新車販売に異変
昨今、新車の購入を検討している人が必ず意識しなければならないのが「納期」です。
かつて国産車であれば、よほど特殊なモデルや仕様でない限りは在庫車が用意されているため、2週間程度で納車されるケースがほとんどでした。また、工場注文を行ったとしても、納期はせいぜい2~3か月程度というのが一般的でした。
倍率は20倍! 新型RXはほとんどが抽選販売という事実。500台限定の非レクサスオーナー向けモデルも
しかし、昨今ではどんなモデルでも在庫車はほとんど存在せず、一般的なモデルであっても3~6か月程度、人気のモデルであれば1年以上の納期というケースも珍しくありません。
トヨタ「ランドクルーザー300」などグローバルで人気の車種に至っては、受注停止に追い込まれたことがニュースとなりました。
>>ランドクルーザー300の価格・スペック詳細はこちら
また、ホンダ「ZR-V」のようにディーラーに展示車が並んでいても発売は4月というケースも発生しています。
>>ホンダ「ZR-V」の発売は4月21日。2.0Lハイブリッドと1.5LVTECターボを設定、約295万円から
>>ZR-Vの価格・スペック詳細はこちら
新車の納期が長いのはなぜ?
新車の納期が長期化する大きな原因が半導体不足です。「産業のコメ」と呼ばれている半導体は、ほとんどすべての電子機器に搭載されており、クルマも例外ではありません。
そもそもの発端は、新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延したことによって、テレワークを行うためのPCや、自宅での時間を快適に過ごすためのゲーム機などといった電子製品の需要が増えたことにあります。
半導体メーカーの多くは、品質管理の厳しい自動車用半導体よりも、PCやゲーム機用半導体の製造へとシフトしたために、自動車用の半導体が不足することとなりました。
加えて、新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)によって、中国各地の部品工場の稼働が停止したことや、ロシアによるウクライナ侵攻によって、ウクライナのワイヤーハーネス工場の生産量が落ち込んだことなども合わさり、部品不足によってクルマの生産が滞りました。
その一方で、コロナ禍から復活するなかで新車の需要自体は回復を見せており、需要に対して供給が追いつかないことが、新車の長納期化の大きな要因となっています。
最近では、トヨタ「GRカローラ」やレクサス「RX」など、実質抽選販売のみという形式を取っているクルマも珍しくありません。
>>GRカローラの抽選申込がスタート。RZは500台、モリゾウエディションは70台限定、525万円から
>>GRカローラの価格・スペック詳細はこちら
>>倍率は20倍! 新型RXはほとんどが抽選販売という事実。500台限定の非レクサスオーナー向けモデルも
>>RXの価格・スペック詳細はこちら
改善の兆しも即納に戻るのはまだ先
ただ、販売現場の話を聞くと、最近ではかつてに比べて納期も短くなっている傾向が見られ、予定より早く納車されるユーザーも出はじめていると言います。
これは、半導体をはじめとする部品不足が落ち着きを見せてきたことや、各自動車メーカーによる生産調整が進んだ結果と考えられています。
では、このまま新車の納期はどんどん短縮され、ゆくゆくはかつてのように「即納」されることが当たり前になっていくのでしょうか?
この点については、多くの専門家がさまざまな予測を立てていますが、少なくとも今後2~3年の間は、多少の短縮化はあっても、新車の納期が劇的に改善することはないと見られています。
その理由は、そもそも半導体を製造できるメーカーが世界にほとんどないことや、半導体不足をうけて新設された工場が本格的に稼働するまでには少なくとも2年程度必要であることなどにあります。
>>新型セレナの登場で役者が揃ったMクラスミニバン。それぞれの納期は?
最短で手に入れるには早くオーダーするしかない
では、このような状況のなかで新車を購入する場合、どうするのが得策なのでしょうか?
もちろん、個々人の状況や購入するモデルによっても異なりますが、もし、いまクルマが必要であれば、一刻も早くオーダーすることをおすすめします。
例えば、小さな子どもが複数いるファミリーの場合、トヨタ「シエンタ」のようなコンパクトミニバンが便利であることは言うまでもありません。
しかし、2022年12月現在、シエンタの人気グレード「ハイブリッド Z」を購入しようとすると、早くても2023年10月以降の納車になると案内されます。グレードやオプションを調整すればもう少し早く納車される可能性もあると言いますが、それでも2023年の春以降になる見込みです。
>>シエンタの価格・スペック詳細はこちら
>>シエンタのグレード詳細はこちら
趣味のクルマであれば気長に待つという選択肢もありますが、日常の移動に必要な実用車の場合、それほど悠長なことは言っていられません。
今後、新車の納期が短縮される可能性は否定できませんが、状況が変わらない可能性もあります。さらに言えば、現在より状況が悪化する可能性もゼロではありません。
もし、シエンタを新車で購入することにこだわった場合、最短で手に入れるには一刻も早くオーダーする以外ありません。これは、現在のクルマ選びの鉄則です。
>>販売絶好調「シエンタ」のベストグレードはハイブリッドのG! 人気の装備や価格をチェックした
“中古車は安い”は過去の話
新車である必要はないので、中古車を検討するという選択肢もあります。実際、子どもが汚してしまったり、子どもが増えたりすることを考えると、その時々で適当な中古車を購入するというユーザーは少なくありません。
しかし、昨今では中古車の相場も全体的に高騰しており、新車に近いコンディションのものであれば、新車と同等かそれ以上の価格で販売されていることも珍しくありません。
かつて、中古車と言えば「新車に比べて安いこと」が大きな魅力でしたが、昨今では「新車に比べて早く手に入る」ことがメリットとなっています。そしてそれは、中古車だからといって決して安くはないということも意味しています。
実際、carview!の中古車ページでシエンタの「ハイブリッドZ」を見ると、ほとんどが300万円~350万円程度の価格となっています。新車の「ハイブリッドZ」は287万円~であるため、オプションなどを考慮しても、新車に比べて安いということはなさそうです。
つまり、新型シエンタを一刻も早く手に入れる必要がある人以外、わざわざ中古車を選ぶメリットはほとんどないと言えそうです。
また、現在ではやや落ち着きを取り戻したとは言え、一部の車種の価格が上がることで過去モデルやライバルモデルの中古車価格も全体的に上がるのが中古車マーケットの特性です。
>>シエンタの中古車相場はこちら
>>フリードの中古車相場はこちら
人気車種は見切り発車でもほとんど損はない
このように考えると、特別な事情がない限りは、新車を検討するのがベターなようです。
とはいえ、納車までにおよそ1年も待たなければならないのであれば、その間により魅力的なモデルが登場したり、あるいはそもそも購入する気がなくなってしまう可能性もあるかもしれません。
しかし、上で述べたように、中古車相場が高騰しているということは、それにともない買取(下取)価格も上昇していると見ることができます。つまり、もし納車された直後に別のモデルに乗り換えたくなった場合でも、すぐに買取もしくは下取に出すことで、一定の金額を得ることができます。
限られたケースではありますが、トヨタ「アルファード」や「ランドクルーザープラド」のような超人気モデルの場合、購入金額以上で買取が行われることもあると言います。
>>アルファードのリセール価格はこちら
>>ランドクルーザープラドのリセール価格はこちら
そのほか、トヨタ「ノア」や「ヴォクシー」などのミニバンや、「ハリアー」や「RAV4」、「ヤリスクロス」などのSUVもリセールバリューの高い人気モデルであるため、これらのモデルを検討している人は、積極的にオーダーをしても問題ないでしょう。
>>ノアのリセール価格はこちら
>>ヴォクシーのリセール価格はこちら
>>ハリアーのリセール価格はこちら
>>RAV4のリセール価格はこちら
>>ヤリスクロスのリセール価格はこちら
また、納車される前に購入意思がなくなってしまった場合であっても、ほとんどの場合はすぐに次のユーザーが見つかるため、問題なくキャンセルできるケースが多いようです。ただし、これはあくまで登録前(ナンバーが発行される前)の話であり、タイミングによってはトラブルになる可能性もあるため、販売店の担当者と丁寧にコミュニケーションを取ることが重要です。
これらを総合すると、人気のミニバンやSUVなど、安定した需要があるモデルの場合、ある程度購入意思が固まったら、すぐにオーダーすることがポイントです。
万が一、その後に事情が変わったとしても、リセールバリューの高いモデルを選んでいれば、十分以上の価格での買取(下取)が期待できるため、大きく損をすることはないと言えそうです。
>>シエンタのリセール価格はこちら
文:ピーコックブルー
写真:トヨタ自動車、本田技研工業
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