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日産の決算に思うこと【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

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日産の決算に思うこと【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

車のニュース [2023.05.19 UP]


日産の決算に思うこと【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
文●池田直渡 写真●日産

70スープラで当時の人気スポットをドライブ~あの場所はいま90’s~

決算というと、金勘定のつまらん話だ。ともしや思っている人がいるかも知れないが、実は、数年分連続して追っかけていると、実は結構な大河物語だったりするのだ。

決算というのは企業にとっての通信簿であり、それはつまり活動の記録でも、努力の過程でもある。そしてそれが数値化されて優劣が付く。だから面白い。

そして多分この5月11日に発表された日産の決算は、ちょうど良い物語の区切りポイントでもある。なので多分これまで誰も書いたことのない、決算物語をここで書いてみたい。


日産自動車が発表した2022年度財務実績
今回の物語は2016年に始まる。まだカルロス・ゴーン氏が社長だった頃だ。筆者は、当時の日産を見ていて、新型車の発売ペースが異様に遅くなり始めたことに気づいた。13年にデイズエクストレイルスカイラインを発売したあと、14年にはティアナ、デイズ・ルークススズキからのOEMであるNVクリッパーという具合。

翌15年と16にはついにブランニューモデルは一台もデビューしなかった。13年以降の新型車から三菱と合弁で作ったNMKVの車両とOEMモデルを抜いたら、4年間でエクストレイル、スカイライン、ティアナだけ。しかもスカイラインは北米向け商品であり、インフィニティのエンブレムのまま。ティアナは中国向け開発商品のお下がりというありさまで、日本向けと言える商品はかろうじてグローバルモデルのエクストレイルただ一台という有様だった。この時書いた記事があるので興味のある方はこちらを。

実は、この頃日産は、アジア新興国に向けビジネスを立ち上げようと画策し、インドネシアに工場を建設してダットサンをディフュージョンブランドとして確立しようとしていた。その原資を捻出するために、日本向けの新規開発を全部止めて、それを新興国投資に回していたのだ。

そんなことをすれば、日本国内販売が弱体化するのは見え見えだったが、なぜか、ここはなぜかとしか言いようがないが、日産はそういう馬鹿げた戦略を実行した。結果は火を見るより明らかだった。

日本ではデビュー後長らく放置された世代遅れのモデルを売るしかない。5年も6年も前にデビューした古参兵で、他社のピカピカの新型と戦うには値引き勝負しかない。そうやって販売促進費がどんどん肥大して利益が落ちていくのが決算書からも明らかだった。

それでもクルマが売れないので、フリート販売に逃げた。フリート販売とはいわゆる大口販売で、レンタカー会社に売ることだと思えば良い。工場の稼働率限界を下回ると、赤字を量産しているようなことになり果てるので、最低稼働率はどうしても保たなければならないのだが、そうやってできたクルマをどうするかが問題になる。

どうせレンタカーなので、安い方が良い。ここでも値引き勝負になる。レンタカーは稼働期間が満了すれば激安中古として市場にでてくることになる。それだけ手を打って、まだ足りなければ、もう自社登録をして、新古車として売るしかない。自動車メーカーの典型的な転落ストーリーである。

そしてそうやって馬鹿馬鹿しい値引きをした商品が巷に溢れれば、日産のロイヤルユーザーの手元にあるクルマの査定が落ちていく。顧客の資産を劣化させれば次の買い換えの原資が減る。最悪の結果買い換えをやめてしまったり、良くてもグレードを落としての購入につながる。それが決算書の「構成」と呼ばれる台あたり利益を確実に蝕んでいく。これが悪夢のサイクルである。

商品を更新しないとどうなるか、値引きをするとどうなるか、フリート販売という安易な道の先に何があるか、新古車の行先は、もう世界中の自動車メーカーが何度も繰り返し、その後地獄の再建プログラムを歩むことになってきたお約束のしくじりロードである。

そして18年ゴーンショックが起きる。後を襲った西川社長は、20車種の新型車を投入すると発表したが動きは遅く、約束した再建プログラムは一向に始まらなかった。そして、ついに日産ブランドに傷が付く様な決算発表となったのである。この時の記事もあるのでこちらを。


日産自動車 内田 誠取締役、代表執行役社長兼最高経営責任者
さて、お前延々と日産をディスるだけかとお思いの方々安心めされよ。西川社長の後、このボロボロの日産の社長を継いだ内田社長がこれを見事に立て直したハッピーエンドでこの話は終わる。

内田社長は矢継ぎ早に手を打った。まずは出血を止める処置だ。インドネシアのプロジェクトを止めた。次に余剰な生産設備と車種を整理して、身の丈以上の生産設備を処分する。そうやって固定費をスリム化させた。筆者が特に感心したのはミスターコストカッターと言われたゴーン氏の時の様な「流血も辞さず」というやり方ではなく、極めてスマートに撤退が行われた点である。


日産自動車「2019年年度決算/事業構造改革計画」より抜粋
その上で、コアとなるバリューを「コアマーケット」「コアモデル」「コアテクノロジー」の3つに絞り、徹底的に選択と集中を行なった。この辺りは商社出身ならではの手際を見た思いだ。

そして、ここは筆者の想像だが、新興国プロジェクトの出所はたぶんルノーだったのではないかと思っている。であればより筋が通るのだが、内田社長自らがルノーとのリアライアンスを組み直した。これについてはルノー有利の条件を御破算にする話なので、かなりタフなネゴシエーションであったと思う。それでもここに踏み込んだのは、日産凋落の遠因となっていたから捨ておけなかったのではないかと密かに筆者は思っている。

こうしたプログラムを整然と進め、そしてこの23年3月の決算で、日産は増収・増益の発表を行ったのである。かつて戦闘力のあるニューモデルがない中で歯噛みをしながら投げ売りをしていたディーラーは、いま誇りある高付加価値でクルマを売っている。半導体不足で思った様にクルマが作れず、対前年で14.7%も台数をダウンしながら、売上高を対前年で2兆5967億円伸ばしてみせた。

かつてトヨタと覇を競った日産にしてはまだまだ物足りないが、あの無惨な決算からこの短期間にここまで戻した日産の頑張りに、筆者は胸が熱くなる思いがした。

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みんなのコメント

22件
  • 難題が山積だが頑張ってほしい
    トヨタの下請けになるのだけは勘弁
  • 訳の分からねえ経済知ったかおじさんが湧いてるな。

    うだうだ言ってるなら自分で起業して大企業に伸し上がってみろよ、口だけあーだこーだ偉そうなこと言って現実はバイトか期間従業員って所だろ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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