この記事をまとめると
■自動車メーカーはかつて販売チャンネルが数多く存在した
どれもがインパクト抜群のホンダ! なのに「イマイチ思い出せない」影薄車3選
■アコードやシビックは店舗ごとにキャラクターが異なる兄弟車が多く存在した
■アコードやシビックは生き残っているが兄弟車は廃止となった
ホンダは姉妹車の宝庫だった!
今や日本でも「○○のお店に行けば○○のクルマが何でも買える」、つまり1ブランドにつき1つの販売チャンネルというディーラー網が当たり前となっているが、かつては販売台数拡大のため1つのブランドが複数の販売チャンネルを展開していることのほうが一般的だった。
ホンダも1978年、プレリュードの発売に合わせてベルノ店を誕生させたのを皮切りに、1984年に従来のホンダ店チャンネルから分割させる形でクリオ店、1985年に同じくプリモ店を発足。
2006年に現在のホンダカーズ店へ統合するまで、スポーツカーやSUVを専売車種とするベルノ店、高級車を専売車種とするクリオ店、軽自動車やシビックを専売車種とするプリモ店の3チャンネル体制を敷いていた。
そのため、ホンダの国内販売車種のなかにも、かつては「兄弟車」といえる間柄の車種が、数は決して多くないながらも存在していた。ここではそんな懐かしのホンダ兄弟車たちを紹介したい。
●アコード/ビガー(のちにセイバー)/インスパイア/アスコット/ラファーガ/トルネオ
アコードはホンダのなかでシビックに次いで長い歴史を持つFF(前輪駆動)Dセグメントカーであるが、その兄弟車が生まれたのは1981年9月デビューの2代目から。ベルノ店向けとして設定されたその車種には「ビガー」(VIGOR)の名が与えられた。
この2代目アコード/初代ビガーには「サルーン」(4ドアセダン)のほか3ドアの「ハッチバック」も設定されていたが、いずれもアコードが角形2灯、ビガーが北米向けアコードと同様の角形4灯のヘッドライトを採用したのが、外観上の最大の相違点。リヤまわりもライセンスプレートの装着位置がアコードはコンビランプの間、ビガーはバンパー中央となるなど、比較的わかりやすく区別されている。
またエンジンラインアップも、アコードには1600シリーズ(EP型CVCC−IIエンジン)と1800シリーズ(EK型CVCC−IIエンジン)の2種類が設定されていたのに対し、ビガーは1800シリーズのみとされるなど、のちの上級移行を示唆するような施策も採られていた。
だが1985年6月にデビューした、リトラクタブルヘッドライトやFF車世界初の4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションを採用したことで知られる3代目アコード/2代目ビガーになると、両者の差異は非常に少なくなる。リヤまわりのライセンスプレート装着位置がアコードはコンビランプの間、ビガーはバンパー中央という点は先代と同様だが、フロントまわりはグリルの処理が異なる程度で、ほとんど見わけがつかなくなった。
またエンジンラインアップも、アコードとビガーの両車に1.8リッターのSOHC12バルブ+シングルキャブとDOHC+デュアルキャブ、2リッターのDOHC+PGM-FI(電子制御式燃料噴射システム)の3種類が設定された。ただしボディタイプは、ビガーが4ドアセダンのみに絞られ、3ドアハッチバックの「エアロデッキ」と2ドア「クーペ」はアコードのみとされている。
そしてバブル経済真っ盛りの1989年になり、アコードが4代目へと世代交代すると、前述の3チャンネル体制が整ったこともあり、そのファミリーが一気に拡大。各車種の兄弟関係も変化する。
クリオ店専売車種となったアコードの兄弟車には、ビガーに代わりアスコットが設定され、ベルノ店ではなくプリモ店の取り扱い車種に。またアコードの上級モデルとして、2リッター直列5気筒エンジンを縦置きするアコード・インスパイアが新たに追加され、ビガーはその兄弟車となった。なおアコード・インスパイアはクリオ店、ビガーはベルノ店の専売車種という位置づけだ。
アコードとアスコットの外観上の違いは明確で、アコードがスポーティなバンパー・ライト・グリルなどを備えるのに対し、アスコットは落ち着いた高級感のあるテイストに。そしてアスコットのボディ側面にはリヤクォーターウインドウが備わるのも、大きな識別点だった。
またアコードとアスコットとでは室内のインパネ形状も一部異なっており、アコードは助手席側上部を削って開放感を、アスコットは逆に盛り上げて包まれ感を演出。そのほかアスコットには最上級グレードとして「2.0Siプレステージ」を設定し、本革シートや運転席フルパワーシートを標準装備するなど、アスコットには“小さな高級車”としてのキャラクターが与えられていた。
アコード・インスパイアとビガーは、4ドアハードトップのサイドビューこそほぼ共通だが、前後ランプやフロントグリルはアコード・インスパイアが落ち着いた高級車らしいテイスト、ビガーがスポーティなデザインへと性格がわけられている。
内装は造形こそ共通だがカラーや表皮、木目パネルの設定が異なり、アコード・インスパイアには日本人好みの落ち着いたテイスト、北米では高級車ブランド「アキュラ」で販売されるビガーにはアメリカ人好みの明るい雰囲気のものが訴求色とされていた。
1992年1月には3ナンバーボディに2.5リッター直列5気筒エンジンを搭載するモデルが追加。こちらに関してはアコード・インスパイアの社名から「アコード」が取れた「インスパイア」を名乗っている。
なお、4代目アコードには4ドアセダンのほか5ドアの「ワゴン」と2ドア「クーペ」も設定されていたが、アスコット、アコード・インスパイア、ビガーともボディタイプは4ドアのみとされている。
1993年にアコードが5代目へスイッチし全車3ナンバー化されると、アスコットは5ナンバーサイズを維持しつつ全長はより短く、全高はより高いスクエアなフォルムを採用しつつ直列5気筒エンジンを搭載するモデルとして2代目にフルモデルチェンジし、アコードから独立。同時にベルノ店扱いのラファーガが兄弟車として設定された。
見た目の違いはほぼフロントマスクに集約され、アスコットは縦、ラファーガは横基調のフロントアッパーグリルを採用し、フォグランプをアスコットが丸型、ラファーガが角形としているのが大きな識別点。またアスコットにはメッキやクリアレンズ、ラファーガにはブラック仕上げやオレンジレンズを多用することで、アスコットは高級感、ラファーガはスポーティさを演出していた。
しかし、バブル経済崩壊とその後ホンダが自ら火付け役となったミニバンブームに押されたうえ、セダン系車種が増えすぎたことも相まって、販売は低迷。1997年にアコードが6代目に世代交代したのと時を同じくしてアスコット、ラファーガともモデル廃止となる。
全車3ナンバー化された2代目インスパイア(クリオ店扱い)とビガー改め初代セイバー(SABER。ベルノ店扱い)は1995年2月に登場。2リッターおよび2.5リッターの直列5気筒縦置きエンジン(1995年7月に3.2リッターV6エンジン縦置きモデルを追加)や4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションといった基本メカニズムは先代のキャリーオーバーだが、全高が30mm高い1405mmにされるとともにエクステリアが大きく変化。先代の低く構えた水平基調のスクエアなフォルムから、丸みを帯びたやや背高のフォルムへと一新された。
インスパイアとセイバーとの外観上の違いは従来どおり、インスパイアが落ち着いた高級車らしいテイスト、セイバーがスポーティなデザイン。なお北米では「アキュラTL」として販売されている。
アコードが1997年9月に6代目へ生まれ変わると、「トルネオ」というプリモ店・ベルノ店扱いの兄弟車が再び設定される。ただしトルネオにワゴンはなく、セダンのみが用意された。
両車の違いは外観に集約されており、アコードには横長のヘッドライトやスクエアなリヤコンビランプ、トルネオにはスクエアなヘッドライトや横長のリヤコンビランプを与えることで差別化。
内装やグレード展開は共通で、2000年6月のマイナーチェンジとともに追加された、2.2リッターDOHC VTECエンジンを搭載するスポーツグレード「ユーロR」はアコードのみならずトルネオにも設定された。
しかし2002年10月にアコードが7代目になると、トルネオはモデル廃止となり、再びアコードに一本化されている。
3代目インスパイアと2代目セイバーは1998年10月にデビュー。この代で従来の直列5気筒エンジンと縦置きフロントミッドシップレイアウトから決別し、新開発の3.2リッターまたは2.5リッターのV6横置きエンジンが搭載されるようになった。また北米向けアキュラTLを主眼として、ホンダ・オブ・アメリカが企画・開発・生産する輸入車となったことも大きな話題を呼んだ。
インスパイアとセイバーとの外観上の違いは引き続き、インスパイアが横基調のメッキグリルを持つ落ち着いた高級車らしいテイスト、セイバーが縦基調のグリルをもつスポーティなデザインが与えられている。
2001年4月のマイナーチェンジではフロントマスクの押し出しが強められるとともに、3.2リッターV6エンジン搭載車が従来の225馬力から260馬力へと大幅にパワーアップ、専用の足まわりを装着する「タイプS」に生まれ変わった。
だが、2003年6月にインスパイアが4代目になるとセイバーは統合され、インスパイアが全チャンネル併売車種へ。そのインスパイアも2007年12月デビューの5代目を最後に、2012年9月で国内販売を終了した。
シビックにも兄弟車多数!
●シビックフェリオ/コンチェルト→ドマーニ&インテグラSJ
ホンダの日本国内における兄弟車戦略は、ホンダの最長寿モデルであるシビックでも、4ドアセダンにおいてのみ展開されていた。
その最初のモデルとなったクリオ店扱いのコンチェルトは、1987年9月デビューの3代目シビックセダンをベースとして、1988年6月にデビュー。エクステリアは前後のランプ類やバンパー・グリルが見比べればわかる程度の「似て非なるもの」だったが、サイドビューは大きく異なる。
コンチェルトはシビックに対し全長が185mm長い4415mm、全高が35mm高い1395mm、ホイールベースが50mm長い2550mm(全幅は両車とも1690mm)とされたうえ、リヤクォーターウインドウのある6ライトウインドウとされ、パッケージングも別物となっていた。
加えて内装も、インパネが専用形状となり、木目調パネルや本革シートを設定するなど、シビックよりも高級かつ快適性を重視した設計となっていたのも見逃せない。
なお、コンチェルトにはハッチバックの5ドアセダンも設定されていたが、こちらはイギリスのオースティン・ローバー・グループと共同開発されている。
だがコンチェルトは1代限りでその役目を終え、1992年10月に初代ドマーニへとスイッチ。1991年9月デビューの5代目シビックフェリオ(4ドアセダン)をベースとしながら、内外装はまったくの別物に。若々しくスポーティなシビックフェリオに対し、ドマーニには上質で落ち着いたデザインが与えられた。
ドマーニのボディサイズはシビックに対し全長が20mm長い4415mm、全高が15mm高い1390mm、ホイールベースが同一の2620mm(全幅は両車とも1695mm)と、先代ほどの差は認められない。
しかしエンジンラインアップは大きく異なる。シビックフェリオは1.3リッターが1種類、1.5リッターが3種類、1.6リッターが3種類という極めて多彩なバリエーションを誇ったのに対し、ドマーニは1.6リッターが2種類と1.8リッターが1種類に絞られるとともに、やはりシビックより上級のモデルに位置づけられていた。
1995年9月に6代目シビックフェリオがデビューすると、その後兄弟車はさらに増殖。ベルノ店扱いのインテグラSJが1996年2月、2代目ドマーニが1997年1月に誕生する。
だがいずれもフロントマスクとランプ類を除けばシビックフェリオとの共通点が多く、その一方でエンジンバリエーションはシビックフェリオよりも少ないため、両車の存在感は低いものに。シビックが2000年9月に7代目へ生まれ変わるタイミングで、インテグラSJとドマーニはモデル廃止となった。
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