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中国車メーカーの真の実力 群雄割拠の戦国時代に生き残るのは…?【民営メーカー編】

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中国車メーカーの真の実力 群雄割拠の戦国時代に生き残るのは…?【民営メーカー編】

 民営と言っても中国には日本とは比べ物にならない数の自動車メーカーが存在しており、特徴も千差万別だ。EV技術を自社で研究開発するような会社もあれば、コピー車ばかりを生産し、挙句の果てには資金繰りが怪しくなって破産した会社もある。そのすべてを把握して解説するのは極めて困難なため、数百社にも及ぶメーカーたちの中でも、特にいま知っておきたいメーカーたちを紹介したい。
参考記事…【国営メーカー編】躍進する「中国車」の実態 激動の中華市場を先導するデザインと技術力の「今」

文、写真/加藤ヒロト(中国車研究家)(メイン写真はNIO「EP9」)

ファミリー層以外も注目!! 使える3列シートSUVはどれだ?

■欧米日に追いつき追い越す勢いのメーカーたち

★BYD
 最近何かと耳にすることが多い「BYD」。カン違いされがちだが純電動車メーカーではない。もちろんEVに関する卓越した技術は持っているし、代表作には「刀」の形をした「ブレードバッテリー」があるが、PHV、HVなどの「新能源車(中国語で新エネルギー車)」に加え、通常のガソリン車も製造販売している。

BYDの主力セダンのひとつ「秦 Pro DM」。このほかにも「唐」や「漢」など歴代王朝の車名がつけられている。ネーミングセンスがカッコいい

 BYDグループの自動車部門「BYD汽車」では複数の商品群を展開中。主流は「王朝」シリーズで、主力セダンの「漢(Han)」、小型セダンの「秦(Qin)」、中型SUVの「唐(Tang)」、小型SUVの「宋(Song)」、超小型SUVの「元(Yuan)」など、すべて中国の歴代王朝に由来する。バスやトラックなどの商用車にも力を入れており、そのうち、電気バスは2015年2月に京都「プリンセスライン」向けに路線バス「K9」を5台納入し、日本での事業を開始した。それから約7年、BYDの電気バスを採用する事業者は日本全国で増え、これまでに約70台が納入された。2021年にはEVバン「M3e」が京都府の都タクシーによって試験的に2台採用されたり、EVのSUV「e6」の販売も開始したりとバス以外の需要も狙っている。

 日本市場に限らない話で言えば、BYDはトヨタとの提携も発表済みだ。トヨタにとってはBYDの卓越したEV技術の採用、BYDにとってはトヨタという世界的企業とのタイアップと、双方のwin-win関係によってこの提携は実現した。

★NIO
 同じくEVで話題なのが、2014年に設立された「NIO(蔚来)」だ。「電気自動車のF1」としても知られる「FIA フォーミュラE 世界選手権」には初年度から参戦しており、モータースポーツ愛好家にとってはそちらの印象が強いはず。NIOは純電動ブランドとなる。駆動系の技術はフォーミュラEからフィードバックされており、その代表作がEVハイパーカー「EP9」だ。ドイツのニュルブルクリンクではラップタイム7分5秒12を記録し、「世界一速い電気自動車」の称号を手に入れたことでも話題となった。

NIOのSUV「ES6」。独特なフロントマスクが存在感を際立たせる

 現在はSUVの「ES8」「ES6」「EC6」、そしてセダンの「ET7」「ET5」の5車種を展開。車種の少なさはNIOが高級志向(最も安いET5で邦貨換算約588万8000円から)であることに起因しており、この点も低価格帯EVを多数揃えるBYDと大きく異なる。モータースポーツへの姿勢、そしてプレミアムEV市場がメインであることからも他とは一線を画すが、最大の魅力はテスラなど多くの企業が断念した「バッテリー交換式EV」を実現させたことだろう。

 この技術はNIO以外にも第一汽車や北京汽車が力を入れているがNIOの規模は桁違い。NIOは最初の量産車「ES8」からバッテリースワップを自社の交換ステーションとともに提供するだけでなく、これらのスワップバッテリーを月額制で利用できる「BaaS(Battery as a Service)」も揃えるなど単なるメーカーの枠組みには収まらない取り組みで注目されている。2021年12月にはこれまでに約740ヶ所の交換ステーションを設置、累計で550万回以上の交換を行ったと発表。今後は中国石化(シノペック)、中国石油(ペトロチャイナ)、そしてシェルなどの石油会社と提携し、各ガソリンスタンドへ交換ステーションを設置する計画だ。これらも合わせ、2022年末までにその数を1300ヶ所以上にまで増やすとしている。

★ジーリー
 ガソリン車で名を上げたメーカーもある。それが1986年に冷蔵庫部品メーカーとしてスタートしたジーリー(Geely、吉利)だ。長らく自分の手で自動車を作りたかった創業者の李書福は、紅旗 CA7200の下回りに、自作のメルセデスベンツ Eクラス(W210)風ボディを組み合わせた試作車「吉利一号」を1996年に完成させる。1998年からは乗用車の量産を開始し、今では年間約130万台を販売する民営系首位を誇るメーカーにまで発展した。

ジーリー 繽越(ビンユエ)。これを、もともと冷蔵庫の部品メーカーだった会社が作るとは…(それをいったらトヨタももともとは自動織機メーカーではあったのだが…)

 中国メーカーではあるが、傘下にはボルボ、ロンドンタクシー・カンパニー、ロータスなどを擁している。新ブランド立ち上げにも積極的で、2016年にはボルボと共同で「リンク・アンド・コー(Lynk & Co、領克)」を設立。電動車中心のラインナップはもちろん、ディーラーなしの販売形態や、月額制での所有など、若者を意識したまったく新しいブランドとなっている。2018年10月富士スピードウェイにてセダン「03」のワールドプレミアを行ったことでも話題となった。

 2021年には姉妹ブランド「ジーカー(Zeekr、極氪)」をローンチした。最初のモデル「001」は合計出力400 kW(536 hp)を誇るシューティングブレークで、モータには日本電産のトラクションモータシステム「E-Axle」を採用。日本電産の「E-Axle」は電動車におけるモータ、インバータ、ギアを一体化した小型ユニットとして搭載できるのが大きな特徴だ。001が搭載するのは単体出力200 kWの「Ni200Ex」だが、他にも「Ni70Ex」「Ni100Ex」「Ni150Ex」など、さまざまな出力の選択肢を揃えた商品群となっている。

★長城汽車
 民営系ではジーリーに次ぐ規模を誇るのが長城汽車だ。1976年、魏徳義が設立した小さな自動車工場がルーツ。1989年には息子の魏健軍がトップに就任し、日産 セドリック(Y30型)やトヨタ クラウン(S130型)などの見た目をコピーしたセダンやワゴン、ピックアップの生産を始める。

ハヴァル F7。長城汽車もかつてはコピー車を販売していたが、今やそのデザイン力は日本車や欧州車にひけを取らない

 1996年にピックアップ「ディア(迪爾)」を発売。フォルクスワーゲン サンタナが20万元なのに対し、ディアは6万元という破格の値段で販売し大ヒットとなる。その後もSUVやピックアップ中心のラインナップで成長し、2013年にSUVブランド「ハヴァル(哈弗)」を立ち上げた。一番の売れ筋は毎年40万台近く売れる中型SUV「H6」で乗用車販売台数トップ10の常連だ。発売以来8年間も「中国で最も売れたSUV」の称号を誰にも明け渡したことがない超人気モデルとなる。

 また、ハヴァル以外にも複数のブランドが存在する。ハヴァルよりもワンランク上の上質さと快適さが特徴のプレミアムSUVブランド「WEY(魏派)」、レトロフューチャーなデザインでEV市場に攻勢をかけるEVブランド「オーラ(Ora、欧拉)」、そしてハヴァルやWEYよりも本格的なオフローダーを楽しみたい人向けの「タンク(TANK、坦克)」など、長城汽車が展開するブランドはどれも特色あふれる。これらを合計し、グループ全体の2021年における年間販売台数は約128万台となった。

 ここまで紹介したメーカーはほんのごく一部である。

 最初に書いたとおり、これ以外にもさまざまな規模、そしてそれぞれ異なる特色を持つメーカーがたくさん存在するのが中国メーカーの魅力だ。

 もしこの記事でもっと知りたいと感じた方がいれば、バイアスのかかっていない情報を選び、積極的に中国車への知見を深めていただければと思う。今は難しいだろうが、実際に中国で開催されているモーターショーに足を運ぶというのも、最新事情を知る一つの手だ。

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