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【いざ、ラリージャパン2022】注目の参戦ドライバー紹介/Vol.1『クレイグ・ブリーン』

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【いざ、ラリージャパン2022】注目の参戦ドライバー紹介/Vol.1『クレイグ・ブリーン』

 いよいよ日本に帰ってくる、ラリージャパン。WRC世界ラリー選手権『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』が、11月10~13日にシーズン最終戦として愛知県と岐阜県を舞台に開催される。北海道での開催以来、実に12年ぶりのカムバックとなる日本での世界選手権を楽しみ尽くすべく、ここではエントリーリストに名を連ねる有力参戦ドライバーや、今季より導入の最高峰“Rally1(ラリー1)”クラスの最新ハイブリッド車両の成り立ちや個性を紹介する。その初回は、共通ハイブリッド元年となる今季から、Mスポーツ・フォードWRTのレギュラードライバーとして戦う【クレイグ・ブリーン】にスポットを当てる。

 1990年生まれでアイルランド出身のブリーンは、当時の国内選手権でタイトルも獲得した父レイの英才教育を受ける典型的な2世ドライバーとして育った。幼少期はレーシングカートで選手権を追う経験も積み、19歳のシーズンに本格的なラリー活動を開始する。

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 2年後となる2011年にはステップアップ選手権として創設されたWRCアカデミー生として、2輪駆動モデルで争われるJWRC(ジュニアWRC)部門を制覇し、初代チャンピオンに。翌年にはスーパー2000規定のフォード・フィエスタをドライブして、2010年から開始されていたWRCのサポート選手権SWRC(スーパー2000世界ラリー選手権)に挑戦し、開幕モンテカルロで勝利を飾るなど順調にステップアップを続けてきた。

 しかし、このシーズンに並行参戦したIRCインターコンチネンタル・ラリー・チャレンジでは、その経歴に暗雲をもたらす不幸な出来事も経験。6月のシチリア島で、キャリア黎明期から苦楽を共にしてきた同郷のコドライバー、ギャレス・ロバーツを亡くす事故に遭遇した。

 事故後の当時には「どう表現していよいかわからないほど、失意のどん底にいた」というブリーンだが、同時に「ここで終わらせたら、彼とクルマのなかで過ごした時間や努力がすべて無駄になる」との思いで奮起し、同じくアイルランド出身のポール・ネイグルと新タッグを結成する。

 その復帰戦フィンランドでは名物SS“オウニンポウヤ”でド派手なタテ回転のバレルロールを演じて周囲をヒヤリとさせたものの、これを機に成長を見せドライバーとしても一皮剥けたブリーンは、その後もSWRCのGB、アルザス、カタルーニャと連勝を果たし、自身初の世界チャンピオンを獲得。「このタイトルをロバーツに捧げる」と感情も露わに亡き友へ追悼の意を示した。

 その後はERCヨーロッパ・ラリー選手権でも実績を重ね、2016年に晴れてWRCに昇格。この年はファクトリー参戦を回避したシトロエンからの参戦ではあったが、得意のフインランドで初表彰台を獲得するなど、才能の片鱗を示す速さを見せた。

■2022年にはMスポーツ・フォードと契約しワークスシートを手に入れる
 翌年には正式なワークスドライバーとしてシトロエン・トタル・アブダビWRTの一員となり、新型『C3WRC』のステアリングを託されたが、参戦したラリーでは連続5位入賞など一定の戦績を残したものの、2018年第2戦スウェーデンでの2位表彰台を最高位に、ついに勝利を飾ることはなく。アブダビの撤退とともにシトロエンからの離脱を余儀なくされた。

 2019年以降、新興ラリークロス・シリーズ『TitansRX(タイタンRX)』にもチャレンジする傍ら、シトロエン時代は僚友クリス・ミークの相棒を務めていたネイグルと再コンビを結成し、ヒョンデ・シェル・モビスWRTからパートタイム参戦の機会を得ると、在籍3年間で出走した9戦のラリーで4回の表彰台を獲得する。

 この活躍を足掛かりに、今季2022年にはMスポーツ・フォードWRTと2年契約を結び、32歳にして晴れて“実質的に初のフルタイム参戦”となるワークスシートを手に入れた。

「僕のキャリアは『フォード・フィエスタS2000』でSWRCに勝つ前に、JWRCを制覇した『フォード・フィエスタR2』で始まっているから、フォードはいつも僕の心に非常に近いものだった」と、チーム加入に際して話していたブリーンだが、開幕モンテカルロ直前のテストでは崖下転落の大クラッシュも喫し、本戦ではローブ、オジェの両“レジェンド・セブ”に先行され3位表彰台に留まる。以降、イタリアでの2位表彰台を最上位に、まだWRC初優勝には手が届かない状況が続いている。

 前戦ラリー・スペインでは、相棒を務めたネイグルがWRCからの引退を表明し、続く今季最終戦ラリージャパンに向けては、新たなコドライバーとして30歳のジェームス・フルトンを起用する。

「ここ数年間の彼の仕事ぶりには感謝しなければならないし、彼の妻キャシーにも感謝しなければならない。ポールが僕と一緒に旅に出ている間、彼女は家事全般をこなして、ふたりの子どもの面倒も見てきたんだ。つまり僕は、彼の家族全員からサポートを受けていたことになるんだからね」と、長年の相棒に謝意を述べたブリーン。

 来季に向けてフォード・プーマ・ラリー1を「自分好みのファクトリーカー」に仕上げるべく仕事が山積する状態だが、それよりさらに遠い未来には、自身のライフワークでもある「もっとヒストリックなことをやることになるだろうから、ポールとの再会も長く待つ必要はないだろうね」と予想する。

 生粋のラリー好きとして、自身のコレクションにはかつてフォード黄金期を支えたエスコートMk2やシエラ・コスワース4×4を所有し、そしてフォード復帰を決めた直近にはエスコートWRCもラインアップに追加。イタリアで開催されたラリー・レジェンドにも出場する熱の入れようだ。

「僕のヒーローカーは『MGメトロ6R4』だ」と語るブリーン。アイルランド出身者らしい豪快なサイドウェイ走法と、感情的な人柄を持つ遅咲きのファクトリー契約ドライバーは、中部地方のターマックステージでどんな走りを見せてくれるだろうか。

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