東日本大震災から10年が経過。また今年2月に起こった福島沖を震源とする地震も広い地域で大きく揺れ、関東地方でも停電が発生した。
近年は各地で地震をはじめとした自然災害が多く発生している。そこで注目されているのが給電機能を持つクルマだ。
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特にEVやプラグインハイブリッド車(PHV/PHEV)は優れた給電性能を持っているため停電時などでは備えになる。
では、給電機能付きのクルマだと具体的には災害時にどんな使い方ができるのか? 御堀直嗣氏が解説します。
文/御堀直嗣 写真/トヨタ、日産、ホンダ、三菱自動車
【画像ギャラリー】V2Hの電気自動車対応車種を中心に、給電機能の現在をギャラリーでチェック!
■日本のEVやPHEVは住まいや家電製品などへ電力を供給できる
世界各地域の規制強化により、海外からも電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV/PHEV)が相次いで日本に輸入されるようになった。
そして海外では、欧州でジャガーとボルボが、米国ではGMがEVメーカーになると宣言した。
ここ1年ほどで急速にクルマの電動化が進むなか、日本のEVやPHEVは独自の機能を備えているものがある。
それが、EVやPHEVから住まいや家電製品などへ電力を供給する「給電」機能だ。
リーフは充電して蓄えた電力を、V2H機器を使うことで家庭へ給電することもできる
現在日本に輸入されている海外のEVやPHEVには給電機能がなく、メーカー関係者に尋ねても給電に対する意識や知識はほとんどないといっていい。
しかし、日本のEVやPHEVも、当初から給電機能を備えていたわけではない。
■被災地の声で電力を供給するシステムを開発
三菱自動車工業は、2009年に世界初の量産市販型EVを法人向けに発売し、翌年に一般消費者への販売をはじめた。
同2010年には、日産もリーフの市販を開始した。そして2011年3月に東日本大震災が発生する。
社会基盤(水道・ガス・電気)は崩壊したが、まず復旧したのは電気だった。そして、日産と三菱自は、被災地での移動用としてEVを提供したのであった。
現地で耳にしたのは、「せっかく車載バッテリーに電気があるのに、使えないのでしょうか」という被災地の声だった。両社はさっそくEVからの給電機能の開発に取り掛かった。
日産は、ニチコンと共同でヴィークル・トゥ・ホーム(V2HやVtoHなどの略称で使われる)と呼び、急速充電口から電力を取り出し、専用機器を通じて住まいへ電力を供給できる設備を開発し、販売した。
日産リーフと太陽光パネル、V2H機器を活用した災害時の電力供給イメージ図
三菱自は、MiEVパワーボックスを開発し、販売した。やはり急速充電口から電力を取り出し、家庭電化製品に利用できるようにした。
■日産と三菱は給電能力を生かして各地域と協力している
日産と三菱自はここから、EVが排出ガスゼロを実現する単なる環境車ではなく、暮らしに不可欠な電力という安心を届ける電源になることを理解し、その普及に努めてきたのである。
日産は現在、ブルースイッチという取り組みを推進している。
これは、EVが持つ潜在能力、環境性能(排出ガスゼロや静粛性)、蓄電機能による移動式電源、何処でも充電できガソリン(水素などエネルギー)スタンドが不用という特徴を活かした地域の防災・減災、環境保全、再生可能エネルギーの活用、また観光や過疎対策などで連携する活動だ。
すでに100以上の地域との連携をはじめている。
日産は浜松市(静岡県)など各地と電気自動車を活用した「災害連携協定」を結んでいる
三菱自も、電動ドライブステーションの取り組みを開始しており、販売店に太陽光発電を設置し、そこからの電力活用の様子を紹介している。
そして三菱自も、全国100の自治体と災害時に被災地へ電動車を速やかに送り届ける協定を結んでいる。
■EVやPHVはどれだけの給電能力をもっている?
では、実際の災害時、停電になった時にどれほどの給電能力を備えているのだろうか。
日産リーフには現在2種類のバッテリー容量があり、ひとつは40kWh(キロ・ワット・アワー)、もうひとつが62kWhだ。
これらに満充電されているとして、家庭で使われる電力量は年平均で一日約18kWhとされるので、2~3日は普段通りの生活を続けられることになる。
ただし家庭での消費電力は季節によって変動し、空調などが不要になる春や秋には半分ほどに減る。その時期には、4~6日の電力を賄える計算だ。
また、災害時に電気を必要最小限に節約して使えばさらに長持ちさせることができるだろう。ちなみに日産では、3~4日はリーフから電気を利用できるとしている。
ホンダ初のEVであるホンダeも、V2Hなどへの対応を行っている。ただし、バッテリー容量が35.5kWhとなるので、リーフよりは電力供給性能は落ちる。
ホンダe
三菱自では、現在はアウトランダーPHEVやエクリプスクロスPHEVの販売が主力で、EVのi-MiEVは販売台数が限られる。
PHEVの場合、車載バッテリーの容量はEVに比べ少なく13.8kWhなので1日分程度だが、発電用エンジンを利用したチャージモードを使うと10日ほど電力を供給できる能力を持つという。
ただし、エンジンを稼働させる際には、一酸化炭素中毒にならないよう換気への配慮が不可欠だ。
三菱自動車のアウトランダーPHEV。日本のEVやPHEVは独自の機能として給電能力を備える
EVやPHEVからの災害時の給電については、自宅にV2Hの設備を設けていない場合でも、移動式の変換器を急速充電口につなげば、そこから電気を取り出すことができる。
これを利用し、家庭電化製品だけでなく、医療に必要な機材を運転することも可能だ。
トヨタも、PHVや燃料電池車(FCV)から災害時に給電できるようにしはじめている。
ヴィークルパワーコネクターという装備を開発し、PHVの普通充電口から最大1500Wまでの電化製品を利用できるとする。
トヨタのプリウスPHVを使った被災地での給電の様子
新型MIRAIでは、燃料電池スタックに急速充電用と同じ外部給電口を設け、直流電気を取り出せるようにし、最大9kWhの電力供給ができる。
また非常時給電機能付きアクセサリーコンセントが2つあり、ここから最大1500Wの電気を取り出せる。
トヨタのPHVはヴィークルパワーコネクターを使うことで1500Wの電力使用が可能。家電製品が使える
■EV、PHEV、FCVは暮らしを守るためにも役立つ
自然災害は、世界的な問題だ。
通常であれば冬でも半袖で暮らせる日もあるという米国テキサス州で2月に寒波が押し寄せ、気温がマイナスとなって電気が止まるだけでなく、寒さに対する防御がなされていない水道が破裂するなど、惨事となった。家具を燃やして暖をとったという話も伝わる。
国内では、2018年に北海道で起きた胆振東部地震の折、札幌市近郊に住むアウトランダーPHEVの所有者が、1500W用の車内コンセントから電気を取り出し水洗トイレを流すのに使ったという。
断水はしていなかったが、電気がないとトイレを流せなかったのだ。また洗濯機を動かし、炊飯器で温かいご飯を食べることもできた。
3日目に電気が復旧した時、まだガソリンは半分ほど残っていたという。「なんとかなるという気持ちの支えになった」と、その体験談を話している。
2月に公開となった新型アウトランダー。発売は今秋か。PHEVモデルは1年後(2022年)の登場と目されている
2019年に千葉県に大停電を起こした台風15号の災害では、53台のリーフが千葉県へ提供され、自治体や福祉施設、保育園、コンビニエンスストアなどへの電力支援を行った。
そして熱中症対策のための扇風機や、スマートフォンへの充電、給水所の夜間照明など、さまざまに電気が利用された。
過去に経験したことのないような自然災害によって社会基盤が崩壊する恐れは、どの地域に住んでいても他人事でない時代になった。
災害に見舞われた時、普段どおりに過ごすのは難しくても、温かな食事や飲み物が手に入ったり、湯を沸かして体を拭いたりできるだけでも、復旧への活力が生まれる。
EVやPHEV、あるいはFCVは、走行中の排出ガスをゼロにできるだけでなく、停車中に暮らしを守ることにも役立つ。
ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)などで製品の優劣をはかるだけでなく、暮らしや社会に密着した貢献という目で、次世代車の行方を見定めていかなければならない。
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みんなのコメント
車は、2013年からアウトランダーPHEVを所有。現在2台目です。自宅にいる時は深夜電力でほぼ毎日フル充電。ガソリンタンクも最低10L程度は残しています。それだけで、+1日は停電しても乗り切れます。さらに長引けばGSに給油に行けばよいです。アウトランダーPHEVには、初度登録後8年以内(但し走行16万km以内)で駆動用バッテリー容量の70%を下回った場合、無償で修理・交換を実施の容量保証があるため、安心です。現在3年半経過6万キロ走行しておりますが、まだ8割以上は残っています。おそらく2年後くらいにはその保証により新品の駆動用バッテリーに交換してもらえるt思います。実際にDRでは5年経過くらいの車両の交換作業が多いようです。