レクサスブランドで人気のスポーティSUVであるRXは、2022年11月にモデルチェンジを行い、ガソリン車とハイブリッドからプラグインハイブリッドまでをそろえている。そして2023年3月30日に、EV専用SUVのレクサスRZ450eが発売された。サイズ感も雰囲気も似たこの2車種の違いはどこにあるのだろうか?
文/渡辺陽一郎、写真/奥隅圭之、平野学、トヨタ
レクサスSUV選びは悩ましい? ハイブリッドのRXかBEVのRZ……あなたはどっち!!
■EV専用で前後モーターによる4WDのRZ
EV専用のSUVとして登場したレクサスRZ450e
最近はSUVと電気自動車の新型車が増えた。この2つの要素を併せ持つ車種も多く、直近ではレクサスRZが登場した。プラットフォームはトヨタbZ4X&スバルソルテラを基本に、改善を加えている。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2850mmだから、bZ4Xやソルテラと等しい。ハイブリッドを用意しない純粋な電気自動車だ。
レクサスRZは、前後にモーターを搭載する4WDで、動力性能はbZ4Xなどの4WDとは異なる。RZの最高出力は、フロントモーターが150kW、リヤモーターは80kWだ。
bZ4Xは、前輪駆動の2WDではフロントモーターの最高出力が150kWだが、4WDになると前後輪ともに80kWになる。RZは150kW+80kWだから強力だ。
RZの駆動用リチウムイオン電池は、総電力量が71.4kWhで、この数値はbZ4Xと等しい。RZは1回の充電で500km以上を走行できることを目的としている。bZ4Xの4WDは540km(20インチタイヤ装着車は487km)になる。
RZのボディサイズは、全長が4805mm、全幅は1895mm、全高は1635mmで、試乗したプロトタイプのバージョンLは、20インチタイヤを装着していた。車高の高いSUVスタイルになる。
電気自動車にはSUVが多いが、その理由は、全高の高いボディによってリチウムイオン電池を床下に搭載しやすいからだ。天井の低いセダンでは、電池の搭載で床が高まると、室内高が不足する。
シートの座面と、床の間隔も狭まり、腰が落ち込んで膝の持ち上がる着座姿勢になる。しかし全高を1600mm以上に設定したSUVなら、この問題を解決できる。窮屈な座り心地にならない。
そのために日産アリアもSUVだ。サクラは軽自動車だが、基本的なボディ形状はデイズと同じだから、全高は1600mmを上まわる。従ってリチウムイオン電池を床下に搭載しやすい。
■人気のレクサスRXとサイズ感が近いRZ
最もスポーティなレクサスRX500h
SUVスタイルにしたことで、RZの外観は、同じレクサスに属するSUV、RXに似ている。RZの全長は4805mm、全幅は1895mmだから、RXに比べて85mm短く25mm狭いが、ホイールベースは同じだ。RZの全高は1635mmだから、RXのハイブリッドに比べて65mm低い。
RZはRXとホイールベースが同じながら、若干コンパクトだから、外観には引き締まり感が伴う。
フロントマスクは、RXはグリルを大きく見せるレクサスらしいスピンドル形状だが、RZは電気自動車だから、スピンドルを継承しながらボディ同色に仕上げた。
内装では、インパネのデザインや質感は両車とも似ている。中央には大型ディスプレイが備わり、ドライバー側へ少し傾けて装着した。ATの操作は異なり、RZはダイヤル状で回転させるが、RXはレバーを前後に動かす方式だ。
RZにはステアリングの動きを電気信号で伝えるステア・バイ・ワイヤ方式も用意され、このステアリングは、長方形の特別なデザインとした。
前席の座り心地は両車とも似ている。少し硬めで体が座面に沈むタイプではないが、背もたれの下側と座面の後方をしっかり造り込み、長距離移動時の疲労を抑えた。
後席も似ている。両車とも床と座面の間隔が少なめで、SUVとしては腰が落ち込んで膝が持ち上がる。それでも座面の前側を持ち上げたから、大腿部が座面から離れることはない。その半面、小柄な乗員が座ると、やや圧迫感が生じそうだ。
身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席の頭上空間は、両車とも握りコブシ1つ分を確保した。後席の膝先には、両車とも握りコブシ2つ半以上の余裕があり、着座位置は低めながら窮屈ではない。このようにRZとRXのパワーユニットは大きく異なるが、居住性は似ている。これは開発や製造の合理化でもある。
■EVならではの鋭いレスポンスが魅力
レクサスRZ450eはモーター駆動ならではのレスポンスの良い走りが楽しめる
RZのバリエーションは、Version Lと特別仕様車のFirst Editionの2種類。パワーユニットは前述の4WDのみだ。前輪に最高出力が150kW(204馬力)、後輪に80kW(109馬力)のモーターを搭載する。
RXには、2.4Lターボを搭載するRX350、2.4Lターボ+ハイブリッドのRX500h、2.5LでプラグインハイブリッドのRX450h+がある。駆動方式は、RX350には前輪駆動の2WDもあるが、RX500hとRX450h+は、後輪をモーターで駆動する4WDのみだ。
RX350の最高出力は279馬力、RX500hのエンジンとモーターを合計したシステム最高出力は371馬力、RX450h+は309馬力になる。RX450h+が搭載する駆動用リチウムイオン電池の総電力量は18.1kWhで、1回の充電によって86kmを走行できる。
RZのプロトタイプに試乗すると、モーター駆動のみのだから、動力性能はエンジンを搭載するクルマとは根本的に異なる。巡航中にアクセルペダルを踏み増した時の反応は機敏だ。駆動力が一気に立ち上がる特性は敢えて抑えたが、滑らかに速度を急上昇させる。
RZの停車状態から時速100kmに達するまでの加速タイムは5.3秒とされ、スポーツカーのGR86が6秒少々だから相当に速い。しかも電気自動車だから無音に近く、静かに急加速するため、独特の迫力も感じさせる。
RXの中で加速感がRZに一番近いのは、2.4Lターボ+ハイブリッドのRX500hだ。実用回転域の駆動力が高いが、エンジンの存在感も強い。エンジン回転の上昇に伴って加速力が増してきて、レクサスとしては回転感覚が少し粗削りだ。街中や高速道路の巡航では静かだが、アクセルペダルを踏み増すと、ザワザワした印象になる。
ノイズや回転の滑らかさでは、2.5LプラグインハイブリッドのRX450h+がRZに近いが、動力性能は3.5Lのガソリンエンジンに相当する。RZほどパワフルではない。このようにRZの動力性能は、レクサスのSUVとしては上質で力強い。
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■異なる走りの魅力を持つ価格の近しい2台
レクサスRZ450eはステア・バイ・ワイヤ方式のステアリングも選択可能だ。わずかな
RZは走行安定性も優れている。電動自動車は低い位置に駆動用リチウムイオン電池を搭載するから、重心が下がってボディ下側の剛性は高く、走行安定性を高めやすい。RZはこの特徴を生かしている。
ちなみにbZ4Xは、良く曲がる代わりに、走行状態によっては後輪の接地性が削がれやすい。姉妹車のソルテラは、後輪の接地性は高いが、ステアリング操作に対する反応は少し穏やかだ。
RZはボディやサスペンションの取り付け剛性を高め、駆動力制御をさらに綿密に行うことで、bZ4Xとソルテラのメリットを併せ持つ。峠道などでカーブを曲がりながらアクセルペダルを踏み増しても、旋回軌跡を拡大させにくい。
曲がっている最中に危険を避けるため、アクセルペダルを戻したりブレーキペダルを踏んでも、後輪の接地性が下がりにくい。ほかのSUVでは、横滑り防止装置が介入する場面でも、RZであれば安定を保てる。
RXの場合、2.4Lターボ+ハイブリッドのRX500hは、機敏に向きを変える。その代わり下り坂のカーブで危険を避ける時などは、後輪の接地性が不足気味に感じることがある。
2.5LプラグインハイブリッドのRX450h+は、運転感覚は馴染みやすいが、ステアリング操作に対する反応は穏やかだ。RX500hのようなスポーティな印象は受けない。
その点でRZは、機敏でスポーティな回頭性と走行安定性を両立させ、奥の深い運転感覚を味わえる。そしてこの特徴は、今のレクサスブランドが目指す理想の走りに近い。つまりRZはレクサスの集大成ともいえるわけだ。RXの先を走るのがRZともいえるだろう。
なおRZに用意されるステアリングの動きを電気信号で伝えるステア・バイ・ワイヤ方式は、画期的な機能だ。テスト車両は、低速域では、長方形のステアリングを少し回しただけで車両の向きが大きく変わった。慣れないと違和感が生じるが、操舵角度はきわめて小さい。
高速になると通常のステアリングギヤ比に近付く。慣れると便利に使えるが、ステア・バイ・ワイヤ方式と、一般的なステアリングの車両を交互に使う時は、注意せねばならない。
この機能は身障者用車に適している。ステアリングホイールに装着された丸いノブを持って、片手でグルグル回す必要がないからだ。また操舵量の大きなトラック、工事現場などで使われる各種の作業車などに応用すると合理的だろう。
RZの価格だが、Version Lが880万円、特別仕様車のFirst Editionが940万円だ。RXで価格が最も高いRX500h・Fスポーツパフォーマンスが900万円となっている。レクサスファンにとっては究極の選択になる。
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みんなのコメント
なので少し待ってから買おうとは思ってる。
ただその頃の社会情勢の変化でEVがめっちゃ敬遠されてたら笑えるが………