サーキットを満喫できるスポーツカー トップ10
繊細なハンドリング、クルマとの一体感、レスポンス、そして桁外れのパフォーマンス……。サーキットで最高に楽しませてくれるのはこういうクルマだ。
【画像】えっ、窓もドアもない? 公道走れる「大胆」な市販車がこちら。【アリエル・アトム4Rとスパルタンを写真で見る】 全43枚
運転を心から楽しみたいなら、重量を最小限に抑え、機械を最大限に活用し、快適性という概念を捨て去る必要がある。今回は、サーキットをとことん楽しめる実力を持ちながら、公道走行が認められている市販車を10台紹介したい。
車重1000kg前後で、走りを楽しむことに特化していることが今回の選定条件だ。多機能のインフォテインメント・システムや高級レザーシート、エアコンなどは必要なく、さらに言えば窓ガラスやルーフがなくても構わない。
それでは、最高のサーキットマシンのトップ10を見ていこう。
1. アリエル・アトム4R
長所:公道でも比較的安定感がある。4気筒ターボエンジンの扱いやすさと素晴らしいサウンド。
短所:ケータハムよりも使い勝手が悪い。ブレーキペダルの感触は改善の余地あり。
第4世代となる現行型アトムは、2020年登場の初代モデルとよく似ている。子供用のジャングルジムとレーシングカーを合体させたような姿だ。
無駄を削ぎ落とした美しいデザインや、ドライビングに焦点を当てているところもそっくりだが、これまでで最も先進的でエキサイティングなモデルである。
「4R」と呼ばれる高性能バージョンでは、さらなる高みを目指している。最高出力は320psから405psに増強されるほか、リモートリザーバー付きのオーリンズ製ダンパーも強化され、サーキット用スプリングまたはロード/サーキット併用スプリングと組み合わされる。
スーパーカーさえ圧倒してしまう小さな宝石だが、ターボブーストのタイミングを予測しないと暴れ出すことがある。またブレーキをロックさせないよう注意する必要がある。
しかし、慣性力が小さいため、スリップ、スライド、ロック、ロールをほとんど感じることなく、コーナリングを楽しむことができる。フィードバックも明瞭で、非電動ステアリングが常に路面に意識を集中させ、ミドエンジンのバランスと鋭いスロットルが幅広い選択肢とエンターテインメントを与えてくれる。
アトムは完全に没頭できるマシンであり、移動のたびに爽快で気持ちの良い疲れを残してくれる。
2. ケータハム・セブン360R
長所:ダイレクトなステアリング。電光石火の速さ。
短所:乗り心地は同クラスの中では標準的。
ケータハム・セブンの血統を受け継ぐクルマがなければ、現在のライトウェイト・スポーツカー分野はまったく存在しなかっただろう。
初代ロータス・セブンは、コリン・チャップマン氏が自動車業界に贈った最大の贈り物とさえ言えるかもしれない。1973年にケータハム・カーズがチャップマン氏の小型軽量モデルの権利を買い取り、それ以来、多くのエンスージアストを楽しませ、育んできた。
現在、360Rがラインナップの中で最も魅力的なセブンとなっている。最高出力180psの2.0Lエンジンを搭載し、稲妻のような速さとレスポンスを発揮する。吸気音と排気音が、走る喜びをさらに加速させる。
そして、小型ながらもダイレクトで没入感のあるシャシーを操る、優れたステアリングについては語らずにいられない。昆虫のように軽快に方向転換し、ミリ単位の精度でコーナーへの進入&脱出角度を指示することができる。
公道用にチューニングされた360Sもあるが、「R」のコントロール性とリミテッド・スリップ・ディファレンシャルは、余分な出費をしてでも購入する価値がある。日常の使い勝手にもマイナス要素はない(セブンは毎日使うべきだ)。
もちろん、セブンにはもっと高価で速いモデルもあるし、チャーミングでスキニーな3気筒の170もある。しかし、スリル、没入感、手頃さのバランスを考慮すると、360Rの右に出るものはない。
3. スパルタン
長所:この見た目で公道走行可能。独特の運動性能。
短所:高価。アトムの方がよりシャープで精悍。
これは、オーストラリア史上最高の輸出品になるのではないだろうか。ニック・パップ氏とピーター・パップ氏の兄弟が開発したスパルタンは、公道走行可能なサーキットマシンだ。
1960年代のCanAmレーサーを思わせるカーボンファイバー製ボディの下に、特注のスペースフレーム・シャシーとダブルウィッシュボーン式サスペンションを備え、ホンダ製「K24」2.0L 4気筒ターボをミドシップに積む。
車両重量わずか700kg とコンパクトでありながら、最高出力460psを発生し、0-100km/h加速2.3秒というセンセーショナルなパフォーマンスを実現している。
AUTOCARはまだサーキットでしか試乗していないが、稀有な能力を持つフライ級マシンであることは十分に理解できた。直感的でバランスの取れた親しみやすいハンドリングにより、コーナリングも難なくこなす。クルマとの一体感は高く、効果的なエアロダイナミクスによって安定した走りを見せてくれる。
まだ無名のメーカーで、12万6000ポンド(約2400万円)とかなり高額だが、1ポンドあたりのアドレナリン分泌量がこれほど多いクルマはほとんどない。
4. モーガン・スーパー3
長所:公道での楽しさが満載。無限のカスタマイズ性。
短所:雨天時とサーキットでの制限。趣味車としては高価。
例に漏れず、三輪車のモーガン・スーパー3も矛盾を抱えた存在だ。クラシックカーのような古風なデザインの奥に、先進性が見え隠れしている。そして重要なのは、運転も楽しいということ。
軽くて頑丈なアルミニウム製シャシーに、F1風のプルロッド機構のスプリングとダンパーを備えたダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションを搭載している。
先代モデル(スリーホイーラー)のVツインエンジンは廃止され、フォード・フィエスタSTと同じ1.5L 3気筒の自然吸気バージョンが採用された。マツダMX-5(日本名:ロードスター)のトランスミッションを近い、1輪の後輪を駆動する。
スーパー3の運転は他では味わえない体験であり、オープンコックピットと小さな風防は、自動車というよりむしろ複葉機を操縦しているような感覚になる。田舎のワインディングロードを走ると、過ぎ去った懐かしい時代の光景、音、匂いに包み込まれるようだ。
しかし、走りの実力は本物だ。135セクションの細いフロントタイヤによるフロントエンドのグリップ限界に留意すれば、ハードに走らせることができ、ステアリング操作も楽しく正確でプログレッシブだ。
レブハッピーな3気筒の歌声も耳に優しく、0-97km/h加速を7.2秒で駆け抜ける。
毎日使えるクルマではないし、ベースモデルで4万ポンド(約760万円)以上と安くはないが、クルマを下りた後もずっと笑顔を残してくれるだろう。
5. アリエル・ノマド
長所:無制限の楽しさ。美しい作り。
短所:放浪者の苦痛に満ちた表情
舗装されていない道路が少ない英国
たとえ高級でもなくても、快適性がほとんどなくても、他車より大きな楽しみを提供してくれるクルマなら、心からの賛辞を送ることができる。2014年に登場したデューンバギーのような見た目のアリエル・ノマドは、新鮮な風を運んできてくれた。
公道でもサーキットでも、そしてオフロードでも、ノマドの技術力とパフォーマンスは驚異的だ。超ロングトラベルのサスペンションにより、意外にも乗り心地は良く、またディテールにこだわった精巧な作りも素晴らしい。
この価格帯で、純粋なドライビング・プレジャーを少しユニークな形で味わうなら、ノマドに勝るものはないだろう。
6. ウェルズ・ヴェルティージュ
長所:素晴らしいハンドリング。高い実用性。
短所:かなり希少。低中速域のパワーが足りない。
自動車の歴史には、華々しくスタートしたものの、すぐに跡形もなく沈んでしまったメーカーが数多くある。特に英国のスポーツカーブランドが顕著だ。しかし、ウェルズにそのような運命が降りかかる可能性は低い。
ウェルズ・ヴェルティージュは、記録破りの加速性能や肝をつぶすようなコーナリングフォースではなく、親しみやすいパフォーマンスと爽快なハンドリングを目指して設計された小型軽量のミドエンジン車である。運転の喜びを教えてくれる1台だ。
チューニングされたフォード製2.0L「デュラテック」エンジンから最高出力211psを発生し、わずか850kgの車体をぐんぐん加速させていく。
さらに優れているのはハンドリングで、フィードバックが多く一体感のあるステアリング(非アシスト)と、しなやかなサスペンション・セットアップによって、路面に合わせて呼吸するように走らせることができる。
しなやかで端正な走りは、かつてのロータス・エリーゼを思い起こさせる。
コンパクトなサイズにもかかわらず、充実した装備と大人2人がしっかり乗れるスペースを持ち、快適性も驚くほど高い。毎日楽しく過ごせるし、長距離ドライブにも向いている。
ウェルズは年間25台程度の生産を計画しており、価格は4万ポンド(約760万円)から5万ポンド(約950万円)なので、買い手を見つけるのにそれほど苦労はしないだろう。
7. BACモノR
長所:レーシングドライバーになったような気分を味わえる。圧倒的なスピード感。
短所:価格が高い。うるさい。
同乗者は必要ない……。BACモノRは、斬新なドライビング・ポジションで、まるでフォーミュラカーに乗っているかのような感覚を与えてくれる。これで公道を走れるというのだから驚きだ。
前身のモノに似ているが、全体の90%が新しく、車重もさらに軽い555kgを実現したという。
それでも設計思想は共通で、スペースフレームの「セーフティセル」をカーボンファイバー製(グラフェン強化)パネルで覆い、前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションを備えている。
ミドマウントのフォード製2.5Lエンジンと6速シーケンシャル・トランスミッション、後輪駆動はそのままに、軽量化とパワーアップ(最高出力347ps)により、1トンあたり約620psという驚異的なパワーウェイトレシオを実現した。
乗り心地はハードで、半端なく鋭敏な走りを見せる。路面が僅かに乱れているだけで、逐一反応する。エンジンの音と振動も大きく、また車内に余分なスペースはないため、日常的な使用には向いていない。
高精度のサスペンションの働きもあって、挙動は極めてシャープで、非常にクイックに曲がる。本領を発揮するのはサーキットで、公道では多くのドライバーが忍耐を求められるだろうが、いずれにせよこの上なく強烈な体験だ。
とはいえ、オプションなしで20万ポンド(約3800万円)近くと、それなりのお値段はする。また、30台限定で、すでに完売している。
8. ダラーラ・ストラダーレ
長所:巧みなステアリングは天才のなせる技。公道でも扱いやすい。
短所:フォード製パワートレインは強力だが、魂が感じられない。同等の性能を持つライバル車と比較すると高価。
本物志向を求めるなら、イタリアのダラーラほど “モータースポーツ” らしいブランドはないだろう。ダラーラのシャシー技術は、F1、インディカー、フォーミュラE、その他多くのレースシリーズで見ることができる。
もちろん、公道走行可能なストラダーレにも、同社の知見がギュッと凝縮されている。最高出力400psのフォード製2.3L「エコブースト」エンジンと6速MTを搭載する、後輪駆動のバルケッタだ。
ストラダーレの乾燥重量は855kg。巨大なリアウィングを装着した状態で、最大810kgのダウンフォースを生む。
実際に走らせてみると、非常に本格的なマシンで、非アシストのステアリングと矢のように実直なシャシーを備えていることがわかる。特にサーキットでは、効果的なダウンフォースによって走りがビタッと決まる。完全な没入感を味わえる1台だ。
ブレーキには改善の余地があるし、エンジンにももっと刺激がほしいのだが、それでもストラダーレは素晴らしい体験をさせてくれるクルマだ。
9. MKインディRX-5
長所:軽快で、非常に良くまとまっている。コーナーが楽しい。
短所:自分で手を加えるのが好きでない場合は、他車を選んだ方が良いかもしれない。
一見すると、よくできたケータハムの模造品のように見える。しかし、「RX-5」という車名が示唆するように、ベースとなっているのは第2世代のマツダMX-5(日本名:ロードスター)だ。
意外にも手頃な価格で、信頼性の高い走りを楽しむことができる。ベース車両さえ用意できれば、英国のMKスポーツカーズ社が1万9000ポンド(約360万円)弱で作ってくれるし、8500ポンド(約160万円)でキットを買い、自分の手で組み立てるという方法もある。
シンプルだが、品質は優れており、外観も質感も徹底的にこだわって設計されている。走りも同様で、クイックなステアリング、軽量ボディ、丁寧に調整されたサスペンションにより、まるでテレパシーで操っているかのようにコーナーを駆け抜けていく。
最高出力約130ps、車重600kgで、直線加速でもほとんどのホットハッチを圧倒できる。もっとパワーを求めるなら、最高出力220psのターボユニットを約4500ポンド(約90万円)で追加できる。
ケータハムほどの魅力はないが、MKインディRX-5は肩肘張らず気軽に楽しませてくれるクルマだ。
10. マツダMX-5
長所:活気あるパフォーマンス。バランスのとれた、魅力的なハンドリング。優れたパッケージング。
短所:ホットハッチほど速くない。ステアリングが軽すぎる。キャビンの人間工学が不完全。
ここまでに紹介した個性的な9台と比べると、マツダMX-5(日本名:ロードスター)が普通のクルマに見えてしまうが、サーキット走行も日常使いもこなせる稀有な1台である。
快適性が高く、運転しやすく、安全装備なども一通り揃っていて、英国では3万ポンド(約570万円)弱から購入できる。考えれば考えるほど、広島のエンジニアたちの努力には畏敬の念を抱かざるを得ない。
上位グレードの2.0Lエンジン搭載車(欧州仕様)はパワフルで、強化されたビルシュタイン製サスペンション、高剛性のストラットブレース、リミテッド・スリップ・デフを備えているが、軽量の1.5L車にも十分すぎるほどの魅力がある。
回転の鋭いエンジンはしっかり働いてくれるし、キビキビ決まるマニュアル・トランスミッションを満喫できる。サスペンションは比較的ソフトな設定で、後輪駆動の美味しいバランスを実用的な速度域で味わうことができる。1.5LのMX-5は紛れもなく、「レス・イズ・モア(引き算の美学)」を象徴する1台である。
何よりも印象的なのは、毎日使えるということだ。平凡な運転体験と非日常的な運転体験が隣り合わせに共存している。今回紹介した多くのモデルが、天気の良い日中にしか出番がないのに対し、マツダMX-5は毎日の生活にほとんど妥協なくフィットする。
世界で最も売れているオープンカーとして、ギネス記録を更新し続けているのは単なる偶然ではない。
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