1月に開催された東京オートサロン 2022においてVision Ralliart Concept、アウトランダー Ralliart Style、エクリプス クロス Ralliart Styleという“Ralliart”の名を冠した3台のコンセプトモデルを出展した三菱自動車。世界ラリー選手権(WRC)やパリダカールラリーでその走りと技術を鍛えて上げたヘリテージブランドの復活は三菱ファンはもちろん、クルマ好きにとってはウェルカムな出来事と言わざるを得ない。
そこで! ここではラリーアートの復活と今後の期待を込めて、三菱自動車が世界に誇った画期的な先進技術を改めて振り返りたい。
日本車が一番輝いていた時代の旗印「フラッグシップスポーツ」とは何だったのか
文/FK、写真/三菱自動車、FavCars.com
時代を先取り(?)した初代ミラージュの“スーパーシフト”
ハッチバックは1978年に登場。セダンが追加されたのは1982年だった。エンジンは1.2リッターと1.4リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載。1983年まで生産された
体格の大きな人でも楽に運転できる広くて室内、既存モデルを超える独創性のあるメカニズム、充実した質感を持つワールドワイドなクルマを目指して開発された初代ミラージュ。
そのデビューは1978年3月、一番の目玉となったのは4速MTにエコノミーシフトとパワーシフトという2段階の切り換え機構を設けたスーパーシフトだった。
小さめの減速比に設定されたエコノミーシフトが経済的で静かな走行に適し、大きめの減速比に設定されたパワーシフトが駆動力を必要とする山間部や悪路走行などの走行に適した2段の副変速機と、4段の主変速機との組み合わせからなる8段変速機構のスーパーシフト。道路の状況に応じてあらかじめセットしておくプリセット方式の採用によって無理なく無駄のない走りを可能にするとともに低燃費も実現。
Hパターンの4速シフトレバーのすぐ横に、エコノミーとパワーを切り替えるレバーが装備されたセンターコンソールは、いま見ても斬新だ。
カッ飛びだったミニカ ダンガンZZが搭載した量産車世界初の“DOHC5バルブエンジン”
軽自動車の革命児、カッ飛びターボだったが、登場した翌年に軽自動車の排気量上限が660ccに変更に。結果、550ccのダンガンZZはたった1年間しか製造されなかった貴重なモデル
1989年1月にフルモデルチェンジした6代目ミニカが誇るフラッグシップのダンガンZZは、激しいパワーウォーズが展開された当時の軽自動車のなかでも突飛した一台として存在感を発揮。
その最大のトピックは市販4輪車として世界で初めて実用化したDOHC 5バルブ+インタークーラーターボを組み合わせたエンジンだ。1気筒あたり3つの吸気バルブと2つの排気バルブとしたことでクラス最大レベルの吸気バルブ開口面積を得るとともに、個々の吸気バルブの小型・軽量化、さらには燃焼室の超コンパクト化が可能となり、クラス最高水準の高回転、高出力、ハイレスポンスを実現。
加えて、世界初の3スプレーインジェクターを採用したECIマルチポイント電子制御燃料噴射システム、クラス初となるフリクションロスが少ないローラロッカアーム、適正なバルブクリアランスを自動的に保つオートラッシュアジャスター、ノックコントロール付きの電子進角といった軽自動車とは思えない新機構&新装備の数々も搭載し、圧倒的な走行パフォーマンスを披露した。
初代エクリプスの“電動フロントシートベルト”は逆輸入車ならではの装備
北米市場で大ヒットとなった初代エクリプス。リトラクタブル・ヘッドライトが採用された。当時の日本ではまだ珍しかった安全装備が充実していた
英国で26戦無敗を誇った18世紀の名競争馬の名を冠した米国からの逆輸入車=エクリプスは、1990年2月に国内デビュー。
三菱とクライスラーが合弁で設立したダイヤモンドスターモーターズの工場で生産され、その優れた内外装デザインなどが高く評価されて1989年の米国最優秀産業デザイン賞も獲得した。
アメリカンテイスト満点のワイド&ローシルエット、200psの最高出力を発生した2.0リッター DOHC16バルブ インタークーラターボエンジンの搭載、エンジンの高出力をフルに活かすビスカスカップリング付センターデフ方式フルタイム4WDなど、スポーティ感あふれるデザインに相応しい走りも実現。
加えて、発売当時の米国では運転席エアバッグ、またはオートマチックシートベルトが義務づけられていたことから、エクリプスでは後者(電動フロントシートベルト)を標準装備。
電動フロントシートベルトはドアを閉めてイグニッションキーをオンにすると自動でシートベルトが装着できる日本初の装備だったが……その後はエアバッグの普及に伴って姿を消した。
快適ドライブの積極的アプローチを展開した初代ディアマンテの“MICS”
当時の上級セダンにはほとんど見られなかったFF駆動を採用。1995年に2代目へとバトンタッチするまでに22万台超を販売するという大ヒットモデルとなった
新しい価値観を提案するピラードハードトップとして1990年5月に登場したディアマンテ。
クラスを超越した堂々とした深みのあるフォルムはもとより、新開発の電子制御可変吸気システム付きV6エンジン、世界初の機能を有したトラクションコントロールシステム、乗り心地と操安性を両立したアクティブコントロールサスペンションなど三菱の技術の粋を結集した意欲作として今なお記憶に残る一台だが、なかでも斬新だったのがMICS(三菱インテリジェントコックピットシステム)なる世界初のハイテク機能だ。
これはシートスライド位置、シートリクライニング角、シート前・後部の高さ、ルームミラー&ドアミラーの角度、ステアリングのチルト角などを総合的に自動調整するもの。コンピュータがドライバーのポジションを記憶して再生するリモコン調整機能をはじめ、標準ポジションの自動設定機能やシートとステアリングの間を自動で広げて楽に降車できるイージーアクセス機能を採用するなど、まさに1990年代をリードする先進装備が満載な一台だった。
ハイテク装備満載のGTOで異彩を放った“2つのアクティブシステム”
スタリオンの後継モデルとして登場したGTO。43.5kgmという大トルクが実現する強烈な加速力は他の280ps車を圧倒。個性の強いスタイリングも話題となった
GTOは4度のマイナーチェンジこそ行われたものの、1代限りで姿を消した悲運の直線番長。空前のパワーウォーズが勃発していた1990年10月に登場したGTOは、他の280psモデルに比べて全長4555×全幅1840×全高1285mm、車重1700kgという大柄&重量級のボディもひと際目を惹いた。
そんな見た目のインパクトもさることながら、中身も超本格派でドイツ・ゲトラーグ社製の5速MTをはじめ、ショックアブソーバーの減衰力を電子制御するECS、中・高速時に後輪を前輪と同方向に操舵する4WS、マフラーへの排気ガス流入経路を切り替えることでスポーティな音質が楽しめるアクティブエキゾーストシステム、高速走行時にフロントベンチュリーカバーとリアスポイラーが自動的に可動するアクティブエアロシステムなどの最新ハイテク装備も大きな話題に。
しかし、2001年に販売の低迷と側面衝突規制に適合できないという理由などから販売を終了。その際、三菱から「今後はRVや小型車の生産・販売に注力する」という発表もあり、2代目が登場することはなかった。
i-MiEVは新時代の三菱の技術を知らしめた世界初の“量産型電気自動車”
世界初の量産型電気自動車として鳴り物入りで登場したi-MiEV。個人向けとして販売開始されたのは2010年4月。グループPSAへOEM供給され、欧州では「プジョー・アイオン」と「シトロエン・シーゼロ」として販売された
長年の電気自動車に対する研究開発から得られたノウハウと高度な車両統合制御技術のMiEV Operating Systemを導入した世界初の量産型電気自動車として、2009年7月に市場投入されたi-MiEV。
1回の充電で160kmの走行距離を実現(10・15モード)し、日常ユースに対応する走行距離を確保したi-MiEVは電気自動車ならではの静粛性と快適な走りに加え、小型・軽量・高効率の永久磁石式同期型モーターの搭載で発進時から最大トルクを発生し、軽快でトルクフルな走りを披露した。
また、大容量の駆動用リチウムイオンバッテリーを床下に、高出力&高効率のモーターをはじめとするパワーユニットをラゲッジルーム下に搭載したこととリアミドシップレイアウトの特長であるロングホイールベースの相乗効果で高い居住性も確保。低重心化による優れた操縦安定性も実現して電気自動車の魅力を満載した一台だったが……発売当時のメーカー希望小売価格が438万円と高価だったことから価格面で苦戦を強いられることとなり、2021年3月末に生産終了となった。
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みんなのコメント
デザインにおいても、角形4灯をモチーフにスラントノーズや直線を匠に使うデザインセンスは画期的であった。
エンジンも、シリウスダッシュという名前で可変バルブを採用したり、ピストンを止める可変気筒など多彩でユニークなメーカーだった。
スーパーシフトは、自分も愛車のコルディアターボで経験したが、シフトにコツが要り、それ程の良さは感じられなかった。
ただ、キャブレターターボで武装したエンジン性能は、今では高性能ではないが、クーペスタイルで空力性能は良く、FFで引っ張るような走りは面白かった記憶がある。