自動車の世界で「力の象徴」といえばマフラーだろう。近頃は排ガス規制やら温暖化やらで肩身も狭いが、シビックTYPE RやGRカローラの後ろ姿を見ると、やはりマフラーの存在感はデカイ。
そんなマフラーの究極美を競ってきたのが、ご存じスーパーカーの世界だ。自らの力を誇示するかのように各車がさまざまな手法を試み、左右分割や多管式など、息をのむようなデザインが数多く生まれた。
12本出しマフラーって正気かよ!! ステータスは火を噴くこと!? スーパーカーのマフラーの今後とは
そこで、スーパーカーのマフラーはどんな進化を遂げてきたのか。その美しくも過激な歴史を、大乗フェラーリ教開祖でもある庶民派スーパーカー評論家、清水草一氏に語ってもらった!
文/清水草一、写真/清水草一、池之平昌信、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェ、レクサス、パガーニ、マクラーレン、ベストカーWeb編集部
2タイプが存在したカウンタックの12本出し
これぞ伝説のランボルギーニ・カウンタックの12本出しマフラー!
古典的なクルマ好き、スーパーカー好きにとって、排気管は極めて重要なアイテムだ。排気管は排気を噴き出すわけで、場合によっては火を噴いたりもする。お尻から火を噴く乗り物=ジェット機やロケット。スピードが絶対善だった時代、クルマの排気管の形状や本数は、ステイタスそのものだった。
スーパーカーブーム当時は、排気管の位置は「リヤバンパー下側の左右」が定番で、勝負は主に本数だった。
最低限、左右1本づつの2本出し。できれば左右2本づつの4本。基本的に多ければ多いほど強そうに見えるので、最強は、伝説の「マフラー12本出しカウンタック」である。12気筒だから12本出し! これ以上はこの世にない! という究極のマフラーだ。
カウンタックの12本出しには2種類あり、ひとつは、6本づつ上下2段に並べたタイプ。これは、スーパーカーブーム当時日本に実在し、スーパーカーショーで展示された。
スーパーカーライターの高桑氏秀典氏はこう語る。
「このクルマを誰が造ったのか、僕もまだちびっ子だったので、分からないのですが(笑)、当時の写真を見ると、ナンバープレートに『japan auto』と書いてあります。1978年4月30日に鈴鹿サーキットで開催された『全日本スーパーカー選手権大会』に参加していたとのウワサもあります。当時、ショップかオーナーさんが自主製作したのではないでしょうか」
もうひとつは、映画『キャノンボールラン』のオープニングに登場したカウンタックLP400Sで、こちらは12本のマフラーが1列に並べられていた(映画を見てもよくわからないが)。
どっちにせよ、まさに狂気というか、究極のバカ丸出しなマフラーで、現在でも世界中のマニアに愛されている。
本数や位置よりも「音質」「音量」「火を吹く」
かつて筆者が所有したフェラーリ458イタリア(撮影/池之平昌信)
マフラーが左右分割だったのは、スーパーカーがV8やV12エンジンを搭載していたためだ。各バンクから排気管を後方に延ばすと、自然と左右分割出しになる。
その常識を破ったのが、フェラーリF40の「中央3本出し」だった。
カウンタックの12本出しマフラーも、中央に並べられてはいたが、あまりにも幅が広いので、中央というより「車幅いっぱい近く」のイメージ。対するF40は、明確に中央出しで、これは従来の常識を引っ繰り返すインパクトがあった。
構造的には、V8エンジンの左右バンクから出た排気は左右1本づつにまとめられ、エンジンルーム最後部に横置きされた円筒形の消音器に導かれ、そこから3本に分割されていた。
F40の登場から約20年後、フェラーリは458イタリアで、中央3本出しマフラーを復活させた。3本のマフラーのうち、通常の排気に使われるのは中央の1本だけで、左右の2本はアクセルを深く踏み込んだ時だけバルブが開き、排気が通過する。それによって、サウンドもスポーティになるという仕掛けだ。私がかつて458イタリアを所有した時は、「あのF40と同じ中央3本出し!」という事実に打ち震えたものである。その後、レクサスLFAも中央の3本出しを採用した。
このように、スーパーカーの排気管は、本数の多さとその位置がキモなのだが、なにをどう頑張っても、「カウンタック12本出し」に勝てるマシンが出るはずもなく、多くのスーパーカー及びスーパーカー用の後付けマフラーメーカーは、本数や位置よりも「音質」「音量」「火を吹く」の3点で勝負するようになった。
「マフラーは上に」がスーパーカーのトレンドになるか?
上方排気の嚆矢、ポルシェ918スパイダー。ルーフの直後に排気口が見える
その逼塞状態を打ち破ったのが、「上方排気」である。
2010年、ポルシェは、カレラGTの後継モデルとして、918スパイダーを発表し、その後限定で市販化された。このマシンは、3.4リッターV8エンジンの外側から、エンジンフード直上斜めに排気するという、市販車(ほぼレーシングカーですが)として画期的な構造を持っていた。しかも、排気管出口の位置は非常に前寄り。あらゆる意味でこれまでの常識を打ち破っていた。
レーシングカーでは、90年代のF1マシンなど、以前から上方排気は存在した。上方に排気することによってダウンフォースを得るという実利を狙ってのものだったが、本来下のほうにあるものを上に、より人間の視点の近くに持ってくるのは、暴走族の竹ヤリ的マフラー的な意味で、確実に威嚇効果がある。スーパーカーオーナーにとっても、憧れの取り回し。ポルシェがそれを実現したのは、「ついにこの日が来たか」と感慨深いものがあった。
だだ、ポルシェ918の上方排気は、見た目は地味。後ろのクルマからはよく見えないし、威圧効果は低い。そもそもポルシェは、威圧のためにこうしたわけではないが……。
この上方排気を、現在絶賛展開中なのが、マクラーレンである。
マクラーレンは、「セナ」「720S」「600LT」で上方排気を採用。上方ながら位置的にはボディ後端に近いため、後ろのクルマからも視認することができ、威嚇効果は高い。600LTでは、上に向いた2つの排気口から火を噴く様子もキャッチされている。
ランボルギーニは、アヴェンタドールの後継モデル(?)で、排気口を水平方向に向けたまま、テールの最も高い位置に置いた様子がスクープされている。フェラーリも、296GTBの排気口は、テール中央のかなり高い位置にある。
もはや通常の排気口では、どうあがいても、それほどのインパクトは出せない。今後は「上のほうの排気口」がスーパーカーのトレンドになり、いろいろなバリエーションが展開されるのかもしれない。すべては、内燃エンジンが積まれている間の話だが……。
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みんなのコメント
アルファードで6本出し風のエアロ
穴は全部塞がってて、右端から軽自動車みたいにちょこんと本物のマフラー出てるの見た時は笑った