アルピナ製のZ8、ロードスターV8
2024年12月1日、RMサザビーズ欧州本社は、ドバイにおいて同年2回目となるブティックオークションを開催しました。このオークションは、イタリアのクラシックカーラリー「ミッレ・ミリア」の中東版「ミッレ・ミリア・エクスペリエンスUAE」とのパートナーシップによるものです。今回はそんな出品ロットの中からBMW「Z8」のアルピナ版であるBMWアルピナ「ロードスターV8」をピックアップ。そのモデル概要と注目のオークション結果をお伝えします。
超レア! バブル末期を象徴する「ケーニッヒ仕様8シリーズ」…2年越しで前オーナーから譲ってもらったV12モデルと思い出を作っていきます!
アメリカ市場のリクエストで作られた? BMWアルピナ「ロードスターV8」とは?
BMWは往年の伝説的作品「507」の21世紀版ともいうべきE52系「Z8」ロードスターを2000年にデビューさせる。ヘンリック・フィスカーによってデザインされたZ8は、スプリット型グリルや強調されたサイドストレーキなど、1950年代後半の美しき507ロードスターのアイコン的スタイリングを取り入れていながらも、すべてのメカニズムは当時最新鋭のものだった。
パワーユニットはE39系「M5」譲りとなる、4941ccの自然吸気のV型8気筒4カムシャフト32バルブ。6速マニュアル・ギアボックスを介して400psを後輪に伝達した。
ところが、この種のスポーツカーにとっては今も昔も世界最大のマーケットである北米では自動変速機への要望が根強く、トランスミッションが6速MTのみのZ8では競争力不足が指摘されていた。
そこで、当時アメリカへの正規導入を計画していたアルピナ社では、Z8の生産が終了していた2003年初頭のロサンゼルス・ショーにて「ロードスターV8」をデビューさせた。
Z8に搭載されたBMW M社製S62エンジンは、もとよりオートマティックとの組み合わせを想定していなかったことから、BMWアルピナ ロードスターV8では、2002年に登場していたE39系「B10-V8S」用のM62型V8自然吸気4837ccエンジンを、5速「スウィッチトロニックAT」もろともコンバートした。
ただし排気系の取り回しに余裕があったため、B10-V8Sでは375psだった最高出力は381psにアップ。最大トルクもV8Sの510Nmから530Nmに増強された。
この結果、0-100km/h加速は5.3秒とZ8の4.7秒よりいささか遅くなったものの、アルピナ式の「巡航最高速度」はリミッター制限があっても260km/hとされ、より厳粛なメーカー間紳士協定リミッターで出力制限されていたZ8の250km/hを上回ってしまうことになる。
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現在のマーケットにおける相場価格はBMW版のZ8を上回る?
BMWアルピナ ロードスターV8は予定どおり北米マーケットに正規導入され、当初は全世界の市場に向けて総計333台の限定生産が予定されていたが、北米BMWとアルピナ社との協議の結果、555台に加増。そのうち450台が米国に輸出され、残りはヨーロッパや日本で販売された。
このほどRMサザビーズ「Dubai」オークションに出品されたのは291台目のロードスターV8で、生産日は2003年4月10日。アラブ首長国連邦の著名なロイヤルファミリーが新車でオーダーしたことで知られている個体である。
欧州市場向けの左ハンドル仕様で、エクステリアは「ヘルロート(Hellrot)」と名づけられたBMW純正のレッド。インテリアはブラックの上質なナッパレザーで設えられ、シートのボルスターにはレッドが差し色されている。また、アロイホイールは20インチ径のアルピナ「ダイナミック」ホイールが装着されている。
2004年4月24日に初登録されて以来、このロードスターV8は20年以上にわたって、オークション出品者でもある現オーナーのコレクションにくわえられてきた。
目の肥えたカー・コレクションに加えるにふさわしい1台
そして、その間には「BMW Abu Dhabi Motors」による継続的なメンテナンスの恩恵を受けており、サービスブックには2022年8月9日付の最新のスタンプが押されている。この時点で、この個体のオドメーターはわずか301kmを示していた。さらに驚くべきことには、今回のオークション公式カタログを作成するまでに、さらに1kmしか距離を伸ばしておらず、その時点では302kmを指していた。
また、専用のハードトップ、オーナーガイド、純正のツールキット、ボディカバーが付属することになっていた。
なお、今回のRMサザビーズ「Dubai」オークションは、舞台はドバイながら売買はすべて米ドル建て。そして公式カタログでは「新車同様のコンディションで維持されてきた、この上なくスタイリッシュなBMWアルピナ ロードスターV8は、目の肥えたカー・コレクションに加えるにふさわしい1台」というPRフレーズとともに、35万ドル~45万ドルというエスティメート(推定落札価格)が設定された。
そして2024年末、12月1日に行われた競売ではビッド(入札)が順調に進んだようで、終わってみれば41万ドル。現在のレートで日本円に換算すれば、約6500万円で無事落札されることになった。
今回オークション出品車は走行距離の極端に少ない、限りなく新車に近い特異な1台ゆえに40万ドルオーバーを達成したが、もとより昨今のBMWアルピナ ロードスターV8の販売実績を見ると、30万ドルを下回るような事例はあまりないようだ。
かたやBMW本家のZ8が20万ドル~25万ドル(邦貨換算約3000万円~3750万円)あたりで推移している現況から判断すると、やはり公称では5703台が生産されたといわれるBMW Z8よりも、その約1割、555台のみのBMWアルピナ・ロードスターV8のほうが希少価値の面で有利になる……、というのが現在のマーケットの判断と思われよう。
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みんなのコメント
しかもアルピナモデルで乗りやすさを考えて敢えてパワーダウンさせた非常に稀有なモデル。
お金があったら乗りたい…。