■トルクがリニアに立ち上がるのが魅力!
近年、欧州車から広まった「ダウンサイジングエンジン」は、排気量を下げて燃料消費量を減らし、排出ガスの低減を目的に開発されました。
そして、ダウンサイジングエンジンに欠かせないアイテムというと、ターボチャージャーやスーパーチャージャーといった過給器で、歴史は古く、第2次世界大戦以前には実用化されていました。
排気ガスの流れで作動するのがターボ、エンジンが回転する力を利用するのがスーパーチャージャーと定義されますが、どちらも空気を圧縮するコンプレッサーの一種で、大気圧以上の空気をエンジンに送り込むことでパワーアップが可能となります。
1979年に日産「セドリック/グロリア」に国産初のターボエンジンが搭載されると、一気に普及が進みましたが、スーパーチャージャーの普及はターボほどではありませんでした。
そこで、スーパーチャージャーを装着した国産車を、5車種ピックアップして紹介します。
●スバル「レックスコンビ スーパーチャージャーVX」
スバルの軽乗用車「レックス」は、新世代のモデルとして1972年に登場しました。1986年には3代目が発売されると旧態然としたデザインを一新。
5ドアハッチバックセダンと3ドアバンのレックスコンビともに、定評のあった居住性はさらに向上し、1987年にはフルタイム4WDやCVTなど、新技術が投入されました。
そして、ハイパワー化を進めるライバルに対抗し、1988年には550cc直列2気筒OHCエンジンにスーパーチャージャーとインタークーラーを備え、最高出力55馬力を発揮する「レックスコンビ スーパーチャージャーVX」を追加ラインナップしました。
1989年には軽ボンネットバン初の4気筒エンジンとスーパーチャージャーを組み合わせ、61馬力にパワーアップ。
低速域のトルクが小さい軽自動車のエンジンとスーパーチャージャーは相性がよく、以降はスバルの軽自動車といえばスーパーチャージャーが定番となります。
●トヨタ「クラウン2000ロイヤルサルーン スーパーチャージャー」
1983年に登場したトヨタ7代目「クラウン」は、4ドアハードトップ/セダン/ワゴン/バンのボディバリエーションが用意され、トップグレードの「ロイヤルサルーンG」には「ソアラ 2800GT」や「セリカXX 2800GT」と同じ、高性能を誇る2.8リッター直列6気筒DOHCエンジンが搭載されました。
しかし、2リッターを超えた途端に高額になる当時の自動車税がネックで、販売の主体は2リッター車でした。
競合となるセドリック/グロリアが新開発の2リッターV型6気筒ターボエンジンをラインナップすると、クラウンは1985年のマイナーチェンジで2リッター直列6気筒DOHCエンジンに、国産車初のスーパーチャージャーを装着した「2000ロイヤルサルーンスーパーチャージャー」を発売。
最高出力160馬力を誇り、2リッターエンジンとは思えないほど低回転からトルクが大きく、レスポンスの良さが特徴で、決して軽くないボディを軽快に走らせることが可能でした。
一方、前年に3リッターエンジンに換装したロイヤルサルーンGよりも、実走行での燃費は低いといわれ、オーナードライバーからの評価は、あまり高くありませんでした。
●日産「マーチ スーパーターボ」
1982年にデビューした日産の次世代コンパクトカー「マーチ」は、1985年には最高出力85馬力を発揮する1リッター直列4気筒SOHCターボエンジンを搭載した「マーチ ターボ」をラインナップ。加速性能に優れ「ベビーギャング」とも呼ばれました。
当時、日産はラリーに力を入れていたため、1988年にモータースポーツベース車両の「マーチ R」を発売します。
レギュレーションの関係から排気量を987ccから930ccにダウンサイジングし、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種類の過給機が装着された、日本初のツインチャージャーエンジンを搭載。
最高出力110馬力を絞り出し、クラス最強のクルマとしてラリーでも活躍しました。
そして、1989年にはマーチRと同じエンジンを搭載しつつ普段使いできるように装備が充実した「マーチ スーパーターボ」を発売します。
マーチ スーパーターボは、低回転域ではスーパーチャージャーによる過給でレスポンスの良い瞬発力を持ち、高回転域ではタービンの過給による余裕のあるパワーを発揮することで、上位クラスに負けない走行性能を獲得していました。
■マツダの持てる技術の粋が集められたクルマとは!?
●三菱「デボネアV スーパーサルーンエクストラ・スーパーチャージャー」
三菱のフラッグシップサルーンである「デボネア」は1964年にデビューして以来、20年以上もフルモデルチェンジしませんでしたが、1986年に駆動方式をFFに改められた2代目の「デボネアV」が登場。
5ナンバーサイズに収められたボディに、横置きに搭載されたエンジンは3リッターと2リッターのV型6気筒SOHC自然吸気エンジンが設定されました。
なかでも、オーナードライバー向けは2リッター車が主流でしたが、ライバルに対して自然吸気エンジンでは非力だったため、1987年に2リッターエンジンにスーパーチャージャーと水冷式インタークーラーを装着した「デボネアV スーパーサルーンエクストラ・スーパーチャージャー」を追加ラインナップ。
最高出力150馬力/最大トルク22.5Kgm発揮し、1.5トン近い車重でも力強い加速が得られました。
●ユーノス「800」
マツダが1989年から展開していた販売チャネルのひとつ、ユーノスから1993年に発売された「800」は、同ブランドのトップモデルとなる4ドアセダンとして開発されました。
デビュー当時に注目されたのは、4輪操舵やABS、トラクションコントローによる高い走行安定性と、アルミボンネット、ソーラー・ベンチレーション・システムなどがありましたが、最大のトピックスは、2.3リッターV型6気筒DOHCエンジンにリショルムコンプレッサー(スーパーチャージャー)を装着した、量産車世界初のミラーサイクルエンジンを搭載したことです。
最高出力は220馬力と3リッタークラスと同等のパワーで、吸気バルブを従来のエンジンに比べて遅く閉じることにより、膨張比はそのままに有効圧縮比を落として熱効率の低下を最小限にすることを可能とすることで、2リッター車並みの低燃費を実現。
しかし、1997年にユーノスの展開を終了したことで車名が「ミレーニア」に変更され、2000年のマイナーチェンジではミラーサイクルエンジンがラインナップから外れてしまいました。
※ ※ ※
スーパーチャージャーのメリットは、ターボに比べて低速域でも過給圧がかけられることが挙げられます。
反対にデメリットは、エンジンのパワーを利用して駆動するため、機械損失が大きいという点です。せっかく過給してパワーアップしても、スーパーチャージャーの駆動にパワーを使ってしまい、ターボほど効率が良くありません。
また、最近のターボエンジンは、低速域から過給が可能となり、アクセルレスポンスも向上し、ターボによるデメリットが少なくなっています。
そうした理由から、現行モデルの国産乗用車でスーパーチャージャーを採用するのは、日産「ノート」だけとなってしまいました。
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