今や世界中のメーカーが販売
text:James Disdale(ジェームズ・ディスデール)
【画像】多種多様なハイブリッド・システム【最新のハイブリッド車4選】 全133枚
翻訳:Takuya Hayashi(林 汰久也)
カーボン・ニュートラルに向け、世界中でクルマの電動化が進む中、ハイブリッド車への関心がかつてないほど高まっている。
中でも欧州における電動モデルの重要性は高く、SMMT(英国自動車工業会)によると、2021年7月の英国内新車販売台数のうち、ハイブリッド車とプラグイン・ハイブリッド車は20%を占め、増加傾向にある。
しかし、ハイブリッドとは一体何なのだろうか?ほぼすべての自動車ブランドが、「マイルド」から「プラグイン」まで、さまざまなモデルを販売している現在、次の愛車を選ぶ際にはますます悩まされることになるだろう。
そこで、この記事ではハイブリッドについて知っておくべきことをまとめた。
マイルド・ハイブリッド
メーカーの間で注目が高まっている「マイルド・ハイブリッド」は、比較的シンプルで軽量なシステムであり、多くの場合、既存のエンジン車に適用することができる。
他のハイブリッド車とは異なり、電気モーターはクルマを直接駆動するのではなく、加速時のパワーを補助し、スターターモーターとジェネレーターを兼ねている。
マイルド・ハイブリッドには、ベルトで駆動するものと、エンジンに直接接続するものの2種類がある。欧州では48Vのシステムが一般的だが、マツダのように24Vシステムを採用しているブランドもある。
いずれの方式であっても、同クラスのエンジン車と比較した場合、全体としておよそ10%程度の燃費向上が見込める。
技術用語では、ベルト駆動式のシステムは「P0」と呼ばれている。その人気の理由は、ほとんどの既存エンジンに大きな変更を加えることなく搭載できるため、コストを抑えられる点にある。簡単に言うと、従来のオルタネーターに代わるスターター/ジェネレーターを、エンジンのクランクシャフトに歯付きベルトで連結したシステムだ。
加速をアシストしてくれるほか、減速時には発電機として働き、エンジンブレーキのような強力な抵抗力を発揮する。そうすることでバッテリーへ電力を供給するとともに、摩擦ブレーキの必要性が減り、ディスクやパッドの発熱によるエネルギー損失を抑えることができる。また、停車時やアクセルオフ時のエンジンスタート・ストップシステムとしても機能する。
ホンダがIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)システムに採用しているクランクシャフト接続方式をP1と呼ぶ。エンジンとトランスミッションの間にモーター・ジェネレーターを挟み込むことで、ベルトの強度に左右されない高トルクを実現し、理論的には素早いレスポンスと省スペース化を可能にしている。
しかし、開発・搭載にはコストがかかり、特にコンパクトな前輪駆動車では通常、パワートレインを独自に設計・製造する必要がある。
これらはいずれもパラレル・ハイブリッドと呼ばれ、モーターは加速時にエンジンをアシストするが、車輪との接続がないため、モーターだけではクルマを動かすことができない。
余談だが、スズキが軽自動車やコンパクトカーに採用している12Vシステムなど、比較的小さなものは「マイクロ・ハイブリッド」とも呼ばれる。エンジンストップ・スタートシステムにスターター/ジェネレーターの技術を用いているが、エンジンへのアシストは限定的だ。
ストロングまたはフル・ハイブリッド
ハイブリッドというと、まず思い浮かぶのがトヨタのプリウスだろう。初めてのハイブリッド車というわけではないが、この技術を世界に普及させたのはプリウスだ。今日、シリーズ・パラレル・ハイブリッドやセルフ・チャージング・ハイブリッドとして知られている。
「ストロング」とも「フル」とも呼ばれ、これまで見てきたマイルド・ハイブリッドよりも開発・製造コストは高くなるが、エンジン車としてもEVとしても振る舞うことができる。そのため、高度なトランスミッション、大型バッテリー、複雑な制御システムが必要となる。
プリウスを例にとると、低速域ではバッテリーを使って電気モーターを駆動し、基本的にはEVのように走る。しかし、スピードを上げたり、バッテリーへの負担が大きくなると、エンジンが始動する。
しかし、エンジンはクルマを走らせるのではなく、バッテリーの発電機として使われる。これをシリーズモードと呼ぶが、エンジンとモーターを連動させて走行するパラレルモードにも対応している。また、電気モーターを切り離して、エンジンだけで走行することも可能だ。
構造は複雑である。MG1はマイルド・ハイブリッド車に搭載されているようなスターター/ジェネレーター、MG2は発電機を兼ねたドライブモーターだ(それぞれ回生ブレーキでバッテリーに電力を戻すが、MG1はエンジンを発電機として利用することで充電できる)。これらはいずれもエンジンと一体となって動作する必要がある。
そのためには、ハイブリッドの心臓部であるパワースプリッターと呼ばれる装置が必要だ。簡単に言えばトランスミッションだが、従来のエンジン車のトランスミッションよりもはるかに多くの機能を持っている。
ここでは、他のストロング・ハイブリッド車にも同様のシステムが採用されているプリウスを例に説明する。このパワースプリッターはよくCVT(無段変速機)と呼ばれるが、理想的な変速比を維持して効率を高めるという点では同じではあるものの、実際には仕組みが異なる。
従来のCVTのベルトやプーリーではなく、遊星ギアを使用し、2つの電気モーターと一緒にエンジンに搭載されている。スロットルやギアセレクターを介したエンジンとの物理的な接続はなく、コンピューターが状況に応じてどこにパワーを送るのが最適かを判断する。
セルフ・チャージング・ハイブリッドは、エンジンの効率を最大限に引き出すように設計されている。電気モーターの発電能力が比較的限られているため、小型のバッテリーを搭載する傾向があり、通常は2~3km程度のEV走行しかできない。しかし、パワースプリッターを搭載しているため、走行速度に関係なくエンジンを最も効率の良い回転数で走らせ、電気モーターで推進力を得ることができる。
ボルボのT8リチャージのように、4輪駆動の電動モデルでは、シリーズ・パラレル・ハイブリッドの駆動方式が若干異なる。エンジンとトルクコンバーター式ATが、マイルド・ハイブリッド方式のスターター・ジェネレーターと組み合わせて前輪を駆動し、リアに搭載された電気モーターが後輪を駆動する。EVモードでは電気モーターで走り、高速走行時にはエンジンにバトンタッチする。より大きなパワーが必要な場合は、電気モーターとエンジンの両方がパラレル・システムとして動作し、スターター/ジェネレーターが実質的なパワースプリッターの役割を果たす。
プラグイン・ハイブリッド
プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)は、ストロング・ハイブリッド車の延長線上にあり、EV走行可能距離が非常に長いという特徴がある。これを可能にするのが大型バッテリーで、BEV(バッテリー式電気自動車)のようにコンセントから充電することができる。
走行モードによっては電気のみで走行し、バッテリーが最小充電状態になるとエンジンが発電機として働く。
ストロング・ハイブリッド車のほとんどがガソリンエンジンと電気モーターの併用であるのに対し、PHEVではディーゼルエンジンとの組み合わせも見られる。中でもメルセデス・ベンツはディーゼルのPHEVに注力しており、セダン、ワゴン、SUVの各モデルに採用している。
燃費やCO2排出量は、ディーゼルエンジンの素性の良さもあって、非常に高い数値を示している。とはいえ、排気ガス不正の「ディーゼルゲート事件」の影響が続いているため、他のメーカーからディーゼルのPHEVが発売されることは少なく、今後もニッチな選択肢であることに変わりはないと思われる。
ほとんどのPHEVは、上述のストロング・ハイブリッド車と同じような仕組みで機能する。トヨタ、キア、ヒュンダイなどは、同じモデルにハイブリッド車とPHEVの両方を設定している。
レンジエクステンダー
他方では、駆動用に電気モーターを使用し、エンジンは発電機としてのみ使用する「レンジエクステンダー(REX)」というシステムも存在する。EVの航続距離延長を目的としてエンジンを搭載したものだ。
フォードは、バンのトランジットにレンジエクステンダー・システムを採用しており、バッテリーの充電が必要になると、1.0Lターボガソリンエンジンが始動する。欧米ではヴォグゾール・アンペラやシボレー・ボルトが先駆的に採用したが、いずれも120km/h以上の速度ではエンジンを使って車輪を駆動することができ、電気モーターを使うよりも効率的だった。
日産はノートやキックスなど、多くのモデルで「eパワー」を導入しており、欧州では新型キャシュカイで初採用される。eパワーはレンジエクステンダーとは異なり、コンセントから充電できるPHEVでもない「シリーズ・ハイブリッド」だ。キャシュカイを例に説明すると、車輪に接続された電気モーターと、発電機としてのみ機能する1.5Lのガソリンエンジンを備えている。
エンジンを発電機としてのみ使用することで、常に最適な回転数を保つことができる。その結果、従来のガソリン車よりもCO2排出量を抑えるとともに、従来のハイブリッド車と同等の燃費を実現している。さらに、電気モーターでクルマを走らせるため、eパワー搭載車はまるでEVのようにスムーズでパワフルな加速をすることができる。
最近では、これまで電動化を進めていなかったダイハツがシリーズ・ハイブリッドの採用を発表した。コンパクトSUVの新型ロッキーに初めて搭載されるという。
このように、各社さまざまなアプローチでハイブリッドを採用しており、地域の法規制や需要に合わせた商品展開を行っている。一口に「ハイブリッド」と言っても、ブランドやモデルによってその中身は多種多様で、ドライバーが得られる恩恵や経験も1つとして同じものはない。
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みんなのコメント
特許でも取ってるの?
と覚えておけばOK