念すべき初勝利に続いてインテルラゴス・サーキットで2勝目を挙げた最初のメーカーとなった。
8号車トヨタGR010ハイブリッドのセバスチャン・ブエミは、シリーズ通算25勝を達成した。チームメイトのブレンドン・ハートレーは22勝で、トヨタの姉妹車7号車を駆るマイク・コンウェイと並んで歴代2位となっている。平川亮は5勝目をマークした。
LMGT3クラスでマンタイ・ピュアレクシングの92号車ポルシェ911 GT3 Rが優勝したことで、ポルシェとマンタイ・レーシングは今季5戦のうち4戦で勝利を挙げたことになる。アレクサンダー・マリキン/ジョエル・シュトーム/クラウス・バハラー組の勝利は開幕戦カタール以来で、サンパウロがシーズン2勝目だ。
■トヨタがランキング2位に浮上
ハイパーカークラスで総合2位となったポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963を駆るケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール組は、残り3レースとなった時点で、選手権ランキング2位につけるフェラーリAFコルセ51号車のアントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン組との差を19ポイントに広げた。同3位トヨタの小林可夢偉とニック・デ・フリースとは22ポイント差だ。
しかしマニュファクチャラーズランキングでは、トヨタがポルシェに4ポイント差まで迫っている。フェラーリは低調に終わった週末の後、3位に後退。首位ポルシェ963との差が17ポイントに拡がっている。
■ローテーションを変更
トヨタは今回、8号車のドライバー・ローテションを一部入れ替え、ブエミが予選を、ハートレーが決勝レースのスタートスティントを担当した。
ハートレーは「久しぶりのスタートだった。僕がチームに入ってからは毎回、セブ(ブエミの愛称)がやってきたと思う」と語る。
「(スタート直後の)ターン1でロックアップしてしまったけれど、直進することにした。マイク(・コンウェイ/7号車トヨタ)がフロントロウからスタートしていたから、混乱は避けたかったんだ」
テストデー直前に負った鎖骨と肋骨骨折の怪我の影響でル・マン24時間レースの欠場を余儀なくされたコンウェイ。彼はサンパウロでチームに復帰し、7号車トヨタでレース序盤の2時間を走ったが、身体的な問題はなかったという。
「とても満足している」と彼はSportscar365に語った。「これで懸念をひとつクリアにすることができたから、(不安なく)次のレースに臨むことができる」
■キャデラック後退の理由
フェラーリの広報担当者によると、ライブタイミング上では50号車がスタートから2時間を経過したあたりでコース上にストップしていると示されたが、レース中に技術的な問題は発生しなかったという。それは499Pに搭載されたトランスポンダーの問題によって引き起こされ、この影響で一時的に暫定順位が下がったように見えたものと考えられる。
2号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・レーシング)は、3時間目に予定外のピットインを行った。理由はタイヤが適切に装着されていなかったためだ。このタイムロスにより、アレックス・リンは順位を落としトップ5フィニッシュの可能性から外れた。
アール・バンバーとの2名体制でこのクルマをドライブしたリンは、「右フロントタイヤがうまくはまっていなかった」とSportscar365に語った。「だから、ピットアウトしてすぐにピットに戻り、タイヤをつけ直す必要があった。それだけだった。胸が張り裂けそうだ」
■最速のポルシェだったのに
ジェンソン・バトン、オリバー・ラスムッセン、フィル・ハンソンがシェアする38号車ポルシェ963(ハーツ・チーム・JOTA)は、インテルラゴスで総合7位となりFIAワールドカップ・フォー・ハイパーカー・チームでの初優勝を飾った。これにより今季同クラスにエントリーしている4台のうち、まだ優勝していないのはプロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963のみとなった。
しかし、JOTAの共同オーナーであるサム・ヒグネットは、ウィル・スティーブンスがポルシェ・ペンスキーの6号車と接触してペナルティを受け、さらにカラム・イロットが乗り込んだレース終盤にはマシンのリヤを損傷するアクシデントに見舞われたため、12号車ポルシェ963がその速さに見合った結果を残せなかったことを嘆いた。
「12号車は間違いなく最速のポルシェだった。(8号車)トヨタに次ぐ2位でフィニッシュできたはずだ」とヒグネットは語った。
■リタイア原因は1ユーロ未満の部品
マンタイ・ピュアレクシングのトリオは、姉妹車91号車ポルシェ(マンタイEMA)のヤセル・シャヒン/モーリス・シューリング/リヒャルト・リエツ組が、序盤のアクシデントを引きずりノーポイントに終わったことに助けられ、LMGT3のドライバーズランキングで単独首位に浮上。25ポイントのリードを築いた。このレースが始まる以前は、91号車と92号車の両クルーが75ポイントで並んでいた。
LMGT3クラスで今季2度目のポールポジションを獲得し、レースの序盤をリードした85号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(アイアン・デイムス)は、ウォーターパイプの固定具が破損したことによるフルード漏れのため、リタイアを喫することとなった。
「ウォーターパイプのチューブを失ってしまった。おそらく熱によるものだと思う」とラヘル・フレイはSportscar365に説明した。「それがピットストップで起きたのはとても奇妙に思う。1ユーロ(約170円)もしないパーツだけど、このようなトラブルを見たのは初めて。モータースポーツの残酷な部分ね」
彼女は「(92号車)ポルシェには勝てなかっただろうけど、2位になることは間違いなく可能だった。またしても0ポイントに終わりイライラし始めている! 今年のWECは私たちのシーズンではなかったみたいね」と続けた。
「ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズでは少なくとも(第3戦イモラでの勝利で)好転できたし、WECでも好転を期待していたのだけど……」
■来季開幕戦までおあずけ
チームWRTのプリンシパルであるヴァンサン・ボッセは、マキシム・マルタン/バレンティーノ・ロッシ/アハマド・アル・ハーティ組46号車BMWが優勝したマンタイ・ポルシェから2周遅れのLMGT3クラス5位でフィニッシュした後、M4 GT3のパフォーマンスに不満を示した。
ボッセはレース後、「ノーエラーだったのにもかかわらず、46号車が5位という結果になってしまうということは、ライバルと比較してスピードに問題があるということだ」と語った。
クリスチャン・リードがLMGT3のプロトン・コンペティションで一度限りの復帰を果たしたことで、このドイツ人はWECの出場レース数を最多の「86」とした。トヨタのブエミは、リードの“引退”にともない今シーズン中に彼の記録を追い超す予定だったが、来季2025年の開幕戦カタールまで持ち越されることとなった。
今大会のリタイアはわずか3台で、第2戦イモラと同じく33台が完走を果たした。アイアン・デイムズのランボルギーニ以外にリタイアしたのは、エンジントラブルに見舞われた11号車イソッタ・フラスキーニ・ティーポ6・コンペティツィオーネ(イソッタ・フラスキーニ)と、レース後半に突如駆動力を失った小泉洋史組82号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(TFスポーツ)だ。後者のストップでは、レース全体で3回あったフルコースイエロー(FCY)のうち2回目が出されている。
■性能調整に関するコメントで最初の違反
トヨタのチームディレクターであるロブ・ロイペンは、WECのスポーティングレギュレーション6.2.1条で禁止されている、BoP(性能調整=バランス・オブ・パフォーマンス)に関するコメントをメディアに漏らしたことで、WECのスチュワードとトラブルになった最初のパドック関係者となった。
問題となった記事は、『Motorsport.com』のオランダ版とイタリア版に掲載されたもの。その中でロイペンは、ACOフランス西部自動車クラブとFIA国際自動車連盟が「透明性のない」BoPプロセスを採用していることを批判。今後のルールの決め方にさらなる「誠実さ」を求めた。
これに対してスチュワード(審査委員)は、「これらの発言はFIAの公平性に疑問を投げかけ、その誠実さに疑念を抱かせ、道義的な損害をもたらすものである」とした通達を発表した。
処分は1万ユーロ(約170万円)の罰金で、トヨタの関係者が同様の発言をしないことを条件に今シーズン中の執行猶予が与えられた。スチュワードの通達によると、性能調整に関する公然の議論を禁じるルールが適用されたのは今回が初めてだったため、ロイペンには寛大な処分が与えられた。しかし、今後の違反者はそれほど幸運に恵まれないかもしれない警告している。
■観客数が大幅増
グッドイヤータイヤを履くLMGT3クラスの最速スティントアベレージ・アワードである“ウイングフット賞”は今回、ハート・オブ・レーシングチーム(27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3/クラス2位)のアレックス・リベラスに贈られた。
ビスタAFコルセのアレッシオ・ロベラ(55号車フェラーリ296 GT3)は『2024グッドイヤー・ウイングフット・エンデュランス・アワード』で、チームWRTのアウグスト・ファーフス(31号車BMW M4 GT3)を2ポイント差でリードしているが、両ドライバーとも今シーズンはまだ個人賞は獲得していない。
レース主催者の発表によると、10年ぶりの開催となった今大会の観客数は3日間合計で7万3205人。前回2014年にWECがブラジルを訪れた際の5万5000人を大きく上回った。地元出身のルーベンス・バリチェロなども訪れていたレースの決勝は、同じく元F1ドライバーのタルソ・マルケスが国旗を振りスタートの合図を送っている。
第5戦が終了したWECの次戦は、アメリカ・テキサス州オースティンで開催される『ローン・スター・ル・マン』だ。8月30日から9月1日にかけて、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で行われる同6時間レースは、2019/20年シーズン以来の開催となる。
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みんなのコメント
これに対する批判を受け付けないどころか、罰金まで科して封じ込めるというのは、あまりに独善的すぎないだろうか。
見る側からしても、もっと分かり易い仕組みにして欲しいと思う。
レース界でも健在だな
甘んじて受けると言うことは納得の上だろう
正当性があるなら裁判でも起こせば良い
それができないなら尻尾を巻いて撤退
どーせ誰も惜しまないでしょう
F1では140戦140敗北して逃げたトヨタですから
誰も驚きませんよ🫢