魅惑的なジャンクヤードの世界
米ウィスコンシン州オークレアにあるクーリーズ・ステートワイド・スクラップ&サルベージ(Cooley’s Statewide Scrap & Salvage)の起源は1964年まで遡る。
【画像】北米にも羽ばたいた欧州車【アウディ100、MG MGBを写真で見る】 全20枚
午後のひとときをこの場所で過ごした我々取材班は、乗り物としての役目を終え、おそらく半世紀近く置かれているであろうクルマに思いを馳せた。
雑草や木に埋もれ、半分土に沈みかけたスクラップのようなものもあるが、興味深いクルマもたくさん見つかった。このヤードを訪れると、写真のような魅惑的な光景が出迎えてくれる。しかし、これはほんの一角に過ぎない。
(この記事は前編です。後編の「米国のジャンクヤードで出会った廃車 40選 後編 雑草に埋もれた半世紀前の名車たち」もぜひお読みください)
原文:ウィル・シャイアーズ
「Welcome」
クーリーズ・ステートワイド&アンド・サルベージへの訪問者を迎える、心ときめく光景。
胸を踊らせながら中へ入ると、事務所や大型の金属破砕機の奥にさまざまな年代のクルマがきちんと整理されて並んでいた。
キャデラック(1955年)
1955年、62シリーズは11万8190台という記録的な販売台数を残し、同年に製造されたキャデラック全車種の84%を占めた。5.4L V8エンジンを搭載し、2059kgという車両重量にもかかわらず0-97km/h加速で12秒強を達成できる。最高速度は170km/hと言われていた。
AMCグレムリン
AMCグレムリンのリアエンドのスタイリングは、控えめに言っても独特で、基本的にジャベリンをカットダウンしたようなものだった。しかし、この個体のフロントエンドも同様に異彩を放っている。腐食が進み、折れてしまったようだ。この新しい超空力的なプロファイルなら、8km/lというひどい燃費を改善できるだろうか。
ビュイック・スペシャル(1955年)
この1955年型ビュイック・スペシャルは、良い日々を過ごしてきた。ヤードの片隅に置かれ、土に深く沈んでいるところを見ると、何十年もの間ここの住人だったようだ。それにもかかわらず、比較的錆びていない部品が豊富にある。
MG MGB
このMG MGBのゴム製バンパーは、1975年以降のモデルであることを示している。米国のバンパー規格に適合させるため、親会社のブリティッシュ・レイランドは物議を醸したこのスタイリングを世界中に導入した。さらに、MGは米国の新しいヘッドライト高さ規制に適合しなければならなかった。デザインを変更せずに車高を1インチ挙げた結果、ハンドリングが大幅に悪化した。
シボレー(1949年)
木の下に駐車するのはおすすめできない。特に松はよくない。落ちてきた針のような葉が隙間に入り込み、湿気がたまると板金に大ダメージを与えるからだ。
歯のようなグリルと丸いパーキングライトの開口部から、1949年型のシボレーであることがわかる。シボレーが戦後のデザインを一新した年だ。ライバルのフォードは1948年に新型車を発表し、シボレーに10万8000台もの大差をつけている。
フォード(1959年)
クーリーズ・ステートワイド・スクラップ・アンド・サルベージの手前側は、大型機械が金属スクラップを選別し、破砕する活気のある場所だが、奥側は対照的だ。聞こえてくるのは鳥のさえずりと藪をかき分けるウサギの鳴き声だけで、驚くほど静かで平和なオアシスを作り出している。
この静かな環境の中に、珍しいグリルをはじめとする多くの部品を残した1959年型フォードが置かれている。
リンカーン・コンチネンタル(1959年)
1959年型リンカーン・コンチネンタルMkIVは、プレミアとボディを共有しているが、逆傾斜のルーフラインを主な特徴とした。1950年代後半はリンカーンブランドにとって困難な年であり、不況下で新型車の開発費を回収するのに苦労した。資金難にもかかわらず、リンカーンは兄弟ブランドのエドセルよりも業績を伸ばした。
シボレー・インパラ(1969年)
ナンバープレートのタグによると、この1969年型シボレー・インパラ・カスタムクーペは1978年以来、公道を走っていないようだ。まだほとんどの部品が残っていることから、おそらくクーリーズ・ステートワイド・スクラップ・アンド・サルベージに運ばれてきたのは比較的最近にことだろう。
1969年のシボレーの総生産台数は209万2947台で、そのうち77万7000台がインパラであった。
エドセル・ペーサー(1958年)
1958年はエドセルにとって最高の年で、6万8045台が販売された。しかし、ボディスタイルが18種類も用意されていたため、個々のモデルが大きな販売台数を記録することはなかった。ペーサーの2ドア・ハードトップは売れ筋の1つであったが、販売台数はわずか6717台であった。
1959年、ペーサーはエドセルのラインナップから外され、全体の生産台数は4万7396台に落ち込んだ。
アウディ100LS
フォルクスワーゲンの子会社アウトウニオンが開発した初代アウディ100は、1968年から1976年まで生産され、販売面で成功を収めた。車名は1.8Lエンジンの馬力にちなんでおり、当時のアウディブランドで最も成功したモデルとなった。
この4ドア・セダンのLSは、クーリーに到着する前に激しく破損したようで、ガラスがなくなっている。しかし、どうにかテールライトは生き残った。
リンカーン・コンチネンタル(1941年)
この1941年型リンカーン・コンチネンタルはあまり部品も残っていないが、その存在だけでも注目に値する。サルベージヤードで見つけるのは本当に珍しい。最高出力120psの4.8L V12エンジンを搭載し、当時としてはまずまずのパフォーマンスを誇った。
0-97km/h加速は約18秒、最高速度は160km/hに迫った。この年に販売された1251台のコンチネンタルのうち、このような2ドア・クーペは850台であった。
シボレー(1951年)
この1951年型シボレーがヤードにやってきた当初は、木は生えていなかったようだ。時が経つにつれ、左側の木がクルマに食い込むように成長し、側面のへこみが大きくなっている。
1951年は米国の自動車産業が困難を迎えていた時代だ。朝鮮戦争のために金属が軍に優先され、自動車の生産は制限された。クロームの製造工程からニッケルが取り除かれ、錆の進行を早めることにつながった。このバンパーはあまり劣化していない。
シボレー・コルベア・モンツァ
社会運動家ラルフ・ネーダー氏は著書の中で、シボレー・コルベアを「どんなスピードでも安全ではない」と評したことで有名だが、フロントガラスやヘッドライトがなければ、この評価に同意したくなるだろう。しかし実際には、同時代の他車と比べて安全性に劣っていたわけではない。
ダッシュボードの状態から判断するに、この1963年型コルベア・モンツァは何年も昔にガラスを失っていたと思われる。
フォード(1941年)
第二次世界大戦中の不安定な時期に発表された1941年型フォードは、新しいデザインを導入していた。1942年のモデルイヤーに再登場したものの、米国の自動車工場が軍用トラック、戦車、飛行機、ジープ、兵器の製造に重点を移したため、短命に終わった。1946年に再開し、1948年まで製造された。
フォード(1949年)
1948年、フォードは戦後初の完全な新型車を発表した。創業者ヘンリー・フォード氏の死後、初めて導入された完全な新車である。1949年モデルとして発表されたこのクルマは、ホイールベースとドライブトレインのみを先代から引き継ぎ、ゼロから再設計された。スラブサイドのスタイリングから「シューボックス・フォード(靴箱フォード)」と呼ばれ、大衆に好評を博し、フォードは再び販売台数トップの座に返り咲いた。
フォード・マスタング・コンバーチブル
この1990年代初頭のフォード・マスタングLXコンバーチブルのフロントフェンダーの慢性的な腐食を見てほしい。フロアパンにも同じことが言えそうで、それがそもそもサルベージヤードに行き着いた理由だろう。
1979年から1993年まで製造された3代目マスタングは、16年間という驚異的なロングランを続け、販売台数260万台を記録した。
AMCアンバサダー(1966年)
この1966年型アンバサダーの特徴的なフロントフェンダーはまったく腐食しておらず、素晴らしいコンディションを保っている。他の部分も同様で、多くのパーツが良好な状態である。
1966年、アンバサダーはランブラーの名を捨て、AMCアンバサダーとして知られるようになった。このリブランディングは高級路線に移行するための戦略の一環であり、結果的にはうまくいったようだ。1966年の販売台数は前年比7000台増の7万1000台に達した。
ザスタバ・ユーゴ
このザスタバ・ユーゴGVLが、今後も収益を上げられると考えたヤードの楽観主義には感服せざるを得ない。何年もここにあるにもかかわらず、スペアパーツはまだ1つも出てないようだ。簡単に言うと、このような低価格の欧州車はあまり愛されていないのだ。
ユーゴは旧ユーゴスラビアで製造され、1985年から1992年の間に米国に輸入された。14万1651台が販売された。
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みんなのコメント
超個性的な縦型フロントグリルは…間違いないと思うけどね…?