トヨタ ヤリスクロスハイブリッド 「ヤリスハッチバックよりも実用的」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

工藤 貴宏
工藤 貴宏(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

4

デザイン
4
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
5
燃費
5
価格
4

ヤリスハッチバックよりも実用的

2022.6.21

年式
2020年8月〜モデル
総評
サイズ感、後席や荷室の広さ、そして走り、さらには価格。すべてにおいてバランスよくまとまっている。コンパクトな車体で流行のクロスオーバーSUVであり、車内は実用的でコストパフォーマンスも良いという、いま求められているポイントをきっちり抑えた商品企画が秀逸だ。売れるのも納得。
満足している点
パッケージングのバランスが見事だ。たとえばトヨタのコンパクトカーを選ぼうと思ったとき、ヤリスのハッチバックやアクアだと後席が狭く感じる(閉塞感がある)が、ヤリスクロスであればキャビンが箱に近い形状なので頭上がゆったりしていて窓も大きく開放的。そのうえ荷室もヤリスのハッチバックやアクアに比べて広いから実用的だ。価格がリーズナブルなのもありがたい。
不満な点
特別気なるポイントはないが、30万円ほど足すと兄貴分のカローラクロスハイブリッドに手が届くのは悩ましいところ。カローラクロスハイブリッドは車体がひと回り大きく、そのぶん後席もラゲッジスペースも広い。なるべく小さな車体がいいというのであればヤリスクロスのハイブリッドが優勢だが、余裕を求めるならばカローラクロスハイブリッドが魅力的に感じる人も多いのではないだろうか。
デザイン

4

ハッチバックのヤリスとは異なる専用ボディで、SUVスタイルとしている。顔つきは個性的だがボディはシンプルなラインによる落ち着きと、張り出したフェンダーにグッとタイヤを踏ん張らせた安定感と力強さの協調のバランスがよく、多くの人に好まれるデザインにまとめている。カジュアルな雰囲気がいい。ハイブリッドだからと言って大きなデザイン変更はなく、トヨタエンブレムにブルーが添えられ、ハイブリッドのバッジが追加される程度だ。
走行性能

4

ハイブリッドシステムはハッチバックのヤリスと同じもの。トヨタのハイブリッドとしては「4.5世代」と呼ばれるもので、アクセル操作に対して反応をよくすることと、加速とエンジン回転上昇のリンクをリニアにすることでドライバビリティを高めている。ドライバーがアクセルを踏み込んだ時、反応遅れなく心地よく加速する感覚を狙ったもので、確かにそれまでのトヨタ式ハイブリッドに比べると爽快な加速を味わえる。ハイブリッド車が純ガソリン車よりも出力にゆとりがあるので、加速も力強い。ハンドリングも磨き上げられていて、サーキット走行もこなすほどの実力。曲がりくねった道を走っても重心が低く感じられ、ふらつくことなくストレスなく運転できる。
乗り心地

4

高いボディ剛性とストロークを長めにとったサスペンションのおかげで乗り心地も硬すぎず、快適に移動できる。継ぎ目や路面のうねりが多い道を走っていても挙動が落ち着き、路面の凹凸で車体がゆすられる感覚が少なく、フラットな乗り心地が保たれる。これは運転席だけでなく後席も同じ印象だ。完成度は高い。
積載性

5

兄貴分のC-HRに比べると車体は小さいが、ラゲッジルームは逆に広いのだから巧みなパッケージングと言える。容量はC-HRの318Lに対し、ヤリスクロスは390L。上下2段調整式の上に上位グレードでは左右分割式が奢られるラゲッジボード、40:20:40と3分割になっているリヤシート背もたれ、そして仕様により設定される電動テールゲートなど、クラスを超えたアレンジ幅の広さと上級装備を備えている。後席を倒さない状態の荷室は、それ以上大きくなると飛行機に預ける際に別料金が発生する特大サイズ(110L)のスーツケースが2個積める。
燃費

5

FFモデルのWLTCモード燃費は27.8〜30.8km/L。ハッチバックのヤリスにかなわないとはいえ、極めて良好な燃費だ。SUVのなかではトップ級である。実燃費でも20km/Lをコンスタントに超える性能を誇り、ガソリン代を抑えてくれる。4WDモデルであっても26.0〜28.7km/LとFFモデルと大きく変わらない立派な燃費を実現する。参考までにガソリン車のWLTCモード燃費はFFモデルで18.8〜20.2km/Lだから、ざっと1.5倍ほど燃費がいい(ガソリン車の燃費もかなり良好だ)。使うガソリンは2/3程度で済む。
価格

4

ハイブリッドでも228万4000円から選べるのだから親しみを感られる。これがどのくらいインパクトのある価格かといえば、ライバルに相当する日産「キックス」が276万円から。ホンダ「ヴェゼル」のハイブリッドが265万8700円から。比較してみると、その安さに驚くばかりだ。もちろん、中身がその価格なりの安物かといえばそんなことはなく、トヨタの価格破壊戦略には驚くしかない。装備を考えると、18インチタイヤ&ホイール、本革巻きステアリング、ディスプレイオーディオの8インチ化(ベーシックグレードは7インチ)、運転席の電動化など多岐にわたりバージョンアップされていることを考えれば、ベーシックグレードから30万円アップの最上級グレード「ハイブリッドZ」のコスパが光る。
工藤 貴宏
工藤 貴宏
自動車ジャーナリスト
1976年生まれ。クルマ好きが高じ、大学在学中に自動車雑誌の編集部でアルバイトしたことをきっかけに、そのまま就職。そして編集プロダクションを経てフリーランスの自動車ライターに。日々新車を試乗し、日夜レポートを書く日々も気がつけば10年以上。そろそろ、家族に内緒でスポーツカーを買う癖はなんとかしないと。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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