マツダ キャロル 「シンプルでベーシックな軽」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

シンプルでベーシックな軽

2022.6.21

年式

2022年1月〜モデル

総評

ミニマムでリーズナブルな軽自動車を探している人にとって最高のマッチングだ。昨今の軽自動車としては主流から外れたポジションなので、クルマのキャラクターとユーザーの使い方がしっかり合っているかを考えたうえで選ぶと幸せな選択となるだろう。スライドドアを求めず、日常の気軽な足として軽自動車を活用したいユーザーにオススメだ。

満足している点

コストパフォーマンスの高さ。できるだけ安く、装備を簡略化した商用車などではなく普通に乗れる軽自動車を探しているユーザーにとって（OEM元のアルトと並んで）こんなに適したモデルはない。軽自動車ナンバーワンを誇る燃費や快適な乗り心地なども誇れるポイント。

不満な点

昨今主流となっている背の高い軽自動車に比べると乗り降りがしにくいが、それを理解したうえでの車選びであればウィークポイントというほどではないだろう。もうひとつは、軽自動車の中では荷室のアレンジがシンプルなので、3人乗車時に荷室を広くしたい人などには向かない。

デザイン

4

スズキ「アルト」のOEMモデルであり、エクステリアで異なるのはエンブレムのみ。先代に比べるとAピラーが立つとともに天井が50mm高くなってキャビンに“箱感”が増している。実は、そんなパッケージングの変更は使い勝手にもいい影響を与えていて（というか使い勝手向上を考えたもので）、天井が高くなるとともに着座位置を高めたことで乗降性がよくなっている。先代キャロルはどことなく事務的な雰囲気があったが、新型はレトロモダンな雰囲気が漂っていてパーソナルカーとして受け入れやすく感じる人も多いのではないだろうか。

走行性能

3

ターボエンジンの設定がないのに動力性能に大きな不満を感じないのは、車体の軽さゆえ。もっとも軽いFFモデルであれば車両重量がわずか680kgしかなく、今どきのクルマとは思えない軽さでパワー不足を感じさせないのだ。街中での走りはただただ軽快で、交通の流れが速いバイパスであっても信号が青になってからの発進加速で周囲にしっかりついていける。とはいうものの、高速道路の合流などフルパワーを求められるシーンではそれなりであり、モーターの有無による加速感の違いは感じられなかった。モーターは加速力よりも燃費向上用ということ。挙動に関しては、軽さと先代より剛性を高めたボディのおかげでコーナリングもスムーズで嫌なロールなどはない。

乗り心地

4

車体の軽さは乗り心地にも好影響をもたらしている。サスペンションを硬めなくてもしっかりと車体を支えられるので、乗り味がしなやか。加えて、巡行時はエンジン音が意外なほどに静かで、それも快適性に効いている印象だ。セダンタイプの軽自動車だが、後席居住性はかつてとは大きく違う。リヤシート取付位置を後方に寄せることで、広い膝回りスペースを用意している。これはちょっと驚く。そして座り心地も良好だ。

積載性

2

リヤシート取付位置を車両後方に寄せた居住性重視のパッケージングゆえ、ラゲッジスペースはそれほど広くない。具体的にいえば、機内持ち込みサイズのキャリーケースが2個積める程度だ。またシートスライドや左右分割の折りたたみ機能はなく、荷室を広げたいときは乗車定員を2名にして後席を倒すことになる。これはあくまでベーシックモデルである、という割り切りであり、ハイトワゴンやスーパーハイトワゴンとは考え方が違う部分だ。

燃費

5

モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドモデルのカタログ記載値は、WLTCモード燃費はなんと27.7km/L。これは現時点で軽自動車トップとなる優れた数値で、普通に運転してこれに近い数値が出てしまうのはすごい。モーターが付かない非ハイブリッドモデルのWLTCモード燃費は25.2km/Lと、ハイブリッドに比べると控えめだが、これもこれですごい。

価格

5

価格と装備を見て目を疑った。ベーシックグレードとなる「GL」の価格は100万円を切る99万8000円。装備を絞ったなんにもない仕様かと思いきや、オートエアコンや非接触キーといった上級装備こそ備わらないものの、リモコンキー、電動格納式ドアミラーに前席だけでなく後席のパワーウインドウ、衝突被害軽減ブレーキ（前方だけでなくバック時にも機能する）やサイドエアバッグなどの安全装備も標準装備だ。スタイリング面でもホイールキャップやボディ同色のドアハンドルがコーディネートされてチープさとは無縁。つまり普通に乗れるのである。いうなれば「自動車界のニトリ」ともいえる恐るべしコストパフォーマンスだ。これに驚かないわけにはいかない。