現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜいま悪路を走らないスポーツカーの4WD採用が増えている? レーシングドライバーが語る最新ヨンク事情とは

ここから本文です

なぜいま悪路を走らないスポーツカーの4WD採用が増えている? レーシングドライバーが語る最新ヨンク事情とは

掲載 更新 19
なぜいま悪路を走らないスポーツカーの4WD採用が増えている? レーシングドライバーが語る最新ヨンク事情とは

 4輪自動車が誕生してすぐに4WDの重要性は認識されていた

 4駆(4WDまたはAWD)というと悪路用だと考えている人がいまだに多い。確かに悪路走破性を確保するためにオフロード指向のモデルに4駆システムは必須だが、近年はオンロードに特化した4駆システムも増えて来ている。それらは一体なにが違うのだろうか。

【1口に4WDといっても2つの素姓がある!】FFベースとFRベースの違いをレーシングドライバーが解説

 システムにはさまざまな方式がある。4輪を駆動するという考え方は歴史が古く、4輪自動車が生まれるとすぐに4駆システムは登場している。当時は舗装路がなく雨でも降れば泥濘路となってしまう道路環境だったため、駆動力を確保するために必要と考えられていた。センターデフ方式やポルシェの考案したインホイールモーター式など、現代に通じる4駆システムの基本的な機構がすでに形作られていたのである。

 その実効性を証明したのが第一次世界大戦や第二次世界大戦で活躍する軍用車で、戦後アメリカ軍が開発したウイリス・ジープを三菱自動車がノックダウン生産するようになり国内でも普及するようになる。

 こうした時代の4駆はおもに悪路での走破性を高める為に作られ、トラクション重視の形式を取る。前後の車輪を直結し、4輪が同じ回転数で強制的に駆動する。泥濘路や雪道など低ミュー路面の発進性をとくに重要視したのだ。

 しかし前後車輪を直結にすると、カーブで前後の内輪差が合わずスムースに曲がれなくなってしまう。そこで普段は後輪2輪で走り、悪路ではトランスファーを手動で切り替え直結式4駆として駆動力を得る手法が一般的となった。スバルや三菱のパジェロなど4駆と言えば、手動切り替えレバーのついたオンデマンド方式の直結4駆が長く一般的になっていた。

 大パワーを確実に路面へ伝える4WDも続々登場している

 スポーツ走行で4駆システムが重要視されるようになるのは1980年代になってからだ。スバル・レオーネがセダンボディに4駆システムを与え、悪路も良路も走れるスポーツセダンとして先鞭を付けた。スバルはそれで国内ラリーやWRC(世界ラリー選手権)サファリラリーなど悪路イベントで活躍し4駆の可能性を示したのだ。

 かく言う僕もチーム・スバルが開発したレオーネRX 4駆ターボセダンのグループNレーシングカーに搭乗。1983年の鈴鹿1000kmレースを闘ったことがある。センターデフを持たない直結式4駆システムにスリックタイヤを履かせ、タイトコーナーでは内輪差でロッキング現象が起き、曲がりにくかったしパワーがなかったので4駆の威力を発揮することはできなかったが、得られたデータは後々有効に活用されたはずだ。

 欧州ではアウディが1980年にクワトロを登場させ、スポーツ4駆の可能性を大きく飛躍させていた。アウディ・クワトロはセンターデフを装備し、コーナーでの前後内輪差によるロッキング現象を解消。1981年からWRCで圧倒的な強さを見せつける。センターデフの装備でフルタイム4駆となりタイトなカーブでもスムースに曲がり、加速では強烈な駆動力が発揮できるという4駆の新時代を築き上げたのだ。

 アウディ・クワトロの大成功を見て、他社もセンターデフ方式のスポーツ4駆を次々に登場させる。スバルはレガシィやインプレッサ、三菱もギャランVR4やランサー・エボリューションをセンターデフ方式の4駆として登場させ、数々のモータースポーツシーンを飾ったのだ。

 センターデフ方式はしかし4輪が接地している平坦な路面では強力だったが、路面の凹凸が大きい場所で一輪が浮いていてしまうような場面では、駆動力が逃げてしまい悪路走破性は直結方式に劣った。そこでセンターデフをロックする方式も開発されたが、コスト面やメカニズムの複雑さ、重量増加に伴う走行抵抗などを考慮し、悪路用4駆はオンデマンドの切り替え方式が現在でも主流だ。ただマニュアルで切り替えるのではなく、電子制御でアクチュエーターが自動的に切り替えることで利便性を高めたものが多い。

 一方オンロードでの走行性を高めるスポーツ4駆も進化している。電子制御クラッチで前後駆動力配分を自在に変化させ、左右トルク配分も可能な高度なシステムと制御が備わってきた。500馬力を超えるモンスターパワーのマシンでは乾燥舗装路でも駆動力を失いやすく、こうした電子制御式フルタイム4駆システムが重要性を増しているのだ。

 このように「4駆」とひと括りにしただけでは現代の4駆モデルは語れない。そして今後もハイパワーモデルはたとえEV(電気自動車)であっても優れた4駆システムと制御を持っていることが重要になっているのだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「俺たちのワーゲン」が還ってきた! 新型VW「ティグアン」に試乗…軽快で使いやすい実直なSUVに進化していました
「俺たちのワーゲン」が還ってきた! 新型VW「ティグアン」に試乗…軽快で使いやすい実直なSUVに進化していました
Auto Messe Web
KADOYA が「仮面ライダー1号/仮面ライダーBLACK」コンセプトのレザーコレクションを発表!(動画あり)
KADOYA が「仮面ライダー1号/仮面ライダーBLACK」コンセプトのレザーコレクションを発表!(動画あり)
バイクブロス
メルセデスAMG E53 4MATIC+ など7車種でリコール…配線トラブルで火災のおそれ
メルセデスAMG E53 4MATIC+ など7車種でリコール…配線トラブルで火災のおそれ
レスポンス
2024 SUPER GT Rd.5 SUZUKA GT 300km GRAND FINAL No.36 au TOM’S GR Supra 坪井、山下組が最終戦をポールトゥウインで締め連覇達成!
2024 SUPER GT Rd.5 SUZUKA GT 300km GRAND FINAL No.36 au TOM’S GR Supra 坪井、山下組が最終戦をポールトゥウインで締め連覇達成!
AutoBild Japan
【ときに厳しく、ときに優しく】自動運転トラックの要素技術検証開始
【ときに厳しく、ときに優しく】自動運転トラックの要素技術検証開始
AUTOCAR JAPAN
房総の高速「ぜ~んぶ4車線化」準備OK! “降りてからのボトルネック”も解消へ 都市計画変更が可決
房総の高速「ぜ~んぶ4車線化」準備OK! “降りてからのボトルネック”も解消へ 都市計画変更が可決
乗りものニュース
アウディ、中国で新型EV『Q6L e-tron』生産開始…第一汽車と共同設立の新会社で
アウディ、中国で新型EV『Q6L e-tron』生産開始…第一汽車と共同設立の新会社で
レスポンス
【アメリカ】スズキがタイヤ剥き出しの「電動モビリティベースユニット」実車展示へ! “50年”培った「伝統技術」採用! まさかの「ハンドルがない」足回り特化モデルCESで公開!
【アメリカ】スズキがタイヤ剥き出しの「電動モビリティベースユニット」実車展示へ! “50年”培った「伝統技術」採用! まさかの「ハンドルがない」足回り特化モデルCESで公開!
くるまのニュース
ガルフ・オイルがMotoGPへ! 小椋藍加入の新興トラックハウスとパートナーシップを締結
ガルフ・オイルがMotoGPへ! 小椋藍加入の新興トラックハウスとパートナーシップを締結
motorsport.com 日本版
マレーシア初の国産EVが発売、プロトン『e.MAS 7』航続410km
マレーシア初の国産EVが発売、プロトン『e.MAS 7』航続410km
レスポンス
ターボ×MTで300馬力超! トヨタの「FRスポーツコンセプト」がスゴかった! “次期スープラ”と予想されてた「GRMN SPORTS FR Concept PLATINUM」とは?
ターボ×MTで300馬力超! トヨタの「FRスポーツコンセプト」がスゴかった! “次期スープラ”と予想されてた「GRMN SPORTS FR Concept PLATINUM」とは?
くるまのニュース
「俺が乗りたいクルマにした」鈴木亜久里コーディネートの『LEGAVELO』が国内初お披露目
「俺が乗りたいクルマにした」鈴木亜久里コーディネートの『LEGAVELO』が国内初お披露目
AUTOSPORT web
先に生まれた立場のツラさよ!! トヨタ・[クラウンクロスオーバー]さんからの悲しいお悩みとは!?
先に生まれた立場のツラさよ!! トヨタ・[クラウンクロスオーバー]さんからの悲しいお悩みとは!?
ベストカーWeb
802台しか生産されなかったロールス・ロイスが400万円ほどで落札!「シルバー スパー」は希少性が独自の価値を生み出している? 今後値上がり必至!?
802台しか生産されなかったロールス・ロイスが400万円ほどで落札!「シルバー スパー」は希少性が独自の価値を生み出している? 今後値上がり必至!?
Auto Messe Web
夜の帳を駆け抜ける精悍スタイル「ナイトシェードエディション」を追加。トヨタbZ4Xの2025年モデルが北米で登場
夜の帳を駆け抜ける精悍スタイル「ナイトシェードエディション」を追加。トヨタbZ4Xの2025年モデルが北米で登場
Webモーターマガジン
BMW 5シリーズ など27車種1万台リコール…最悪の場合、走行中にエンジン停止のおそれ
BMW 5シリーズ など27車種1万台リコール…最悪の場合、走行中にエンジン停止のおそれ
レスポンス
東京~千葉の第3ルート「新湾岸道路」計画に反響多数!? 「たのみます」「館山道の渋滞ひどい」悲願の臨海バイパス…いよいよ概略ルート決定プロセスが始動
東京~千葉の第3ルート「新湾岸道路」計画に反響多数!? 「たのみます」「館山道の渋滞ひどい」悲願の臨海バイパス…いよいよ概略ルート決定プロセスが始動
くるまのニュース
モリワキから CBR400R用「SHORT FENDER KIT」が登場!
モリワキから CBR400R用「SHORT FENDER KIT」が登場!
バイクブロス

みんなのコメント

19件
  • 以前にインプSTIの丸目セダンに乗ってましたが、スポーツ四駆はやっぱり凄かった。EJ20の暴力的なパワーをしっかり路面に伝えて、何のストレスも無く当たり前のように200キロ位出せた。不等長エキマニが奏でるドロドロのボクサーサウンドも堪らなかった!
  • そう、スバルのマルチなんとかトランスなんとかが凄い。4輪駆動のネガがほとんどない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

672.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.0613.0万円

中古車を検索
A4オールロード クワトロの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

672.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.0613.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村