日本自動車業界のEV開発遅れ
筆者(北條慶太、交通経済ライター)は先日、当媒体に
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・EVアンチが、3月発表「トヨタ新型EV」をなぜか批判しない根本理由(2025年3月16日配信)
・「EV信者を批判しているだけ」EVアンチがこうした論点ずらし”を行う根本理由! むしろトヨタの邪魔をしているのでは?(2025年3月22日配信)
という2本の記事を執筆した。記事の概要は次のとおりである。
●EVアンチが、3月発表「トヨタ新型EV」をなぜか批判しない根本理由
・電気自動車(EV)の環境性能は、「Tank to Wheel」と「Well to Wheel」の評価基準により異なり、後者では、EVの環境優位性に疑問が生じることもある。
・EVは部品数が減る為、産業構造に大きな影響を与える。経済的懸念も存在。
・トヨタ自動車は2025年に新しいEVを欧州で発売予定である。これに対して日本国内のEVアンチ(EV批判派。EVを感情的に批判する人)の反応が弱まっている。
・日本ではEV批判が「EV批判」ではなく、むしろ「外国車批判」に近い現象がある。特に、外国製EVの台頭に対する反発は以前より根強い。
・国内では日本車への支持が高く、国産EVへの期待が、特に強いことが調査結果からも判る。
・トヨタのEV参入は、日本の自動車産業への信頼回復を期待させる。
・海外製EVに対しては、日本車志向が強い為にEVの導入・普及に対し懸念があるが、トヨタのEVが市場に登場することで状況が改善される可能性がある。
・日本国内でのEV市場拡大には、日本製技術への信頼感を示すことが重要であり、テクノロジーの信頼性向上がカギとなる。
・EVの普及に関しては、技術的な課題だけでなく、政治・文化的背景や社会的課題も関わっており、今後のトヨタの動向には注目が集まる。
●「EV信者を批判しているだけ」EVアンチがこうした論点ずらし”を行う根本理由! むしろトヨタの邪魔をしているのでは?
・EVの普及にともなう賛否両論の議論は重要であり、技術や政策の改善点を明らかにし、イノベーションを促進する。
・EV批判派が「EV信者(EV称賛派)」を批判する傾向があり、感情的な議論が多く、冷静な事実に基づいた議論が求められている。
・EV批判には環境負荷、充電インフラ、コスト、電池寿命などの具体的な問題点が含まれ、これらはデータや研究によって理解されつつある。
・日本の充電インフラは増加しており、政府も充電インフラ整備を進めている。
・EVの走行距離や環境負荷は改善され、ガソリン車よりも二酸化炭素排出量が少ないという研究結果も、海外で出始めている。
・EV批判派は感情的な反応から、論点をずらしがちで、EV批判派という「共通の敵」を設定し議論を進めることが多い。
・トヨタのEV発表を受けて、EV批判派のトーンが静まったが、批判には一貫性が欠けている。
・EVは依然として課題があり、持続可能な社会を目指す選択肢のひとつに過ぎない。選択肢のひとつとして、それを潰さない形で冷静かつ客観的な議論が求められる。
これらを総括すると、EVへの賛否は技術的・環境的な観点だけでなく、「文化的・政治的な背景」にも影響されていることがわかる。日本の自動車業界におけるEV開発遅れに対する不安が、逆にEV批判を生んでいるとも指摘できる。筆者が
・熱烈な自動車ファン
・技術者(特にベテラン)
と話すと、海外製EV(特に中国製)の技術が優位であることに対し、「許せない」という強い反発を感じる。つまり、EV批判の本質は単なる技術的反発ではなく、外国製EVに対する根強い抵抗が批判を引き起こしている可能性がある。これが衝突の根本的な要因だと考えられる。
EV批判派の背後に潜む感情
「EVが環境に優しいかどうか」という議論を超えて、感情的な反発が存在していることは、他のデータからも明らかだ。
例えば、2024年1月19日に公表された内閣府の「外交に関する世論調査」では、中国に親しみを感じる日本人が前年より5.1ポイント減少し、12.7%となった。親しみを感じない日本人は
「86.7%」
に達し、前年より4.9ポイント増加し過去最多となった。一方、民間団体「言論NPO」と中国のメディアグループ「中国国際出版集団」の「日中共同世論調査」では、日本人の中国への印象が「良くない」または「どちらかといえば良くない」とした人が2021年の調査時点で
「9割」
を超え、その高止まり状態が続いている。
・新型コロナの原因を作った国
・旅行者のマナーの悪さ
・政治的な攻撃
などが重なり、日本人の対中感情は公的な調査でも民間調査でも悪化している。このため、中国の様々な分野での台頭は、EVに限らず受け入れにくい状況になっていると考えられる。
つまり、中国製EVへの批判が強い背景には、技術的な問題よりも政治的・文化的な要素が影響していると見ることができる。中国の台頭に対する反発としてEV批判が行われている可能性が高い。しかし、適切な環境技術の普及を考えるなら、このような主観的な批判は認めるべきではないだろう。
中国製EVが世界市場を席巻
2024年3月26日の報道によると、BYDはEVメーカーとして初めて年間売上高1000億ドルを突破。イーロン・マスク率いるテスラを抜き、世界トップの座を奪還した。このニュースに対し、ネット上では中国や米国を中心にEVに関する議論が巻き起こった。本来なら技術的・経済的な観点から議論されるべきだが、実際には感情的な対立が目立ち、中国製EVへの偏見や警戒心が強調されている。
日本の自動車業界は長年にわたり世界で高く評価され、特にトヨタのハイブリッド車(HV)をはじめとする技術面でリードしてきた。しかし、近年のEV市場では後れを取り、不安視される場面が増えている。
EV化による部品点数の削減やガソリンスタンドビジネスの変化といった社会の変革に対し、日本メーカーは慎重な姿勢を貫いている。一方、中国は「まずは市場に投入する」戦略で世界市場を席巻。EV推進を国家政策として強力に支援し、急速にシェアを拡大した。
バス業界では中国製EVバスの導入が進み、その評価が変わりつつある。かつては整備体制の不備や故障率の高さが懸念されていたが、実際に運用すると安定した性能と高いコスト効率が評価され、信頼を得るに至った。こうした実績の積み重ねによって、中国製品への懸念は次第に薄れつつある。
欧米では中国製EVの受け入れが進む一方、日本では依然として強い拒否感が根強く、試すことすら避ける傾向がある。感情的な反発ではなく、技術や品質を冷静に評価する姿勢が求められる。技術革新において最も重要なのは、国籍や出所ではなく、製品そのものの品質である。
日本の自動車業界が中国製EVに対抗するには、技術的な強みを活かしつつ、戦略の見直しが不可欠だ。トヨタのEV市場への取り組みを見る限り、日本の自動車産業が競争力を維持するためには、外国製EVを単に拒絶するのではなく、グローバル競争を見据えた積極的な改革が求められる。
トヨタがEVの国際戦略を本格化させ、世界市場での存在感を示し始めたことは、EVに対する批判的な声を弱める要因となった。仮に日本市場向けに限定された戦略であれば、「内向きな取り組み」として批判されていた可能性が高い。
一方、トヨタのグローバル戦略を日本の競争力を世界に示す機会と捉え、安心感を抱く層も少なくない。特に、
「日本経済が活気に満ちていた時代を経験した高齢層」
にその傾向が顕著だが、日本人全体にも根強く残る意識といえる。だからこそ、日本メーカーの国際戦略は極めて重要である。
EV拒絶の裏に潜む「中国アレルギー」
EVを否定することは、ある意味で「中国に屈したくない」という感情の表れとも取れる。つまり、「EVは技術的に劣っている」ではなく、「EVが普及すると中国が有利になるから嫌だ」という潜在的な心理が、EV批判の根底に流れている可能性があるのだ。
これは決して新しい現象ではない。例えば、1990年代から2000年代にかけて、日本の家電業界は韓国・台湾メーカーの台頭に直面した。当時、日本では「韓国製の家電は品質が不安」「台湾の電子部品は低価格だが性能に疑問がある」といった声が一部で見られた。しかし、その後、サムスンはスマートフォンやディスプレイ市場で世界トップクラスのシェアを獲得し、TSMCは半導体製造の受託生産(ファウンドリ)分野で圧倒的な地位を築いた。
同様の現象は、1980年代の米国でも見られた。トヨタやホンダが市場に参入した当初、一部の消費者や業界関係者から「日本車は安全性に懸念がある」「品質が欧米車に劣る」といった指摘があった。しかし、オイルショックを契機に燃費性能が重視されるようになると、日本車の信頼性や経済性が評価され、市場での存在感を急速に高めた。現在では、日本車は耐久性と品質の高さで広く認知され、米国市場に不可欠な存在となっている。
こうした事例からもわかるように、新興メーカーや技術に対する当初の不信感が、時間の経過とともに評価の逆転をもたらすことは珍しくない。
日本の自動車業界がこれからEV市場でどのような戦略を取るかは、一つの大きな分岐点にある。しかし、「EVは不要」「EVなんて中国だけのものだ」といい続けているだけでは、やがて市場の流れに取り残される可能性が高い。
ここで重要なのは、かつて日本が西洋の技術を取り入れて独自の発展を遂げたように、徹底的にEVの技術を研究し、中国のEV産業を凌駕するほどの力をつけたうえで、「あえて別の道を選ぶ」という選択肢を持つことだ。
例えば、次世代バッテリー技術や、EVを前提とした新たなモビリティサービスの開発など、EVの流れを無視せず、それを飲み込む形で独自の優位性を築く道もある。あるいは、EVそのものではなく、水素や合成燃料などの別のアプローチを強化するという選択肢もあるだろう。しかし、そのどちらの道を選ぶにしても、「EVの時代が来ない」と目を背けるのではなく、「EV市場に正面から向き合ったうえで、別の道を選ぶ」という姿勢がなければ、単なる負け惜しみにしか見えなくなってしまう。
現実を見れば、世界の自動車市場は確実にEVへとシフトしている。規模こそ違えど、かつてスマートフォンがフィーチャーフォンを駆逐したように、EVの波を「一時のブーム」として捉えるのは危険だ。
しかし、その波を直視することなく、「EVなんて中国のものだ」と遠ざけるだけでは、やがて市場の変化に取り残されることになる。日本の自動車業界がこれまで培ってきた技術やブランド力を活かしながら、新しい時代に適応する道を見出すためには、まず「感情的なEV否定」を乗り越える必要がある。
EVの未来を論じる上で、本当に問うべきは「EVが良いか悪いか」ではなく、「日本はEVの時代にどう対応するのか」という視点ではないだろうか。
敢えていおう。大半のEV批判派は、単なる「中国嫌い」なのである。
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みんなのコメント
もっと言えば、日本に来る観光客のマナーも最悪。
ただEVは動力源としての選択肢の1つでしかなくガソリン、ディーゼル、CNG等の1つであり全てがEVになることは無いでしょう。
EVのメリットだけでなくデメリットも踏まえた上で選択する世の中になると思いますよ