トヨタ クラウン(クロスオーバー) 「クロスオーバーでも高級サルーンらしさは健在」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西川 昇吾
西川 昇吾(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

5

デザイン
4
走行性能
5
乗り心地
5
積載性
3
燃費
5
価格
5

クロスオーバーでも高級サルーンらしさは健在

2022.11.21

年式
2022年7月〜モデル
総評
色々とネガティブな意見を言われてしまっているのも気になるが、それはクラウンという十字架があまりにも重たいためだと感じる。一度クラウンという色眼鏡を取り払って一台の新型モデルと見てみると、その出来栄えは非常に良いと感じる。色々と挑戦的なモデルであることは間違いないが、実際に乗ってみるとしっかりと作りこんでいて、トヨタのやる気を感じることができる。クラウンの名前にとらわれてネガティブな印象がある人にこそ、機会があれば乗って見てほしいと思う。
満足している点
クラウンという伝統のセダンモデルで、FRからFF化にクロスオーバーという攻めたジャンルへの一歩を踏み出しながらも、歴代クラウンオーナーも乗ればきっと納得のいく質感の高いモデルに仕上がっているのが良い。また、各種装備も高級車として先進的なものとなり、クラウンが高級車として新たなチャレンジをしているのが見て取れて、新たなターゲット層も獲得するキッカケになりそうなモデルだ。また、全体的な装備や質感に対してコストパフォーマンス高いのも魅力的なポイントと言える。
不満な点
正直に言ってしまえば個人的な理由になってしまうが、リアデザインの1点だけである。もちろん、クラウンはFRセダンが良いし、高級サルーンとしてはそれが正しいという気持ちもある。しかし、この後クラウンのラインアップにセダンが追加される予定であり、単にこのクロスオーバーだけに絞って見れば、あまり不満点は見当たらないように思う。内外装で従来通りのベタな演出で質感を高めても良かったかもしれないが、それならばこのクロスオーバーに挑戦した意味が無いようにも思えてしまう。
デザイン

4

伝統のクラウンの新型モデルで大幅に路線チェンジ(クロスオーバーだけを見れば)ということもあって賛否両論なデザインだが、個人的には優れていると思う。SUVとクーペセダンを融合させたクロスオーバーはヨーロッパを中心に登場し始めているジャンルだが、その中では最もシルエットが美しいと感じる。セダンらしさもしっかりと残っていながら、細部を中心に攻めた印象もアリ、まさにクラウンの伝統である「革新と挑戦」を感じる。ただ、リアの灯火類は細い一文字基調だけでなく、もう少しラグジュアリーな印象がある太めなデザインの方が良かったと感じる。
走行性能

5

セダンからクロスオーバーに、そしてFRからFFベースになって走る、曲がる、止まるといった基本的な性能が落ちたという印象を受ける人がいるかもしれないが、実際に運転して見ると全然そんな印象はない。むしろセダンだった先代モデルの良好な印象をより伸ばしたと感じられる印象も受け、乗り味そのものはしっかりと高級サルーンになっている。そのため、コーナリングでも安定感があるし、各種操作系のフィーリングも自然体で質感が高い。クラウンの名前にふさわしい走行性能となっている印象だ。
乗り心地

5

走行性能の項目でも述べたが、クロスオーバーになってもしっかりと高級サルーンらしい乗り心地をより伸ばして継承しているといった感触に仕上がっている。ギャップを乗り越えた時の突き上げ感もとても角がなく、マイルド。それでいて振動の収束も素晴らしい。クロスオーバーになったことで全高が高くなり、ロール感が気になるかと思ったが、実際に乗ってみると全然そんな印象は受けない。乗員を不快にさせないロール感でコーナリングしていく。高級サルーン特有のしっとり感を感じることができるクロスオーバーだ。
積載性

3

メーカーも公表しているところなので分かるポイントではあるものの、ここは先代と比べて劣ってしまっている部分だ。ただこれは電動のトランクリッドを装備したからという側面もある。車格的にも欲しいと思う装備なので、この装備により積載容量が小さくなったのは好みが分かれるところだろう。ただ、積載容量やトランクスペースの利便性だけでみると特出している訳でもないし、大きな不足がある訳でもない。可もなく不可もなくといった具合だ。
燃費

5

2.5Lのハイブリッドは従来通りのハイブリッドシステムを採用していて、燃費性能に振ったパワーユニットとなっている。バッテリーがバイポーラ型ニッケル水素になったことで、より進化している。燃費性能としてはこの車格で考えればトップクラスと言えるだろう。現状ではトヨタのハイブリッドシステムは燃費性能的には最も優れているのではないかと思う。単に燃費性能だけでなく、スロットルに対する反応や静粛性も優れている点も好印象なポイントだ。
価格

5

400万円代半ばから600万円代半ばという価格設定は内容を考えれば安いと思う。先代モデルの価格帯を考えればほぼそのまま移行したという見方もできるものの、あらゆるポイントがブランニューになっていて、質感も良くなっていることを考えるとバーゲンプライスだと個人的には感じる。このサイズ感と質感を持つクロスオーバーモデルということだけ見ても非常にお買い得感が高いという印象だ。
西川 昇吾
西川 昇吾
自動車ジャーナリスト
1997年生まれ、大学時代から自動車ライターとしての活動をスタート。現在はWEB・紙の各種媒体で様々なジャンルの記事を執筆するほか、車両解説動画にも出演し、喋りの分野にも挑戦中。愛車のマツダ・ロードスターで定期的にサーキット走行をし、ドラテクの鍛錬も忘れない、目指すは「書けて、喋れて、走れるモータージャーナリスト」
トヨタ クラウン(クロスオーバー) 新型・現行モデル

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