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なぜボンネットに穴がある? かつては「ターボ車の証」だった理由とは

掲載 更新 16
なぜボンネットに穴がある? かつては「ターボ車の証」だった理由とは

■空気の流れを利用する、さまざまな「ダクト」

 かつては、ボンネットに穴(ダクト)が空いているクルマを見かける機会がありました。しかし、最近の軽自動車や普通車のほとんどには、ボンネットにダクトはありません。このダクトには、どのような役目があるのでしょうか。

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 ボンネットにダクトのあるクルマの多くは、「ターボチャージャー」を搭載しています。ターボチャージャーは、小さなエンジンでもパワーを出せるメリットがありますが、その構造上エンジンが取り入れた空気が熱くなりやすいデメリットも持っています。

 そのため、ターボ車には取り入れた空気を冷却するための「インタークーラー」がセットで搭載されているのです。

 例えば、スバル「レヴォーグ」では、ボンネットの中心に大きなダクトがあります。そのなかにはインタークーラーが設置され、走行すると風がインタークーラーに当たり、エンジンが吸い込む風を冷やしています。これがなければ、エンジンは熱い空気を吸い込んでしまうため、本来の力を発揮できなくなってしまいます。

 ダクトについて、スバルの販売店スタッフは、以下のように話します。

「ボンネットのダクトはスバルのアイコンにもなっています。そのため、レヴォーグやWRXなどの車種では、今でもボンネットにインタークーラー用のダクトを開けています。

 効率よく冷やすのではあれば、フロントバンパーの中に設置するべきなのでしょうが、これまでのイメージもあるので変えることは難しいのかもしれません」

 スバルではターボ車のシンボルとして、欠かせない装備となっているようです。しかし、ホンダ「シビックタイプR」やレクサス「RC-F」では、ほかの理由からダクトを採用しているといいます。

「シビックタイプRにはダクトが装着されていますが、これはインタークーラー用のものではありません。シビックタイプRのインタークーラーはフロントバンパーのなかにあり、ボンネットのダクトはエンジンルームの熱を効率よく逃がすために設けられたものです」(ホンダ販売店のスタッフ)

「RC-Fは、ターボ車ではありません。ボンネットのダクトは、エンジンルームのなかで発生した熱を排出するために設けられています。

 Fシリーズはほかの車種に比べて排気量の大きなエンジンを搭載し、スポーツ走行を意識して作られているため、空力を活かす設計がされています」(レクサス販売店のスタッフ)

※ ※ ※

 シビックタイプRは、ターボ車特有のエンジンルーム内の熱を効率よくするためにダクトが設けられ、ターボ車ではないRC-Fでは、ボンネットのダクト以外にもフロントフェンダー部分にも同様のダクトが備わっています。

 なお、日産の調査によれば、エンジンルーム内の温度分布は80度から90度が多く、高いところでは100度以上の熱を発している部分もあるといいます。

 そのため、「RC-F」では、フロントタイヤを収める「フェンダー」にも、熱を逃がすためのダクトが装備されています。

 かつては、「ターボ車の証」的な存在だったボンネットのダクトですが、近年では熱効率の問題や空力特性などの目的が大きいようです。

■巨大なボンネットダクトは競技のために必要だった?

 ダクトのあるボンネットは、ターボ車や、エンジンルームの熱を逃がすために有効ではあるものの、普通のボンネットに比べて部品点数が多くなり、自動車メーカーの製造コストも上がります。

 ある意味「豪華な装備」ともいえるダクトですが、かつてターボを装備したスポーツカーには、必ずとっていいほどボンネットにダクトが装着されていた時代がありました。

 1993年から1999年に発売されたトヨタ「セリカ GT-FOUR」や、1992年から2014年まで発売されていた「ランサーエボリューション」シリーズなどは、とくに大きなダクトを装着しています。

 その理由について、モータースポーツに参加したこともある中古車販売店のスタッフは、以下のように話します。

「1980年から1990年代は、市販車をベースにしたモータースポーツであるWRC(世界ラリー選手権)が人気でした。そこにエントリーするクルマたちは、改造範囲の狭い『グループA』というカテゴリーであるため、市販車の外観を大きく変更できません。そのため、市販車の状態で大きなダクトを付ける必要があったのではないでしょうか。

 競技用のクルマは常にエンジンに負荷がかかっているため、エンジンルームは非常に高い温度の状態になります。熱がこもらないようにするために、ボンネットのダクトは非常に効果的です。

 ただ、ボンネットのダクトは雨水の入口にもなるため、エンジン部品に錆が発生する原因にもなります。かつてはその対策が十分ではなく、トラブルに至る車種も少なくありませんでした。

 例えば、ランサーエボリューションでは、ダクトの真下にエンジンやターボチャージャーがあるため、雨水が原因でボルトが固着するといった症状が起こることもあり、中古車を購入する際は注意が必要です」

※ ※ ※

 なお、近年のスポーツカーでは雨水対策もされており、前出のRC-Fでは、ボンネットから入った雨水がエンジンに落ちてしまわないように、雨水が抜けていく専用の経路も設置されています。

 インタークーラーの冷却というターボ車ならではの事情や、エンジンルームの熱を逃がすなど、ボンネットのダクトは車種に応じたさまざまな理由によって装着されています。

 また、近年は「競技のために作られた市販車」として、トヨタから「GRヤリス」が登場していますが、ターボ車でありながらボンネットにダクトがないことを考えると、ダクトは必ずしも「ターボ車の証」とはいえない時代なのかもしれません。

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みんなのコメント

16件
  • ボンネットに「穴」があるからターボなのではなくて、必要だから開いている。
    スバルの様にインタークーラーをエンジン上部に設置すれば必然的に吸気口として必要なだけ。
    その他は逆にエンジンルームにこもった熱を逃がす為の「排熱孔」なので全く形状が異なる。
    日本車初のターボ車、スカイラインジャパンやセドリックグロリア430ターボは勿論「穴」など開いていないし、ハイソカーブームだったマークII3兄弟のターボ、クラウンアスリートターボ、アリストターボ、セフィーロターボ、R32GTS-t等ターボ全盛期でも前置インタークーラー車はボンネットに「穴」など開いていない。
    つまり、「穴」の有無ではターボか否かわからない!
    スバル車に関してはターボ車は全て上置インタークーラーなので、フロントから見るとボンネットに大きな吸気口があるからターボとわかるが…
  • マッドマックスを観て育ち、バブルの頃に免許を取ってインタークーラー付ターボ車に乗ってた自分にとっては、誰がなんと言おうがパワーバルジ、フードエアインテーク、フードルーバーはあった方が絶対にカッコイイ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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