世界的な「クルマの電動化」の流れを受け、米国発のテスラをはじめとして、いま各国の自動車メーカーから様々なBEV(=Battery Electric Vehicle=バッテリー動力のみで駆動するEV)が登場している。しかしやはり、BEVとして世界的に最も知られているのは、「日産リーフ」であろう。
「量販EVのパイオニア」として、昨年12月時点のグローバル累計販売台数は50万台を超え、BEV業界を牽引してきた、日産リーフ。その功績は多大なものがあることは誰も否定をしないところであろう。しかしリーフが辿ってきた道は、必ずしも正解ではなかった、と筆者は考えている。
今回は、リーフの功績を振り返るとともに、日産がリーフに課した使命は正しかったのか、について、考えていこうと思います。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、WULING MOTORS、ベストカー編集部、RENAULT、TESLA、Audi、Peugeot、VW、MAZDA、HONDA、TOYOTA
【画像ギャラリー】こんなにある!! 世界で販売されている主要なBEVをギャラリーでチェック!!
10年で14万6千台売れたリーフ
初代リーフ(ZE0)がデビューしたのは2010年12月。誕生からちょうど10年が経過した。2017年10月には、2代目リーフ(ZE1)が登場。発売以来、国内では約14万6千台が販売された。
現在発売されているリーフは、バッテリー容量40kWh、航続可能距離は322km(WLTCモード)の標準グレードと、62kWhのバッテリーを搭載した後続可能距離458kmの「e+」だ。価格は、標準グレードの「X」が税込381.9万円、「e+ X」は税込441.1万円と、約60万円の価格差となる。
2017年10月に登場した2代目リーフ(ZE1)
なお、バッテリー容量増と同時に、モーター最高出力も160kW(218ps)←110kW(150ps)と、68psもアップしている。また、容量増のためにバッテリー密度を上げたため、車両重量が約160kgも増えていることは、気にしておかねばならないことだ。
日産リーフがこれまで国内市場で販売された台数 合計で14万6千台が登録されている
国をもけん引した、リーフの功績
やはり、BEVの普及に向けて、世界をリードしたことが、リーフ一番の功績であろう。
リーフの存在は、世界の多くの自動車メーカーのベンチマークになり(完全に分解してスペックを調べ上げ、丸コピしたメーカーもあった)、国内においては、急速充電ステーションをここまで普及させ、また、政府による補助金枠拡大のきっかけをつくった。国をけん引し、BEV普及の礎を築くことに貢献してきたのだ。
初代リーフ(ZE0)がデビューしたのは2010年12月 航続距離はJC08モードで200kmだった
また、BEVが普及するほどに増えていく、劣化したBEV用バッテリーの2次利用を実現するため、初代リーフが誕生するタイミングの2010年9月、日産は住友商事とともに「4Rエナジー」を設立。
状態の良いセルを組直して再販したり、フォークリフトや小型EV、ゴルフカート、工場のバックアップシステム、コンビニの蓄電装置への再利用など、劣化バッテリーのリサイクルがビジネスになることを示して見せた。
V2H(電気自動車に蓄えられた電力を家庭用に有効活用する考え方)の浸透も、リーフの登場があってこそだ。万が一、停電になっても数日分の予備電源にもなる、というのは、自然災害が多い日本では心強い。
最近では、昼間に太陽光発電で生み出した電力を蓄え、夜間に充電できるように、蓄電池機能を搭載した製品も誕生している。このシステムが予定通りに働けば、自宅で発電した電力のみでクルマも家電も賄え、光熱費の大幅な削減できるし、環境負荷も抑えることができる。
2020年欧州で公開された災害復旧支援コンセプトカー「RE-LEAF」 自然災害などによる停電時にリーフのバッテリーから非常用電力を供給するのが目的
このように、リーフは、BEVの浸透だけでなく、私たちの生活環境にも貢献している。そしてリーフは、先駆車であったからこそ、世の中に受け入れてもらおうと、努力をした。その結果、リーフは腹の下がポッコリと膨らんでしまった。これは、リーフにとって正しい道だったのだろうか。以下、この「膨らんだ腹」について説明したい。
リーフe+のフロアの下には、収め切れなかった62kWhバッテリーが飛び出している しかも車重は160kgも増えている(40kWhは1520kg、62kWhは1680kg)
ガソリン車の代わりになろうとしたリーフ
初代リーフデビューモデルの航続距離はJC08モードで200km、現実的には、その0.7掛けの140km程度が真の実力だ。もちろん、この航続距離はガソリン自動車に太刀打ちできる距離ではなく、航続距離の短さは「EVの欠点」として、ニュースやメディアで度々取り上げられた。
その非難の声に影響された日産は、幾度となくバッテリーの容量アップを行った。日産はリーフに「ガソリン自動車に代わるモビリティになる」という使命を課したのだ。
当初はJC08モードで200kmだった航続距離も、今では、厳しいWLTCモードで458kmにまで伸びた
初代リーフがデビューするちょっと前の2000年代前半、量販車のハイブリッドシステムは、トヨタのTHSの独り勝ち状態であった。日産には、高額車のフーガにしかストロングハイブリッド車が存在せず、今でこそ、伝家の宝刀「e-POWER」があるが、当時の日産には、BセグやCセグ向けの廉価なハイブリッドシステムをつくる技術がなかった。だからこそ、日産は、リーフを認めてもらおうと必死になった。
しかし筆者は、BEVがガソリン自動車に代わるモビリティとなる、というのが、少なくとも現時点の正解だとは思っていない。欧州や北米のように、都市間をつなぐ交通が高速道路主体の国ならばまだしも、鉄道などの交通網が成熟した日本で、400kmを越える距離のEVが本当に必要なのだろうか。
現時点考えられる地球環境を考えたモビリティの在り方は、シティコミューターとしてのEVと、長距離移動に適したストロングハイブリッド、そして、鉄道や航空といった公共交通機関の組み合わせが最も適しているのでは、と考える。鉄道は自動車より、はるかに環境負荷が低い。大量同時輸送にも向いている。
国土交通省の2018年度のデータでは、ひとり1kmあたりの移動で排出されるCO2の量は、乗用車が133gなのに対し鉄道は18gと環境負荷が少ない
BEVが現在のガソリン自動車の立場に取って代わるというのは、幻だと思う。その理由はやはり「ガソリン車より頻繁に必要なエネルギー補給と、その待ち時間」だ。バッテリーへの充電方法は、さまざまな技術開発がなされてはいるが、少なくとも、10年先20年先といった近未来において、BEVがガソリン車(ストロングハイブリッド車含む)にとって代わるようなことは、できないだろう。
日産以外の国内自動車メーカーからも、昨年から続々とBEVが登場しているが、その航続距離は、ホンダe(35.5kWh)がWLTCモード259km、マツダMX-30(35.5kWh)がWLTCモード256km、そしてトヨタC+pod(9.06kWh)が150kmといった状況。
自分の航続距離を「弱点」と考え、必死に距離を伸ばしてきたリーフの航続距離に対して半分近い数値ではあるが、これこそが現代におけるBEVの在り方なのでは、ないだろうか。
ホンダe(35.5kWh)はWLTCモード259km Advanceは、最高出力154ps/最大トルク32.1kgm(113kW/315Nm)を発生するモーターを搭載している
日産の今後のBEV展開に期待!!
しかし、リーフがこれまでにのこした功績は多大であるのは間違いなく、BEVでありながら(e+で)航続距離が458kmもあるリーフそのものを否定するつもりはない。62kWhもの大容量バッテリーを積むため、腹の下がポッコリと膨らみ、大人2人分も車重が増え(プラス160kg)てはいるが、BEVのひとつの答えに行きついていると思う。
しかしやはり、クルマが重いということは、百害あって一利ない。たくさん走るためにバッテリー容量を増やした結果、燃費(電費)が悪くなり、環境負荷が増える。BEVは、充電するための電力をどうやって生み出しているのかを考えなければならない。
日産は今後、さらにBEV攻勢を加速させるようだ。まずは今年登場とされているバッテリー電動SUV「アリア」、そして、2022年に実質200万円以下で発売するとされている軽サイズBEVと、これらがどのようなかたちで登場してくるのか、今後の展開次第でリーフの存在意義も変わってくるだろう。リーフでさまざまな知見を得られた日産だからこそできる、今後のBEV展開に、期待している。
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