メルセデス・ベンツ Cクラス セダン 「完成度の高さに驚き!」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

工藤 貴宏
工藤 貴宏(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

4

デザイン
4
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
3
燃費
3
価格
2

完成度の高さに驚き!

2022.7.20

年式
2021年6月〜モデル
総評
値段が高い……という印象はたしかに否めませんが、これは昨今の状況を考えれば仕方がないこと。ほかのクルマだってどんどん値段が上がっているのですから。そこだけしっかりとわきまえて工業製品として判断した場合、Cクラスの完成度は相当高く、モノとしては間違いありません。エクステリアだけでなくインテリアも、Sクラスの雰囲気を巧みに取り入れたことで見栄えがいいのもオーナーにとっては大きなプラスだと思います。
満足している点
個人的に驚いたのは、走りの印象。昨今のメルセデス・ベンツは「質実剛健な道具」から脱却してドライバーが運転を楽しめるクルマ化していますが、峠道も気持ちよく走れる軽快なハンドリングには驚きました。それに合わせたかのようなスポーティなデザインもいいですね。
不満な点
唯一気になったのは、ブレーキのフィーリング。ペダルの踏み込みに対する効きのコントロールがリニアではない領域があり、停止する直前あたりでイメージ以上に効いてしまうことがあります。実は、この型のCクラスはブレーキを電子制御化。電気信号が介在することで、ブレーキペダルを押す力がダイレクトに制動力へつながるわけではないのです。停止直前の“効きすぎ”はその制御によって起こっているようなので、今後のプログラム改善に期待したいところです。
デザイン

4

Cクラスもずいぶんとカジュアルになりましたね。以前からその傾向があったとはいえ、このモデルになってひときわスポーティなフォルムになったことを実感します。上手だなと思うのは「Sクラス」など上級モデルと共通のモチーフを巧みに活用して、“高そうに見える感”を醸していること。よく観察しないとわかりにくいですが、フロントグリル内が細かいスリーポインテッドスターで構成されているのを見ると“仕事が細かいな”と思います。いずれにせよスポーティでカジュアルなデザインは「重厚さが足りない」と感じる人もいて好みが分かれるかもしれませんが、今どきの空気感をしっかり反映していると実感します。
走行性能

4

ちょっと驚きました。このCクラスは完成度が高いです。動き出した瞬間に伝わってくる素性の良さ。たとえば乗り心地はサスペンションと車体がしっかり衝撃を吸収するので乗員には優しく伝わり、いっぽうでドライバーとしてはハンドル操作に対し反応遅れなくクルマが向きを変える俊敏性も心地よいです。後輪ステアに関しては、丁寧に運転する人にとっては違和感なくスムーズ。ただ、ハンドルを切りながらアクセルをグイグイ踏むような運転をする人にとっては、船の旋回時のようなお尻が外に振れる感覚があるので違和感を覚えやすいかもですね。パワートレインは、ディーゼルエンジンを搭載する「C220d」のトルク感が好印象。運転しやすく個人的なベストです。ディーゼルの音や振動は全く気になりませんが、それでもディーゼルはヤダというなら「C200」のガソリンエンジンもいい選択です。
乗り心地

4

荒れた路面や路面の段差を超えた時でも、強靭な車体としなやかなサスペンションがしっかりと衝撃を吸収。きちんと和らげてから乗員へ伝えてくれます。つまり乗り心地も良好で快適。それにしても、「ドイツ車の足が硬い」っていうのはすっかり過去の話になったということを実感します。電子制御の減衰力可変式ダンパー装着車は、「コンフォート」にすると減衰力がかなり柔らかくなります。おそらく、低い速度域に最適化しているのでしょう。街乗りはいいですが、高速道路ではダンピング不足(路面からの入力による車体の上下動をビシッと吸収せず上下動が何度か続く)の傾向があるので高速道路や峠道では「SPORT」にするのがオススメです。
積載性

3

Dセグメントのセダンとしては常識的な荷室サイズで、ライバルの「BMW 3シリーズ」や「アウディA4」と比べても特筆すべきほどの違いはありません。トランクスルー機能もあるのでイザというときは大きな荷物も積めるし、電動トランクリッドなどの上級装備も設定。ただし、その動きはスマートでおしとやかな国産車と違って「バタン!」と閉じる際の最後がちょっと荒っぽいのはご愛敬。
燃費

3

燃費向上……というか、二酸化炭素削減に向けて自動車業界も大きく舵を切り、ベンツも燃費を重視したクルマ作りになっています。Cクラスでみると、従来は用意していたV6エンジン搭載車をやめたのは燃費向上のため。4気筒ターボのダウンサイジングユニットとして実用燃費向上に努めています。ただし、燃料はレギュラーよりも単価の高いハイオク。そこでランニングコストを節約するための選択がディーゼルエンジンです。ディーゼルエンジンは燃費がいいだけでなく、燃料の軽油もハイオクガソリンより2割ほど単価が安いので燃料代を抑えられます。
価格

2

デビュー時には「500万円オーバー」と話題になった現行型のCクラス(最も安い仕様は599万円)。たしかに車格感もアップし、先進安全機能などが充実したことを考えれば納得できるのですが、正直なところかつてのような「頑張れば手が届くかも」という感覚はなくなってしまいました。だだ、それを解消するための選択肢が「Aクラスセダン」ということなのでしょう。その車体はかつてのCクラスほどのサイズで、価格帯もCクラスに比べると控えめですから。
工藤 貴宏
工藤 貴宏
自動車ジャーナリスト
1976年生まれ。クルマ好きが高じ、大学在学中に自動車雑誌の編集部でアルバイトしたことをきっかけに、そのまま就職。そして編集プロダクションを経てフリーランスの自動車ライターに。日々新車を試乗し、日夜レポートを書く日々も気がつけば10年以上。そろそろ、家族に内緒でスポーツカーを買う癖はなんとかしないと。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
メルセデス・ベンツ Cクラス セダン 新型・現行モデル

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