メルセデス・ベンツ SLRマクラーレン のみんなの質問

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欧州の車にSOHCエンジンが採用されている理由ってどんなことからでしょうか?

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ベストアンサーに選ばれた回答

ここではベンツがSOHCを採用した理由について説明いたします。

●ベンツのエンジン例
ベンツSLRのエンジンスペック:

・名称 = M155
・排気量 = 5439cc
・形式 = V8 (バンク角 90度)
・弁 = 3弁(吸入2個,排気1個)
・過給機 = 2個のリショルム圧縮機によるスーパ・チャージャ
(回転数=23000rpm,過給圧=0.9bar)
・ボア×ストローク = 97mm × 92mm
・圧縮比 = 8.8
・出力 = 626馬力/6500rpm
・トルク = 780Nm/3250~5000rpm

●一般のエンジン設計思想
排気量 5.5Lクラスでは,気筒数は10あるいは12を選択します。もし8気筒の場合には,回転数を5500rpmまで落とす必要があります。

あまり出力性能を求めないのなら,V8 5.5Lは可能です。しかしこのエンジンをベースにして,高出力エンジン(5.5Lで600馬力超)をつくるには,下記の問題点があります。

(1) 燃焼時間 … ボアが大きいのに,エンジン回転数が高いため,燃焼時間が相対的に長くなり,燃焼効率(機会効率:機械効率ではなく)が低下
(2) 過給機 … 5.5Lで626馬力を出すには,筒内圧力を高める必要あり → 過給が必要です

●どうやって燃焼時間を短くするか
ボアを小さくする(ロングストローク化)か,燃焼室内のスワール速度を高める必要があります。すでに過給機で吸入空気速度はかなり高いので,どちらも使えません。このため点火プラグ数を2個にしました。
プラグが2個になると,プラグからエンドガスまでの距離が30%くらい短くなり,短時間の燃焼が可能になります。

●プラグが2個になると
4弁で2個のプラグを配置すると,弁面積が大きく取れません。このため3弁(吸気2,排気1)にしました。3弁にすると,弁のトータル面積が4弁より小さくなりますが,過給を使い,吸入空気速度を高めました。

●過給機
過給機には,排ガスエネルギを使うターボ・チャージャとエンジン駆動によるスーパ・チャージャがあります。ターボの方が,高回転時の効率が良いのですが,排ガスと吸入空気を流すための配管が必要です。90度バンクで,バンク内は広い方なのですが,これが入りません。
このため機械式の駆動,つまりスーパ・チャージャを選択しました。スーパ・チャージャには,圧力をあまり高めないルーツ式と加圧するリショルム(スクリュー)式がありますが,吸入空気流速を稼ぐためには,リショルム式を選択しました。

ではスペースの狭いVバンクに過給機を入れないと,どうなるでしょうか? この場合,排気系がVバンク内に入り,耐熱の問題があります。またVバンクの外側にターボ・チャージャを配置すると,吸気管の長さが長くなり,レスポンスが悪化します。

最良の選択は,過給機をVバンク内に配置し,水冷インタークーラをエンジン・インテークと一体化させることです。こうすれば吸気管長さは短くなり,エンジンレスポンスを向上できます。

問題は,エンジンのヘッド回りに過給機と水冷インタークーラが来てしまうことです。このスペースを確保するため,ヘッドに2本のカムシャフトが来るDOHCは採用できませんでした。

DOHCでは容易な可変動弁(VVTなど)が,SOHCでは実現できなくなりました(たいへん無理をすればできますが)。可変動弁の主目的は,低回転と高回転で吸排気バルブのオーバラップ量を変更できることです。つまり低回転では,オーバラップ量を少なくし,燃焼を安定させ燃費を稼ぎ,高回転ではオーバラップ量を多くして,慣性吸気量を稼ぐことです。

過給機を使うので,慣性吸気は不要です。また低回転での燃費改善も不要なエンジンなので,DOHCは必要ではありません(もちろんDOHCが望ましいが)。

●まとめ
以上の設計思想をまとめると次のようになります。

・目標 従来の V8型 5.5Lをベースに600馬力超をめざす
・ボアが大きい(97mm)ため,燃焼速度アップが必要
・2プラグにして,エンドガスまでの距離を短くした
・プラグを2個配置するため,4弁が選択できず,3弁にした
・3弁で出力を出すため,加圧ができ,排ガスの配管を必要としない過給機,つまりリショルム・コンプレッサを使うスーパ・チャージャを選択した
・吸気管を短くするため,水冷インタークーラをエンジン・インテークと一体化させた
・リショルム・コンプレッサと水冷インタークーラをVバンク内に入れるため,DOHCを採用しないで,SOHCにした
・SOHCでは可変動弁が実現できないが,過給で高回転での出力を十分確保したので,固定の弁機構を選択

●誤解
よく下記のような誤解があります。

・コストを下げる … 従来エンジンのブロックを利用したのは事実ですが,DOHC化のための費用は十分捻出できます
・高回転が不要 … 高回転エンジンです(ピストン速度は約20.0m/s)
・ホンダのエンジンはSOHCで成立している … ホンダのような低回転側の効率改善とは目的が異なります
・整備性と耐久性が良い … バンクにリショルムを挟んでいるので,もともと複雑です

ご参考になれば幸いです。

その他の回答 (4件)

  • ヨーロッパ車にSOHCが比較的多いのは、メーカーもユーザーもクルマというものに対して明確な価値基準を持っている現れだと思います。
    わかりやすくいえば、「使いもしない性能に金をかけるのはばからしい」ということです。
    日本人はどうしても「あると便利かも」とか、「使わないかもしれないけど、パワーや豪華装備があった方がなんとなくいいクルマ?」なんていうことに魅力を感じてしまう人が多いようです。
    でも、クルマを「道具」として割り切って考える人が多いヨーロッパでは、「余計なものが付いている車は無駄」、「自分の使い方に必要な性能と装備さえあれば、安い方がいい」と考える人が多いのでしょう。
    メーカーもEU圏で売るクルマは、極力シンプルな装備にして、「必要な装備があればオプションで選んでください」というスタンスです。
    初めから余計なものが付いているようなクルマは、ユーザーが拒絶してしまうのです。
    日本では「高級車」のBMWなども、ヨーロッパでは日本よりずっと小排気量のエンジンを搭載し、装備も驚くほどシンプルです。
    ヨーロッパは今や、EUという小さな地域に4億人近い消費人口を抱える一大消費圏です。
    自動車会社の競争も熾烈です。
    ヨーロッパの人たちは過剰装備や不要な高性能を求める層が少ないため、今もSOHCエンジン搭載車が普通に売られ、走っているということなのです。
    それがいいとか悪いとかというのは、また別の問題だとは思いますが。

    SOHCとDOHCが同コスト(製造~点検・整備まで)なら全てのエンジンがDOHCになります。ならない理由は、
    1.コスト:カムシャフト、軸受、給油、駆動機構、等でコスト増
    2.重量:バルブ挟み角を狭くしてSOHC並のシリンダヘッドとしても部品増加が重量増となる
    3.フリクションロス:可動部品増は摩擦損失が増えます、SOHC直6とDOHC4カムシャフトV6と比較すると解り易いです
    4.メーカー方針:例えばトヨタグループは、ダイハツ660cc~レクサス5000ccまで全てDOHC4バルブとして、企業イメージの確立を図っています(VVTはDOHCで可能)が、VTECならSOHCでも可能、VVTもVTECも重視しないメーカー(又は車種)ならSOHCのみ
    5.実用域性能ではバルブ系の影響は少ない:2000ccOHVで低出力のLPGタクシーでも何も問題がないのだからSOHCで十分

    ※一部にはSOHC⇔DOHCとか、2バルブ⇔4バルブとか、3バルブ⇔4バルブ、とか曲折がありますが、全体的にはカムシャフトが廉価車SOHC、バルブは4バルブ化、に落ち着いて行く傾向にあります。

  • 機構が単純であればあるほど、いろんな国で修理等の対応が可能となるからでしょうか。

  • 欧州は85%以上がMTなので
    馬力、トルクが少なくても
    ダイレクトでエンジン回転を使用できますので
    SOHCでも十分だと思います

    半分はディーゼルMTなので十分

    ミッションの95%以上2ペダル車の
    日本の国が異常の可能性が高い

  • 純粋にエンジンとしての性能を追求するのならDOHCが良いに決まってはいるけど・・・。
    部品点数少なく、小さく、また軽く作りやすいSOHCの方が、市販車レベルでは優位性がある、と判断したからでしょう。

    ただし、VVTなどの可変バルブタイミング機構を組み込む場合はDOHCが有利です。
    国産車においては、猫も杓子もVVT花盛りですが、欧州車は(国産車ほどは)採用数が伸びていません。
    部品点数が増えること、オイル管理が厳しくなることが嫌われているのかもしれません。

    そういう意味でも、SOHCでも不便を感じないのでしょう。

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