独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)では、2018年度の評価から新たに夜間の対歩行者検知自動ブレーキテストなどを導入。またこれとは別に、一定の性能を満たした車種には国がお墨付きを与えるという衝突被害軽減ブレーキ性能の認定制度を4月1日からスタートさせた。
今後、メーカー各社がそれぞれ開発を進め、市販車に装着している衝突軽減ブレーキは、一定の基準で横並び評価されることになる。
禁断の同門対決5番勝負 【高い車の安いグレードvs.安い車の高いグレード】
そんななかで、衝突被害軽減ブレーキ、いわゆる自動ブレーキの、それぞれ優れている点はどこにあるのだろうか? 主要6メーカーのポイントを交通コメンテーターの西村直人氏に各社の特徴や名称の整理、「いいところ」を伺ってみた。
※本稿は2018年4月のものです
文:西村直人、ベストカー編集部/写真:トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、三菱、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年5月10日号
■主要6メーカーの衝突被害軽減ブレーキ性能比較表
■トヨタ「トヨタセーフティセンス」のいいところ
TEXT/西村直人
「トヨタセーフティセンス」とは「先進安全技術群」の総称で、自律自動ブレーキの名称は「プリクラッシュセーフティ/PCS」。
事故の調査 → シミュレーション解析 → 先進安全技術の開発といった「実安全の追求」サイクルにより交通死傷事故ゼロを目指すトヨタ。世の中で多発している事故形態を分析し、それらの被害を抑制する先進安全技術を真っ先に開発している。
ちなみに2017年7月末現在33車種に展開が進み、2017年末までに日米欧すべての地域の車両への展開が完了(累計500万台)した。
■日産「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」のいいところ
「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」は日産製の自律自動ブレーキ単独の名称。予防安全性能アセスメントでの評価が高い要因は(日産はJNCAP(自動車事故対策機構)が実施する予防安全性能アセスメントの評価が、他メーカーよりも比較的高い)、ノートやセレナなど搭載する単眼光学式カメラセンサーと、その認識した画像の解析アルゴリズムやプログラムが優れている点。
運転支援技術である「プロパイロット」と自律自動ブレーキは別機能である点も、名称で明確に分類していてわかりやすい。
■ホンダ「ホンダセンシング」のいいところ
「ホンダセンシング」とはホンダ製の先進安全技術の総称で、自律自動ブレーキの名称は「衝突軽減ブレーキ/CMBS」。発生確率の高い事故を抑制する最大9つの先進安全技術でまとめ上げて運転をサポート。軽自動車のN-BOXからフラッグシップモデルのレジェンドまで、クラスを問わず同じ先進安全技術を搭載したことにメーカーの良心が感じられる。
■マツダ「i-ACTIVESENSE」のいいところ
先進安全技術群の総称で自律自動ブレーキの名称は「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(アドバンストSCBS):スマート・ブレーキ・サポート(SBS)」。高い検知能力もさることながらブレーキ性能も優秀で実際の回避支援能力が高い。カラー化されたヘッドアップディスプレイも見やすい。
■スバル「アイサイト」のいいところ
先進安全技術の総称で自律自動ブレーキの名称は「プリクラッシュブレーキ」。運転支援技術にしてもVer表記による機能昇華をやめ、「アクセル&ブレーキ制御+ステアリング制御」を【ツーリングアシスト】に改めたことで誤解を抱かせないようにした。
■三菱「e-Assist」のいいところ
先進安全技術の総称で自律自動ブレーキの名称は「衝突被害軽減ブレーキシステム/FCM」。エクリプスクロスのFCMはACCを装着するとトリプルセンサー方式となり、悪条件での検知能力が向上。また、身長を問わず正しいドライビングポジションがとりやすく、緊急時の急ブレーキもやりやすい。
【番外コラム】 トヨタが研究中!予防安全性能はまだ進化する!
トヨタは2011年1月、先進安全技術研究センター(CSRC)を米国ミシガン州アナーバー市に設立。ここではチャック・グーラッシュ所長のもと日本のトヨタの技術者も参画し、交通事故ゼロを目標とした技術開発が行われている。グーラッシュ氏はGMでエンジニアとしてのキャリアを積み、その後トヨタで20年以上、安全に関わる技術開発に従事。
「CSRCではトヨタセーフティセンスにおけるプリクラッシュセーフティのテスト項目策定や歩行者マネキンの開発、交通弱者の保護として子供の受傷を減らす技術の解析、運転中の脇見運転を防止するための研究などを重ねてきました」(グーラッシュ氏)。
2017年から2021年は「CSRC ネクスト」と題し、自動運転技術の開発やドライバーの状態検知、さらにはビッグデータの解析も行う。
また、乗用車だけでなく商用車を活用したサービスとしての移動体を研究する「 MaaS」の分野にも踏み込み、新しい時代のモビリティを研究している。
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