トヨタ アクア 「燃費だけのクルマではなくなった」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

燃費だけのクルマではなくなった

2023.12.22

年式

2021年7月〜モデル

総評

ハイブリッド車自体が珍しくなくなった今では、アクアに対してかつてのような注目が集められることはなくなった。そういった意味では、先代とはその役割がそもそも異なると考えることもできる。実際、現行のアクアは燃費性能だけがウリのクルマではなくなった。それは決してネガティブな意味ではなく、新型ではクルマとしての総合力が大きく向上する結果となった。もちろん、卓越した燃費性能は健在だ。ただ、トヨタの現ラインナップにおける立ち位置だと地味であることは否めない。「隠れた名車」とならないように、その実力を広く知らしめてほしいものだ。

満足している点

一にも二にも燃費の良さがウリだった先代と比べて、新型では特にインテリアの質感が全体的に向上した。ライバルを圧倒するほどの燃費性能の良さはなくなったが、それでも非常に高いレベルにあることは言うまでもない。むしろ、燃費性能に依存できなくなった分、クルマとしての総合性能に磨きがかかったという印象だ。

不満な点

エクステリアデザインは「落ち着いている」と言えば聞こえはいいが、やや陳腐である感は否めない。スポーティなヤリスと比べると、アクアはネガティブな意味で「コンパクトカー然」としすぎており、あまりにエモーショナルに欠けている。

デザイン

2

エクステリアデザインはクセのないものとなっているが、それと同時におもしろみのない、エモーショナルに欠けるものとなってしまっている。スポーティなデザインを採用することだけが是とは言えないが、なにかひとつ、「好きになるポイント」がほしいものだ。一方、インテリアデザインは質感も高く、心地いい空間をつくろうという強い意志が感じられる。コンパクトカーとしてはトヨタ初採用という10.5インチのディスプレイオーディオも好印象だ。

走行性能

3

アクアはハイブリッド車ではあるが、高出力のバッテリーを搭載していることもあって市街地ではEV走行の時間も少なくない。そういう意味では短距離メインのユーザーと中長距離メインのユーザーでは、アクアの走りに対するイメージがまったく異なる可能性もある点には注意が必要だ。ただ、ハイブリッド走行時もEV走行時も、走りは良くも悪くもクセのない印象。スポーティな印象はないが、ゆったりと街を走るのにはむしろそのクセのなさが快適と言える。

乗り心地

4

コンパクトカーとしては比較的長いホイールベースを持っていることもあり、室内空間の広さと走行時の安定性は悪くない。むしろ、典型的なコンパクトカーをイメージしているのであれば、その快適性の高さに驚くかもしれない。静粛性も高く、サスペンションも路面の凹凸を上手にいなしてくれるので、クルマとしての完成度は非常に高いと言えそうだ。

積載性

3

あくまでもコンパクトカーであるため、ラゲッジスペースは決して広いとは言えない。しかし、ヤリスなどと比べるとわずかに使い勝手がよく仕上げられており、日常の買い物などで困ることはほとんどないだろう。

燃費

5

他を圧倒するほどの燃費性能ではなくなったものの、燃費性能は依然としてクラストップレベル。また、新型では「バイポーラ型ニッケル水素電池」を搭載したことにより、EV走行距離が飛躍的に伸びた。優れた燃費性能や技術的な先進性も含めて、現在のハイブリッド車の到達点のひとつと言えるだろう。

価格

3

エントリーモデルはギリギリ200万円を下回っているが、売れ筋グレードの乗り出し価格は240万円程度となるなど、コンパクトカーとしてみると安くはない。ただ、その質感や機能装備を考えると、コストパフォーマンスは決して悪い訳ではない。