この@DIMEでは、すでに2024年大注目のBEV(電気自動車)、サスティナブルとボルボ最先端のテクノロジー&先進性が凝縮されたボルボでもっともコンパクトかつ、BEV専用プラットフォームを使うSUV、シングルモーター、FR(後輪)駆動のボルボEX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGEの試乗記をお届けしている。が、試乗したのはオプションの20インチタイヤ装着車だったのだ。
EX30 20インチタイヤ装着車
気になる中身は?ソニー・ホンダモビリティが発表した電気自動車「AFEELA」から見えてきたこと
そこでは、「オプションのグッドイヤーSUV用20インチタイヤ&ホイールが奢られていることもあり、良路ではもちろんスムーズでフラットだが、荒れた路面や段差などではやや硬めのタッチを伝えてくる。速度を上げていくと、BEVならではのパワーユニットからのノイズのなさに対して、20インチタイヤによるロードノイズが目立ち始める」という印象だった。もし、標準装着の19インチタイヤだと、その点が改善されるのではないか・・・という期待があったのも事実。
オプションの20インチタイヤ
19インチタイヤ装着車での試乗のチャンス到来
今回、ボルボEX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGEのいわば素の状態、19インチタイヤ装着車の試乗を行うことができたので、改めて報告したい。果たして、乗り心地やロードノイズの面はどうだったのだろうか・・・。
試乗記をお届けする前に、ボルボEX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGEの概要を説明すると、ボディサイズは日本の路上や駐車場でも扱いやすい全長4235×全幅1835×全高1550mm、ホイールベース2650mm。新世代ボルボが日本で一気にブレークしたきっかけとなった、2018-2019年 日本カー・オブ・ザ・イヤーを、国産強豪車を退けて受賞したXC40が全長4440×全幅1875×全高1650mm、ホイールベース2700mmだから、ひとまわりコンパクトであると同時に、車幅がより扱いやすいサイズに収まり(XC40比-40mm)、そして最小回転半径が5.4mと、取り回しの点でもコンパクトカーや5ナンバーサイズのクルマから乗り換えやすく、なおかつ多くの立体駐車場への入庫が容易な全高(全高1550mm制限の立体駐車場OK)を持ち合わせていることになる。国産コンパクトSUVではレクサスLBXに近いサイズとも言えるのだ。
EX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGEは動力性能、一充電走行可能距離も文句なしである。バッテリー容量69kWh、リヤに搭載されるモーター最高出力272PS、最大トルク35.0kg-mという強力なスペックを備え、SUVのBEVとしては比較的軽量な1790kgのボディ(XC40のシングルモーターより240kg軽い)を加速させるのには余裕たっぷりだ。何しろ0-100km/h加速はスポツーカー並みの5.3秒。BEV比較ではテスラのモデル3が6.1秒、XC40のシングルモーターと日産リーフが7.3秒ということからも、その実力が窺い知れるだろう。そして気になる一充電走行距離はカタログ値で560kmとされる。エアコンなどを使ったとしても、例えば東京~軽井沢間、往復約380kmを無充電で走り切れる航続距離と言えそうだ(充電状態や走り方による)。
なお、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準の前席頭上スペースは230mm、後席頭上に150mm、同膝周り空間に120mmとなる。さすがにコンパクトなボディサイズだけに、後席膝周り空間が広々・・・というわけにはいかないが、レクサスLBXと同等であることはお伝えしておきたい。ただし、後席に着座した際に、つま先が前席下に入るか、入らないかでは、つま先が入りやすいLBXが優位となる。とはいえ、前席優先のパーソナルBEVだと考えれば、どうということはない。
また、ラゲッジルームは十分な広さ、容量を備える。重い荷物の出し入れ性にかかわる開口部地上高は約780mm。フロアは奥行700mm(中央、左右は720mm)、幅985mm、最低天井高620mm。容量はフロアボード上だけで316L、加えてフロア下に61Lの合計377L(2段式フロアでボードを下段にセットすれば高さが稼げる)を備えている。後席を倒した時のフラット度(フロア長は1360mmまで拡大)でもEX30はほぼ完ぺきと言っていい(LBXは角度が付く)。ラゲッジルームを拡大した時の使いやすさもまた文句なしということだ。
乗り心地、見た目、試乗してわかったそれぞれのメリット
そんなEX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGEの運転席に収まれば、世界の自動車メーカーの中でもいち早く電動化を推進しているボルボ最新のBEVだけに、先進感もまた満載だ。何しろステアリング奥にメーターパネルがなく、スピードメーターや時計、外気温時計、エアコンやオーディオ操作、各車機能決定ボタン、もちろんナビ画面はすべてインパネ中央の12.3インチタブレット型センターディスプレーに集約されているのだ。運転席周りのスイッチ類は最小限で、あるのはステアリング右側のシフター、ステアリング左側のウインカー&ワイパーレバー、ステアリング左右の面スイッチ(パイロットアシスト=ACC機能含む)、センターコンソール手前にある前後パワーウインドースイッチ(左右用2つのスイッチを前後で使い分ける)ぐらいのものである。
そしてEX30の大きな特徴でもあるハーマンカードン製サウンドバータイプのプレミアムオーディオシステムがダッシュボード奥の左右いっぱいに配置され、フロントドアスピーカーは廃止。これは、スピーカーユニット、ケーブルなどが不要になり、フロントドア部分のリサイクル性を高める目的なのだという。
シートのかけ心地も文句なしである。ふんわりとしたタッチと上半身の自然なサポート性を兼ね備えた高級ソファ感覚のソフトなかけ心地は、いつまでも座り続けていたいと思えるほどである。
ただし、先進性をアピールしたいばかりに、操作性には疑問が残る部分がある。そう、ドアミラーの調整すら、センターディスプレーの車両アイコンをタッチし、左右のドアミラーを、ステアリング右側のスイッチ(△のアイコンの部分)で調整する、けっこう面倒な仕組みとなるのだ。なんの説明を受けず、初めて乗ったとしたら、ドアミラーの調整はまずできない・・・。
ドアミラーの調整はこのスイッチで
気温34度の猛暑の中、あらかじめスマホアプリのリモート操作で車内を涼しくした状態のEX30で走り出せば、BEVならではの車内の静かさと、右足が駆動力と直結したかのようなレスポンジブルかつ、アクセルペダルを深く踏み込むことで得られる強力でコントラーブルな加速力を味わうことができるのは、前回、試乗したオプションの20インチ装着車と変わらない。
シフターはステアリングスイッチで
では、標準の19インチタイヤによる乗り味はどうだったのかと言えば、良路では20インチタイヤとの差はそれほど感じないものの、マンホール越えや首都高のキツい段差越えなどでの、20インチタイヤにあった強めの突き上げ感は、多くの場合、影を潜め、よりしなやかで心地よい乗り心地を、持ち前のフラット感とともに味わうことができた。ロードノイズに関しては、グッドイヤーのEFFICIENT GRIP SUVというハイパフォーマンスタイヤ、しかも45扁平の245/45R19というサイズのため、荒れた路面、粒の大きい舗装でのロードノイズはそれなりだが、リニアでビビットな操縦性と20インチタイヤ以上の快適性を体感させてくれる印象だった。
標準の19インチタイヤ&アルミホイール
それでも、足元のカッコ良さから20インチタイヤを選びたい・・・というユーザーもいるはずだが、19/20インチタイヤ装着車のサイドビューを比較してみると、EX30のコンパクトでSUVとして背の低いスタイリングに対して、20インチだとまるでタイヤが走って!?いるようなオーバーサイズ感を、筆者は感じてしまう。見た目のバランスがよりいいのは19インチタイヤ装着車のほうだな、と思えたのである。
オプションの20インチタイヤ装着車
標準の19インチタイヤ装着車
よって、EX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGEを購入する際、あえて20インチタイヤを、エクストラコストを払って注文するまでもない・・・というのが、筆者の率直な印象であった。そもそも19インチでもかなりスポーティなキャラクターのタイヤなのである。
文・写真 青山尚暉
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