メルセデス・ベンツ Sクラス のみんなの質問

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以前に詳しく教えていただいた、HCCI(均質混合圧縮着火)の“用途”についてお聞きしたいのですが。

①普通の使い方だと触媒を減らせない


②点火プラグを用いない場合の、最高出力の低下

という2点から、自分では「発電機代わりのシリーズ方式位にしか適さないんだろうな」と解釈していました。

所が最近e60fuenfer1さんの回答で、大変興味深い物を拝見しました。

「ハイブリッドはシリーズ・パラレル切替え式よりも、常にエンジンの最高効率点で固定のシリーズ方式が効率は一番優れる」という事でした。
ただ、モーターの大型化による本体価格の増加が問題で、高速域をエンジンに任せた方が安くつくと。

ダイムラーはHCCIの使い方を誤っている気がしますが、そういう事は有りませんか?

最適なのは、三菱ふそうのエアロスターに代表される様な、シリーズ方式のバス等かと思います。
これなら触媒も要らないだろうし、路線バスなら使う最高速も知れている。
しかも、ダイムラーはトラック・バスも造ってます。

プラグを使わない均一燃焼だけだと、最大出力が1/4位にまで低下するという事ですが。

普通のシリーズ方式の最高効率点より出力が落ちてしまい、発電機用でも足りないとかでしょうか?

なんだか素人目には、合理的な用途はそっちのけで『最高峰のSクラスに最新のエンジンを搭載した』と誇示したいだけの様に映ります。

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ベストアンサーに選ばれた回答

●ダイムラーの考え方
Sクラスまで適用できるパワープラントとして,コンセプトカーF700に搭載したのは,下記のような内容でした。

1.8L ガソリンエンジン
直噴
ツインステージ・ターボ・チャージャ
可変圧縮比機構
HCCIとSI(Sparked Ignition 点火プラグによる燃焼)との切り換え
15kWモータ (パラレル・ハイブリッド)
7速AT

F700での性能は以下の通りです。

燃費(欧州) 18.9km/L
最高出力 238馬力
最高トルク 400Nm
0→100km/h加速 7.5秒

これらを見る限り,たいへん優れた機構と言えます。問題は前回の回答にありますように,コスト・パフォーマンスです。ハイブリッド機構,可変圧縮比機構,EGR(内部,外部)制御機構などをあわせたコストは,おそらく100~150万円くらいになるでしょう。これならHCCIにせず,モータ出力を50kW(バッテリ電圧 120→300V)にしたほうが簡単で安上がりです。また負荷の軽いところは,HCCIを使わず,1.8L+可変ターボで十分でしょう。

そう考えていくと,F700のディゾットは,技術的優位をしめすのが最大の主眼であったとおもわれます。厳しい言い方をすれば,商品化はあまり考えていないといえます。

●シリーズハイブリッド車の特徴は?
シリーズハイブリッドの問題点は,大型のモータとエンジンの両方を搭載すると,コストが非常に高くなることです。このため小型のエンジンを搭載し,常に負荷の高い運転状態で稼働させることで,エンジン効率の高いところをつかうようにします。ところが高速道路のように連続的に負荷の高い条件では,エンジンの最高出力がモータ出力より小さくなり,モータ最高出力を維持できなくなります。このため高速バスにや大型トラックに不向きで,路線バスや宅急便用トラックに向いていることになります。都市内を走行する路線バスや宅急便用トラックなら,減速時のエネルギ回生ができることもメリットになります。

●シリーズハイブリッドへのHCCI適用は?
エンジンは機械損失や冷却損失そしてポンプ損失(ガソリンエンジンの場合)を考えると,負荷のやや高いところに最適効率点があります。HCCIは,SI(プラグ点火燃焼)を併用しないと,排気量に対して最高出力が低くなります。このため路線バスに使う場合,排気量5Lではダメで,排気量10Lくらい必要でしょう。そうなると,もともとのエンジンの排気量より大きくなります。大型のエンジンを搭載するレイアウト・スペースに加えて,モータのスペースも必要になるので,搭載性はかなり厳しくなります。またコストも高くなります。

●ディーゼルエンジンへのHCCI適用は?
ディーゼルエンジンではコモンレールによる多段噴射により,単純な拡散燃焼ではなく,予混合プロセスを含むようになっています。つまりHCCIの前段階(PCCI=Premixed Charge Compression Ignition)になっています。このため均質混合気ではありませんが,HCCIのすぐ手前まで来ています。機構的な主たる差異は,燃料噴射位置がポートか燃焼室内かです

●シリーズハイブリッドとHCCIは?
どちらも燃費改善効果に対してコストが高すぎるという大きな課題があり,実現性はたいへん乏しい状況です。これを組み合わせても,それぞれの欠点を相殺する特徴もありません。このためもし実現するとしても,現行エンジン+シリーズハイブリッド,あるいはハイブリッドにしないHCCIになるでしょう。

●HCCIの難しさとは?
HCCIの燃費改善代から見て,EGRと過給量のそれぞれの可変機構につかうと,もう無くなってしまいます。このため安価に実現できるHCCI機構が望まれています。

簡単ですが,ご参考になれば幸いです。


質問者からのお礼コメント

2011.4.15 22:34

エンジンの肥大化は触媒の有無よりも遥かに深刻ですね。

しかも、倍の排気量が必要とは……

確かにエアロスターも、本来よりはかなり小さいエンジンを積んでいます。

排気量が倍にも増えては、逆にシリーズ方式の長所が消えてしまいますね。

搭載スペースや重量に最も余裕があるバスですら厳しいという部分でも、無理だと納得です。

今回も多角的に解り詳しく教えて貰い、有難うございました。

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