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イマドキのEVバッテリーは思ったほど劣化しない! 7000台の調査でわかった20万km・30万km走行車のバッテリー残存率

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イマドキのEVバッテリーは思ったほど劣化しない! 7000台の調査でわかった20万km・30万km走行車のバッテリー残存率

EVバッテリーの劣化状況を調査

EVのバッテリー劣化に関して、第三者機関によるEV7000台以上を対象とした大規模な調査が実施されました。EVを購入するうえで重要な指標となるバッテリーの劣化問題に関する基礎知識を含めて解説します。

EVのバッテリーも中を開けると「円筒型」「角型」「ラミネート型」とさまざま! それぞれどんな特徴があるのか?

今回のEVのバッテリー劣化に関する最新の調査結果として、ドイツの自動車関連のコンサルティング会社のP3グループが、街なかを走っているEVのバッテリー劣化状況を調査しました。EVにおける高電圧バッテリーは生産コストの2~3割を占めることからリセールバリューにも直結します。一方で、ネット上などでは、EVのバッテリーが想像以上に早く劣化してしまうなどの言説が飛び交っており、EVの普及という観点でバッテリー劣化に関する調査は極めて重要であると前置きされています。

今回の調査はP3グループの所有する50台のBEVとともに、バッテリー劣化に関する独自調査を実施する第三者機関と提携して、調査に協力する合計7000台以上ものBEVに、独自のOBDコネクターを装着。SOC100%から10%までを実際に運転し、その際に消費した電力量をリアルタイムでサーバーに記録。そこから外気温や走行シチュエーションによる影響を考慮したうえでバッテリー使用容量を判定。その車種ごとの新車時におけるバッテリー容量と走行距離から、それぞれのバッテリー劣化率を計算するという方法です。

まず、バッテリー劣化の調査を理解する上で押さえておくべき前提知識が、グロス容量とネット容量という2種類のバッテリー容量が存在するという点です。まずグロス容量は紛れもなくそのバッテリーパックのバッテリー容量を指します。他方で、過充電や過放電によるバッテリーへのダメージを避けるためなどを理由に、自動車メーカーはユーザーが実際に使用可能なバッテリー容量を意図的に制限。そのバッファーを除いた容量がネット容量となります。たとえば日産アリアでは91kWhのグロス容量を搭載しているものの、実際に使用可能なネット容量は87kWhに制限されています。

ちなみにその公称ネット容量と、車載ディスプレイ上に表示される100%から0%の使用可能電力量が一部車種で異なるという点も注意するべき点です。たとえばアリアの場合、ディスプレイ上で充電残量が0%と表示されたとしても、使用可能なネット容量はまだ4.5kWh程度(航続距離換算で20km以上に相当)残っています。

また、一部メーカーではバッファー容量を一定の走行距離などが経過すると一部開放したり、OTAアップデートによってバッファー容量を一部開放するなどの措置を行っています。いずれにしても、一般ユーザーがバッテリーの劣化状況を正確に判断することは難しいという点は押さえておくべきでしょう。

そして、この7000台以上の30kWh以上のバッテリーを搭載するBEVを調査した結果を示したグラフを見てみると、 ・約10万km走行した車両のバッテリー残存率は90%をわずかに超えている ・約20万km走行した車両のバッテリー残存率は88%程度 ・約30万km走行した車両のバッテリー残存率は87%程度で推移

欧州市場では概ね20万km以上走行させた車両は廃車となり、アメリカ市場でも約30万kmが廃車までのボーダーラインであることから、廃車までのバッテリー劣化率は約10%前半程度という調査結果が判明したわけです。

じつはテスラもモデル3とモデルYのロングレンジグレードにおけるバッテリー劣化率のデータを公開しています。20万km走行時点で80%後半程度、30万km走行時点でも85%程度を維持しています。

また、押さえておくべきバッテリー劣化の特徴のひとつに、新品状態からの劣化スピードが比較的早いという点が挙げられます。新品時ではバッテリーの負極側に形成されるSEI被膜が安定しておらず、そのSEI被膜の形成段階でリチウムが析出、その分だけエネルギー貯蔵量が減ってしまいます。これは経年劣化でも同様に発生していくものの、初期の形成時と比較すると影響は少なく、よってバッテリーの劣化度合いも初期劣化が終わると落ち着きます。バッテリー劣化のグラフでも初期の劣化スピードから徐々に劣化スピードが緩やかになっている様子が見て取れます。

急速充電の多用は避けるべき

しかしながら、調査結果のなかで気になる点が2点存在します。1点目として、その7000台以上のBEVのモデル別内訳という観点です。このなかにバッテリー劣化のコントロールが優れているといわれるテスラ車がどれだけ含まれていたのか。さらに三元系やLFPといったバッテリーの種類による違いはあったのかなど、より詳細な電池劣化率に関するデータ分析が必要かと思います。

また、ごく一部の標準偏差から大きく外れてしまっている、バッテリー劣化の激しい車両の詳細も重要でしょう。工業製品であることから100%はなく、どうしてもまれにバッテリー劣化が激しい「不良車両」が一部存在してしまうわけです。この車両がなぜこれほどまでにバッテリーが劣化してしまったのかは原因を調査する価値があると思います。

その一方で、自動車メーカー各社は最低でも8年16万kmまでは、バッテリー残存率70%を保証するというバッテリー保証を付帯しているのでバッテリー交換が可能となります。

そのうえで、レクサスやメルセデス・ベンツ、テスラなどは、業界標準となる8年16万kmを上まわるバッテリー保証を提供。いずれにしても、保証内容も含めてほとんどの場合において、バッテリー不良の心配をする必要がないといえるのではないでしょうか?

バッテリー劣化を最小化するために我々ユーザーができることとして、 ・駐車時において、バッテリー温度を25度以下に押さえ、充電残量を10%から50%の間で保管(とくに充電残量80%以上で長期保管するのはバッテリーへの負担増) ・急速充電の多用、急加速急減速の乱用を控える

以上2点を心がけるといいでしょう。

とくに2点目の理由を理解するうえで押さえたいのがCレートという概念です。これは、バッテリー容量に対してバッテリーに対する入出力がどれほど大きいのかを示す指標です。たとえばアリアのバッテリー容量は91kWhであるのに対して、最大充電対応出力は130kW。よって、充電における最大充電Cレートは約1.43Cであると算出します。また、アリアの最高出力は320kWであることから、瞬間的に対応可能な最大放電Cレートは3.5C程度であると算出します。

ちなみに、中国Zeekrが発売中のGoldenバッテリーを搭載するZeekr 007の場合、最大充電Cレートは5.5Cに到達。さらに、シャオミが2025年3月に発売するSU7 Ultraでは、最大放電Cレートは16Cに到達します。

そして、Cレートが高いということは、その分バッテリーに負荷をかけていることを意味し、急激なバッテリー温度の上昇にも影響してしまうことから、Cレートの高い急速充電や急加速は控えたほうがいいということになるのです。

とはいうものの、急速充電と急加速におけるCレートを比較すると、急加速のほうが瞬間的なCレートは何倍にも達しています。よって、自宅に設置した普通充電を使用しながら、1~2カ月に1回の旅行において急速充電を使用するという程度の運用方法であれば、バッテリーの劣化に大きな影響を与えることはありません。

むしろCレートのより高い急加速、およびヒョンデIONIQ5 Nやポルシェ・タイカンなどのハイパフォーマンスEVに採用される強力な回生ブレーキの多用のほうが負荷が大きいという点も忘れてはならないのです。

ちなみに、テスラやBYDはLFPバッテリー搭載車両に対して充電残量100%状態を保つようにアナウンスしています。充電残量80%以上での車両保管の非推奨と相反するように見えますが、結論としてはLFPの場合充電残量100%を優先するべきです。

というのもLFPは耐久性が高く、たとえばBYDのBladeバッテリーの場合、充放電サイクルは3000回以上に対応しており、これは走行距離にして100万kmというレベルです。

他方でLFPの弱点は、充電残量の違いによる電圧差が低いことによって、厳密な充電残量把握が難しいという点です。EVのバッテリーマネージメントシステムが充電残量を把握する際、その電池セルごとの電圧差から充電残量を予測するため、定期的に充電残量を100%にしてリセットをかけないと、正確な充電残量把握に悪影響が出る可能性があるのです。

いずれにしても、今回の第三者機関によるVの大規模なバッテリー劣化の調査結果から、すでにEVを購入する際の大きな懸念点ともなっていたバッテリー劣化問題は、一般ユーザーが大きく心配する必要のないレベルにまで進歩しているといえるのかもしれません。

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みんなのコメント

78件
  • you********
    >駐車時において、バッテリー温度を25度以下に押さえ、充電残量を10%から50%の間で保管(とくに充電残量80%以上で長期保管するのはバッテリーへの負担増)

    25℃なんか夏場は夜でも余裕で超えるし、10から50%で保管っていざ乗ろうとしたらカタログの半分しか走れないってことじゃん
    不便にもほどがある
  • ata********
    じゃ保証して
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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