不自然? 主要車種の相次ぐ撤退
執筆:Chika Sakikawa(先川知香)
【画像】ホンダらしさが宿る【新型シビックと売れ筋Nボックス/ヴェゼルを比べる】 全200枚
編集:Taro Ueno(上野太朗)
ホンダが2017年の第2四半期決算説明会で明言した「電動化など新技術への生産対応のため、狭山と寄居の完成車工場を、2021年度完了を目処に最新の生産技術が備わる寄居完成車工場に集約する」という計画が順調に進められており、狭山工場で生産されている「オデッセイ」、「レジェンド」、「クラリティ」の生産終了が発表された。
たしかに、この3車種の販売台数低迷は否めないところではあるが、ホンダブランドのアイデンティティともいえる主要車種の相次ぐ販売終了に、不安を感じている人も多いのではないだろうか。
生産を他の工場へ移管するのではなく、生産終了という判断が下された理由は、狭山工場の閉鎖による現在過剰になっている生産体制や車種構成の見直しといわれている。
しかしながら、クラリティは燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド(PHEV)を同一のプラットフォームで実現するという、ホンダの将来的な電動車の在り方を提案したモデル。
2040年までに新車で販売するすべてのモデルをEVとFCVにするというホンダのカーボンニュートラルに向けた目標の具現化と言っても過言ではない存在ではなかったのだろうか。
そしてオデッセイは、2020年11月にマイナーチェンジがおこなわれたばかりだ。
レジェンドに至っては、2021年3月に市販モデルとしては世界初のレベル3自動運転「ホンダ・センシング・エリート」搭載モデルを100台限定でリース販売することを発表するなど、大きな話題を呼んだばかりである。
2017年以前から計画されていたであろう、狭山工場の閉鎖を理由に、これらモデルの生産終了を決めるには、些か不自然な流れに感じられる。
狭山工場閉鎖だけが原因ではない
もちろん実質的な販売台数の低下や、誰も予想し得なかったCOVID-19などの影響も考えられるが、この3車種の生産終了を決断せざるを得なくなった最大の問題は、いったいどこにあるのだろうか。
この疑問について、ホンダ広報部は次のように回答した。
「これらのモデルの販売終了は、市場環境の変化を鑑みた、お客さまのニーズに合ったモデルへの集約の一環となっております」
「なお、レジェンド(ホンダ・センシング・エリート)に関しては、多様なご意見を収集するため100台の限定生産かつリースでの販売でご案内しており、その生産を確実に終えるタイミングを見据えての決定としております」
ホンダは、2050年までにホンダが関わるすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルを実現するための過程として、北米地域において2040年までにEV/FCVの四輪販売比率100%を目指すとしている。
先進国全体でのEV、FCVの販売比率を2030年に40%、2035年には80%、そして2040年には、グローバルで100%という計画を立てている。
そして日本市場はというと、EV、FCVの販売比率を2030年に20%、2035年に80%、2040年に100%を目指すという。
2030年にはハイブリッドを含めた100%電動車とすることを目標に掲げ、2024年には軽自動車のEVモデルを投入するなど、ハイブリッド/EVによる軽自動車の電動化を進めていくことも明らかにしている。
これら3モデルの販売終了は、このカーボンニュートラル実現のためのモデル集約の一環であり、狭山工場閉鎖などの理由はそのきっかけに過ぎなかったようだ。
また、クラリティの生産中止はホンダのラインナップからFCVが姿を消すことを意味するが、それに関しても、「ホンダはFCVを究極のゼロエミッション技術としてとらえており、クラリティ・フューエル・セルの生産終了後も、その開発は引き続き継続していきます」との回答を得ることができた。
日本は見捨てられた? 失望の声も……
では、ホンダのラインナップはどのようになっていくのだろうか。
ホンダの自動車メーカーとしてのイメージをつかさどってきたモデル達の生産終了が次々に発表され、現在のホンダの商品ラインナップは、稼ぎ頭でもあるNボックスやフィット、ヴェゼルといったコンパクトモデルがメインとなっている。
一方で、北米ではアキュラブランドで「インテグラ」の復活が発表されたことなどを考えると、グローバル市場と日本市場は切り離し、国内ではNボックスや、フィットシリーズとプラットフォームを共用するヴェゼルやフリードなどをメインのラインナップとして、電動化ラインナップを形成していく考えなのだろうか。
販売面でみると、企業としてはそれも1つの正解といえるだろう。
そんな、ホンダという企業に失望を感じているファンも多いと思われる。
ホンダの未来 こだわり捨てた訳ではない
しかしホンダは、そんな明らかにEVシフトに向けた方向性での車種構成の見直しを行っている最中である2021年8月に、11代目「シビック」を発表した。
しかも、新型シビックに搭載される動力は、1.5L VTECターボとなっているのである。
ここに来て、走りを楽しめるガソリンモデルがラインナップに追加され、さらにタイプRまで導入するというのだ。
新型シビックの電動化については、2022年にe:HEVモデルを導入するとのことだが、重要なのは電動化と実益重視のコンパクトモデルへの集約一辺倒に見えたホンダのラインナップに、Cセグメントのガソリンエンジン搭載モデルが追加されたことである。
ホンダは日本市場を、一体どのように捉えているのだろうか。
ホンダ広報部に聞いてみたところ、次のような回答が返ってきた。
「今後のラインナップ計画や戦略はお答えできませんが、生産終了となるモデルについてはセグメント・カテゴリーの近い他機種で補完していきます」
「また、日本のお客さまのニーズが高いカテゴリーに、ホンダ・コネクト、ホンダ・センシング、e:HEVといったホンダならではの新しい価値が詰まった商品を投入していくことで、魅力あるラインナップを維持していきたいと考えています」
カーボンニュートラルの実現が世界的な目標となっている未来において、ガソリンエンジン搭載モデルの消滅は避けられないかもしれない。
しかし、脱エンジンとホンダらしさが失われることは、決してイコールではないのだ。
このタイミングで、1.5L VTECターボ搭載の11代目「シビック」発売を決めたホンダの決断が、その事実に気付かせてくれた。
エンジンの分野で驚くべき製品を開発し続けてきたホンダが脱エンジンを掲げ、車種ラインナップの大規模なリストラを経て、どんなニューモデルを発表していくのか、新生ホンダに期待したいところである。
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みんなのコメント
ポリシーを捨ててコロッとエンジンを捨てちゃうホンダ。
狂信者は「先見性」と美化してしまうところが空しい。