2024年のSUPER GTシリーズ最終戦が12月7日(土)、8日(日)に三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで行なわれた。
台風の影響で12月に延期されていた第5戦鈴鹿GT350kmレースが、この12月にスライドし、レース距離は300kmに削減されて開催。またサクセスウエイトは最終戦に位置付けられたため、0kgとなり、SUBARU BRZ GT300は1305kgの車重で参戦した。
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またエントラントの参加条件ではタイヤの持ち込みセット数が、300kmレースでは4セット、350kmレースは5セット、3時間レースは6セットとなっているが、第5戦はもともと350kmレースだったため、そのままスライドし5セットの持ち込みが可能となった。
そのため2タイプのタイヤを持ち込むことが可能になり、経験したこのとのない冬のレースにとっては効果的なルール適用になったはずだ。BRZ GT300もソフト、ハードの2タイプを持ち込み公式練習でマッチングを見ることになった。
ブレーキシステムはすべての機器類チェックを終え刷新されたまた2戦続けてブレーキトラブルを発生したことに対しては、徹底的な原因究明を行なったということで、部品はすべて交換されている。それはブレーキ・ディスクやキャリパーだけなく、ABSセンサーなどのセンサー類、冷却の見直しなども含めて刷新されている。
公式練習は全体でトップタイム
公式練習では山内英輝がステアリングを握り、2タイプのタイヤ比較を行ないながらセットアップをしていく。山内は走り出してすぐにマシンバランスが良いことを伝え、順調にタイム計測を始めた。すると、全体トップを連発し、ダンロップタイヤの低温時のグリップの良さも確認できた。
また井口卓人に交代しマシンチェックを行なったが、井口もバランスが良いことを確認。ブレーキに対する不安もないことが伝えられた。
午後から始まるQ1予選は、これまでGT300から行なっていたが、今回はGT500からの予選アタックになった。これはQ2予選の終了時間が夕方になり気温が下がることが予想され、タイヤのグリップが厳しくなることを想定しての入れ替えのようだ。
Q1を走る井口にとっては先にGT500が走行しているため、路面状況はよくなりグリップ力が上がる傾向の中でアタックになり、好都合と言えそうだ。もちろん全車に共通で言えることだが、コーナリングマシンの特性を活かすにはコーナリンググリップが大切だからだ。
幻のコースレコード
そうした期待に応え、井口は予選開始早々にトップタイムをマークする。予選の前、井口は「Q1もQ2もトップを取り、2位以下に圧倒的な差をつけてポールを獲りたい」と話していたように、マシンコンディションを含め、手応えを感じていたようだ。井口のタイムはコースレコードに0.016秒届かないものの、抜群の速さを見せていた。ところが88と87号車のランボルギーニが、その井口のタイムを上回り3位でQ1を終えることになった。
Q2は山内が当然ポールポジションを狙うが、ターゲットタイムは54秒台と自身で決めた。山内もコースインをして3ラップ目にはアタックを開始し、1分55秒249でコースレコードを更新、トップタイムをマーク。しかし、山内はもう1周アタックを継続し、54秒台を目指す。セクター1、2ではタイムを削り54秒台が見えていた。そして終盤130Rを抜けると、なんと先行していたマシンにレコードラインを塞がれ、山内は咄嗟に追突を避けるためコースオフ。幸い接触もなくマシンダメージもなかったが、アタックはここで終了。まぼろしの1分54秒台アタックとなってしまった。*#30にはペナルティで5グリッド降格
BRZ GT300の予選はソフトタイプのタイヤを装着していた。特徴が見えたのはウォームアップの早さだ。井口も山内もコースインして3ラップ目にはアタックができている。一方ブリヂストンやヨコハマ勢はウォームアップに時間がかかっている。さらに路面ができてくるまでコースインしないチームもあるほどで、低温に対するアドバンテージはあった様子だ。ただ、ロングディスタンスでの耐久性は不明瞭であり、決勝を待たなければならなかった。予選結果はQ1とQ2の合算となり、BRZ GT300は予選2位を獲得した。
決勝レース
決勝では井口がスタートドライバーとなり、ポールポジション#88のランボルギーニを追いかける。後方は#2のGR86以下をどこまで引き離せるかになる。タイヤの温まりの早いダンロップの特徴を活かした序盤になると予想できた。
レース前ウォームアップ走行で右リヤタイヤがバースト。スタートまでにフェンダーも交換されたところがスタートしてみると#88を追い詰めるどころか、離れていくのだ。予選で使ったタイヤを全車が装着しているが、一度使用したタイヤは温まりが早いのだろうか、#2のブリヂストンも序盤から井口に襲いかかっている。スタートを見る限りタイヤのアドバンテージはなかったのだ。
10周を超えたあたりで早くも井口からリヤタイヤのグリップが薄くなっている、と無線で伝えられた。井口はポジションキープに作戦を変えるものの#2の猛烈な追い上げを防ぐことはできず、3位に後退した。抜かれた#2に追いすがろうとするものの、逆にどんどん離れていった。
山内劇場が幕を開けるのか期待される3位のまま井口から山内に代わり、タイヤは4本交換しハードタイプを装着した。ソフトタイプは初期のグリップは高いもののタレが早いこともわかったことへの対応だろう。
フルサービルを受けた山内は9番手でコースに戻る(モニター上では12位)。先行するマシンはタイヤの無交換かリヤ2本交換というチームがおり、ブリヂストンは無交換が多い。ニュータイヤを履く山内はピットストップで失ったタイムをコース上で取り戻すことになる。
オートポリスで見せた17台をごぼう抜きにしたレースの再現を期待した。しかし、ピットアウトしたBRZ GT300の現在地はトップ#88と40秒以上の差がついてしまい視界にいない。目の前の#777がターゲットとなり、1台ずつ追い抜くことが狙いになる。
コースで取り戻せるか
山内は上位チームより速いタイムで周回をし、先行車との間を詰めていく。同じダンロップユーザーの#777も山内と似た展開で、ともに好タイムを連発していた。そして2台を抜き7位まで順位を戻したが、徐々に山内のタイムが落ち着き始めた。
やはりタイヤのグリップが下がってきている様子で、残り10ラップほどの時点で山内の猛追は影を潜め、後続マシンとのギャップに目がいく展開に変わってしまった。幸い30秒近いリードがあったため7位はキープし、そのままチェッカーを受けた。
ゴールしたとき山内はトップとの差を21秒まで縮めており、20秒近くをコース上で取り戻したことになる。だが、タイヤ無交換チームにニュータイヤで挑んだ山内が追いつけないのは悔しいだろう。こうした結果は次世代タイヤ開発に期待したい。
ニューマシンへの期待
こうしてBRZ GT300の2024年シーズンは終了した。チームランキング17位、ドライバーランキング16位という結果だ。2021年チャンピオンを取った時のマシン重量より100kg重い状態が今シーズンのスタート地点だった。そこからサクセスウエイトが加算されるシーズンであり、ブレーキ、タイヤへの荷重、トップスピード、立ち上がり加速など、すべてにおいて負担が大きかった。そのためのトラブルと言えるものもきっとあったはずだ。
トラックエンジニアの井上氏にタイヤ、マシンバランスの報告をする井口卓人だが、小澤総監督は「そうした条件を踏まえて勝てるマシンに仕上げるのが我々の役目だ」という。エンジニアリングに絶対はない、とよく言うが、個人的には「限界はある」と感じたシーズンだった。
さて、2025年はシャシーやボディが一新される予定という情報がある。さらなる進化を遂げるBRZ GT300に期待して来シーズンを待ちたい。
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スバル/STI Motorsport通信
SUBARU Motor Sport Magazine 公式サイト
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きっと来年は速いBRZが観れると期待しています。