EVを巡る議論の構造
電気自動車(EV)の普及が進むなか、賛否両論が繰り広げられている。このような議論が活発に行われることは非常に重要で、社会にとって有益である。異なる意見が交わされることで、技術や政策の改善点が明らかになり、問題を多角的に捉えることができるからだ。議論が存在することで、イノベーションが促進され、問題解決に向けた道筋が見えてくる。賛否が存在することは、よりよい未来に向けた建設的な対話を生み出し、EVの発展への深い理解を促進する。
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先日、筆者(北條慶太、交通経済ライター)は「EVアンチが、3月発表「トヨタ新型EV」をなぜか批判しない根本理由」(2025年3月16日配信)という記事を当媒体に書いた。概要を箇条書きで示す。
●EVの環境性能に対する評価の分かれ方
・EVの環境性能は「Tank to Wheel」(バッテリーから車輪まで)では高評価。
・「Well to Wheel」(化石燃料の採掘から発電・送電を含む)では評価が分かれる。
・原油供給源や発電方法によって、CO2排出量が変動する。
●EV普及による産業構造の変化と批判
・EVはエンジン車より部品点数が少なく、産業構造が大きく変化。
・経済的観点からEVに否定的な意見も多い。
●トヨタのEV参入とEV批判派の変化
・トヨタが2025年に欧州でEV3車種を発売予定と発表。
・これまで感情的にEVを批判していた「EV批判派」の勢いが弱まった。
・EV批判の本質は「外国車批判」に近いと考えられる。
●日本人のEV購入意識とナショナリズム
・調査ではEV購入希望者の1位は「トヨタ」(29.4%)、2位「日産」(23.4%)、3位「テスラ」(5.7%)。
・「国産EVが出たら導入したい」という意見が多い。
・海外EVの台頭に対する反発感が強く、自動車ナショナリズムが影響。
●トヨタのEV技術と競争力
・新型EV「C-HR+」は600kmの航続距離と30分の急速充電を実現予定。
・日本の技術力を国際市場で示す重要な機会。
●EV普及の課題と日本人の意識
・3年以内に車を買い替える予定の84.4%がEVに興味あり。
・ただし、購入希望は41.5%、購入に消極的なのは42.9%。
・日本人は海外製品に懐疑的で、日本製を重視する傾向がある。
●EV普及のために必要な要素
・国内で適切な国産EVの選択肢を増やす。
・「Well to Wheel」の観点での魅力を高める。
・メンテナンスやインフラ整備を強化し、不安を解消する。
・日本の技術力を国内外にアピールし、市場を拡大する。
●EV批判の背景にある社会的要因
・技術だけでなく、政治的・文化的背景が影響。
・財政政策や教育改革もEV普及に関わる課題。
・日本人が納得する「テクノスケープ」を作ることが重要。
そうしたところ、EV批判派と思われる複数の人々から
「(自分たちは)EVそのものではなく、EV信者を批判している」
といった反応を得た。EV信者とは熱狂的なEV称賛派を指す。この反応はよく見かけるもので、EV(モノ)そのものではなく、それに関連するEV信者(ヒト)を批判するというロジックだ。もちろん、本心かどうかは定かではない。
筆者は長年にわたりEV業界をウォッチしてきたなかで、
・海外勢の台頭
・産業構造の変化
に対して反感を抱く人々が少なくないことを実感してきた。彼らのような反応はしばしば
「テンプレ化」
しており、「またこの類いか」と感じることも多い。こうした人々は、データに基づいた冷静な判断を下すことが少ない傾向にある。
感情的になると、人々はしばしば論点をずらす傾向がある。例えば、「EVそのものではなく、「EV信者」を批判している」という言葉に見られるように、感情に流されて論点がすり替えられてしまうことは珍しくない。人間は感情的な生き物だ。それ自体は理解できる部分もあるが、こうした態度では
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」
的な思考にとどまる危険性がある。重要なのは、冷静に事実を見つめ、さまざまな自動車の利点や欠点を理解した上で、建設的な議論を行うことである。本稿は、そのような建設的な議論を促進することを目的としている。
EV選択は消費者の時代
EV批判派の主張には、
・環境負荷
・充電インフラ
・コスト
・電池寿命
など、さまざまな具体的な論点が含まれている。確かに、「Well to Wheel」目線で見た二酸化炭素排出量の計算や、電池性能向上とそのコスト低減が思うように進まない現状に対する懸念は、研究データも豊富で理解できる。
しかし、2022年3月時点で日本の公共用充電器は約3万基となっており、その数は増加している。世界的に見ても、SDGs(持続可能な開発目標)の推進を受け、2030年までにEV充電インフラは400億ドル規模の市場となる見込みがある。
政府も手をこまねいているわけではなく、2021年6月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、公共用急速充電器3万基を含む15万基の充電インフラを逐次設置し、遅くとも2030年までにガソリン車並みの利便性を実現することを目標として動いている。
EVの市販化は国内外で進み、車種の選択肢も増えている。例えば、テスラ・モデル3ロングレンジは75kWhのバッテリーを搭載し、デュアルモーターによる最高出力はフロント158馬力、リヤ208馬力で、一充電走行距離は2024年11月上旬時点で、正規輸入車中ナンバーワンの706kmを誇る。この走行距離であれば、東京都心から青森県内までノンストップで走行可能だ。車両面や給電インフラの整備も着実に進んでいる。
さらに、2020年にオランダのアイントホーフェン工科大学が発表した研究によると、
「二酸化炭素排出量はWell to Wheelトータルで見ても、ガソリン車やディーゼル車よりも少ない」
と結論付けられている。この研究では、メルセデス・ベンツのガソリン車とテスラ・モデル3を比較し、製造から走行までの二酸化炭素排出量が、テスラ・モデル3の方が65%削減されることがわかっている。もちろん、EV批判派は排出量の計算方法に疑問を呈するだろう。筆者が伝えたいのは、EVの世界がここまで拡大しており、エンジン車との比較データも整い始めた。あとは
「消費者の選択に委ねられる市場が動くだけ」
ということだ。エンジン車とEV、どちらが善でどちらが悪かという単純な話ではない。
批判の論点がずれる理由
EV批判派は、「EV信者」という敵(ヒト)を作り出すことで議論を意図的に転換している。
人は共通の価値観や敵を持つことで、自然と仲間意識を抱きやすくなる。この心理を個人や組織は巧妙に利用し、あえて「共通の敵」を設定する。EV批判派はEV信者(EV称賛派)という敵を作り出し、インターネット上でその敵に対して団結しやすくしている。
心理学的に見ると、EV批判派の不満や嫌悪感の多くは主観的であり、それを指摘されると、自己防衛の一環として怒りを覚えることがある。そこで、敵を設定し、
「称賛派が都合のよいデータを出している」
と攻撃することで、自らの気持ちを鎮めているように見える。このような議論の進行は、冷静な技術的・政策的な論点の追求ではなく、価値観の対立へと持ち込まれ、自分たちの主張を正当化しようとする戦略だ。実際、自動車好きな人と話すと、
・エンジン車への愛着
・日本の自動車産業に対する誇り
が見え隠れする。これは、前回筆者が指摘した“自動車ナショナリズム”にほかならない。
トヨタ自動車は3月12日、2025年に欧州で新たに3車種のEVを発売すると発表し、テスラや中国のEVメーカーに対抗する姿勢を鮮明にした。この発表を受けて、EV批判派のトーンは急速に静まった。それまでの批判の矛先は、主にテスラやBYDといった海外勢に向けられていた。走行性能が劣るという批判も、現在では一充電走行距離700kmを超える車両が登場しており、もはや意味をなさない。
確かに、EV整備士不足や脆弱なEV整備会社といった国際的な問題は残るが、これらは国産EVにも共通する課題であり、海外勢だけを批判する理由にはならない。それにもかかわらず、EV批判派は海外勢のEVに対する否定的な見方を維持し、トヨタがEV分野で活躍するというニュースには手綱を緩める。国内のEV批判が「外国車批判」に偏っているのは、公平ではなく、単なる主観的な海外バッシングに過ぎない。むしろ
「トヨタ自動車の足を引っ張っている」
「トヨタ自動車のブランディングを阻害している」
といえるだろう。
批判の論点がずれる理由
前回も述べたように、もしトヨタがテスラより早くEV市場をリードしていたなら、EV批判派の主張は現在とは異なっただろう。批判の構図を見ていると、そのように感じざるを得ない。
批判や称賛は多様であるべきだが、その姿勢に一貫性が欠けているため、彼らはまるで「風見鶏」のように見える。美空ひばりの名曲『残侠子守唄』(1983年)の歌詞
北の風吹きゃ 北をむき
西の風吹きゃ 西をむく
男の意地は どこにある
を思い浮かべずにはいられない。
EVには依然として課題があり、持続可能な社会を築くための自動車選択肢のひとつに過ぎない。繰り返しになるが、善悪を単純に分ける問題ではない。求められるのは、未来を見据えた冷静で客観的、公平な議論である。
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みんなのコメント
まずEVで成功している企業はBYDとテスラだけで その2社すら赤字。 さらに中国にはEV自動車会社が40社ほどあったが全て潰れて今は3社だ。
さらに一番の問題は韓国の電力の余剰は5%、日本は3%。欧州すらそのレベル。
一度の満充電に一般家庭4日分ほどの電力が必要なEVが2030年までに普及することは不可能なのだ。
この記者は世間を知らないようなので説明するが 発電所は建設場所の選定や地質調査や地元住民との交渉や建設で軽く10年以上かかります。この時点で2035年まで ある程度の普及すら不可能なのが誰でも分かります。
更に環境問題でEVを推進するのなら発電所を大量建設する必要があるEVは論外なのだ。 いつかはEVというより 環境なら技術も完成している燃料電池車にならないとおかしい。
更に中国は突っ走っているが電池のリサイクルは無視している。
反日思想を拗らせた挙句にEV信仰している記者には自己客観視能力がゼロ
そもそもエネルギー政策(発電社会体制)に関わってくる問題なのでその部分の考慮どころか勉強すらしていない記者には無理なのです
「だけどEV信仰する僕ちゃんは優秀だから僕の100%EV社会になる理論を聞け~効かないのはお前らが愚民だからだーい」って幼児性ヒステリーを起こしても技術も社会も進歩しませんよ