ホンダ フィット 「「クセがないこと」はいいこと？」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

「クセがないこと」はいいこと？

2024.2.29

年式

2020年2月〜モデル

総評

おもにデザイン面で賛否両論を巻き起こした結果、思うように販売台数が伸びていないのが現状であるが、モデルとしての基本性能は非常に高い1台である。歴代フィットの特徴である室内空間の広さはもちろん受け継ぎつつ、走行性能や燃費性能にも磨きがかかっている。にもかかわらず、フィットがかつてのような圧倒的な人気を得ることができていないのは、魅力的な軽自動車やコンパクトSUVが多数登場していることが大きく関係しているのかもしれない。

満足している点

あらゆる面で総合力の高いモデルであり、実用車としては大きな不満を感じることはないだろう。特に、ホンダの独自技術である「センタータンクレイアウト」を活かした広い室内空間は、ライバルに差を付ける大きな武器だ。

不満な点

ライバルと比べて燃費性能が劣る点はフィットの明確な課題だ。加えて、良くも悪くもクセがないため、積極的に選ぶ理由に欠ける部分がある。実際のところ、多くのユーザーは、ガソリン車のフィットではなく、フィットのハイブリッド車や軽自動車のN-BOXのほうが魅力に感じるのではないだろうか。

デザイン

4

さまざまな意見のあるエクステリアデザインだが、個人的には決して嫌いではない。欲を言えば、もう少しAピラーを立てたほうが愛らしさが強調されると思うが、空力性能などを考えると難しいのだろう。インテリアもさまざまなバリエーションから選択できて好印象だが、コンセプトの異なるさまざまなグレード（ホンダは「タイプ」と呼ぶ）が設定されているため、どれを選べばよいのかややわかりにくいのが残念に感じる部分だ。

走行性能

3

先代から排気量が増した1.5リットルのガソリンエンジンは、どんな速度域でも一定の走りを見せてくれる。サスペンションは硬すぎず柔らかすぎずといった感じで、ほどよいセッティングという印象だ。ただ、ガソリン車には取り立てて特徴がないのも事実だ。スムーズな発進や高速走行時の安定性を求めるなら、やはりハイブリッド車を選んでおきたいところ。もちろん、運転する楽しさを感じるなら「RS」という選択肢もあるが、そちらも予算が許すならハイブリッド車の「RS」のほうがおすすめだ。

乗り心地

4

コンパクトカーという制約から一定のレベルで頭打ちしている感はあるが、可能な限り乗り心地の良さを実現していると言える。その大きな要因となっているのは、ほどよく調整されたサスペンションと、クラストップレベルの室内、そしてシンプルな内装だろう。ただ、ある程度の速度になると、エンジン音や風切音が侵入してくる点には注意が必要だ。

積載性

4

コンパクトカーというカテゴリーにおいては、トップクラスの積載能力を持っていると言えるだろう。また、リアシートを倒した際に、床面がほぼフラットになるのもうれしいポイントだ。

燃費

2

コンパクトカーでもハイブリッド車が主流となりつつある現在では、12〜13km/L前後という実燃費には厳しい評価をせざるを得ない。これはライバルと比べてもやや見劣りする数値であり、フィットの数少ない欠点のひとつと言える。

価格

3

軽自動車が高価格化しているなか、フィットのコストパフォーマンスは相対的に高まっていると言えそうだ。機能装備を考えると、ベースグレードである「BASIC」はコストを最重要視するユーザー以外にはおすすめできないため、「HOME」や「LUXE」などを選びたいところ。ただ、それならフィットのハイブリッド車をねらったほうが満足度は高いかもしれず、悩ましいところだ。