これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、商用車ベースながら軽自動車を趣味のクルマとして仕上げた、バモスホビオを取り上げる。
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】まさに車名通りの趣味のクルマ! [バモスホビオ]の人気が衰えなかった理由とは
文/フォッケウルフ、写真/ホンダ
■需要が拡大したホンダ軽の一翼を担う存在
軽自動車が現在の規格になったのは1998年10月だ。全長が3.30m以下から、3.4m以下となり、全幅はそれまでの1.4m以下から1.48m以下に変更された。2m以下とされていた全高に変更はなかったが、長さと幅が拡大されたことで居住性や実用性が引き上げられ、なおかつ小型車と同レベルの安全性を実現した。
規格改定に伴って人気車種は軒並みフルモデルチェンジを行い、スズキ ワゴンR、ダイハツ ムーヴといったハイトワゴンタイプは、それまで以上に販売台数を伸ばしていった。こうした規格改定と市場動向を鑑みたホンダは、軽自動車でも小型車に匹敵する価値観を実現できるチャンスととらえ、ムーバーシリーズと称してライフ、ホンダZをリリースするなど、軽自動車ラインアップの拡充を推し進めていった。
ラインアップに加わったのは新型車だけでなく、セミキャブオーバー型ワンボックス車である「バモス」をベースにした派生車も登場することになる。それが今回クローズアップする「バモスホビオ」だ。
基本的なフォルムはバモスと共通となるが、専用デザインの大型横桟プロントグリルや大型前後バンパーなどを装着することで独自の個性を強調している
バモスホビオは、2003年4月に実施されたバモスの一部改良に合わせて追加された。サブネームである「ホビオ(hobio)」は、人工的な国際共通語として作られたエスペラント語で「趣味」の意味があり、「豊かな創造性と遊びのアイディアを大切にしたい趣味人にとって、いつも欠かせない存在」になってほしいという想いが込められている。
基本的なスタイルは、バモスをベースとしているが、全高をバモスよりも105mm高い1880mmに設定されている。ハイルーフ化によって車内は広々としたスペースが確保されており、特に広大な荷室スペースは軽ワンボックスならではの特徴であり、趣味を謳歌する人たちを強力にサポートできる積載性を実現していた。
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■多彩な荷室アレンジができるセミキャブワゴン
外観は基本的なデザインをバモスから継承しており、軽自動車規格で定められた3395mmの全長いっぱいを室内と荷室スペースに使ったことがひと目でわかるものとなる。クラッシャブルゾーンとして余裕をもたせたフロントノーズとスポーティな雰囲気を演出するサイドスカートを備えることで商用車的なイメージが払拭されているのもポイントだ。
そのうえホビオでは、バモスより105mm高いハイルーフ形状のフォルムとし、専用デザインの大型横桟プロントグリルや大型前後バンパーなどを装着して独自の個性を演出してバモスとの差別化が図られている。
室内の広さは軽自動車ワンボックスならではの特徴で、スーパーハイルーフを遥かに凌いでおり、特にエンジンを車体中央の床下に配置したMR方式の採用は、居住性と実用性の面でさまざまメリットをもたらしている。
居住性については、適切なヒップポイントと大きなドア開口部により自然な姿勢での乗り降りが可能となり、フロアに段差がないことから足もとは広々。フロアを低くできることから、室内高に十分なスペースが確保されて頭上にも余裕がある。荷室フロアはフラットな形状となって、目的に応じた多彩なシートアレンジが行えるから、積み込むレジャー道具に合わせてスペースを自在に作り出せる。
全高をバモスより105mm高く設定することで、室内高についてもバモスに比べて120mm高い1180mmとした
広大なスペースを使いこなすための機能や装備が充実しているのも見逃せない。シート表皮やドアトリムには撥水処理が施されているから、濡れてもサッと拭き取れるし、ペットや積んだ荷物の臭いがつきにくいから気兼ねなく使える。
運転席まわりは扱いやすさを重視したシンプルなデザインとしているが、便利な収納スペースが適所に設けられ、オプションで用意されている大型ルーフコンソールや夜間の積み下ろしに便利な蛍光灯ライトをプラスすれば利便性はさらに高められる。
荷室高1180mmを確保したラゲッジルームには、ハイルーフがもたらす大きなスペースや大きなドア開口を生かしつつ、さまざまな荷物を固定したり、吊り下げたり、積載性を高めるアイディアがふんだんに盛り込まれている。
荷室の床面とリアシートの背面には、濡れても汚れても拭きとれるワイパブルマットを採用。壁面には穴あけ加工をすることなく6mmのボルトを取り付けられるユーティリティナットを28カ所も用意されている。
フロアには重い荷物などをしっかりと固定できるタイダウンフックが4カ所、Gグレードには物をかけたり吊り下げたり、固定できるユーティリティフックを8カ所設けられ、荷物を安定して積載するための配慮が随所に見られる。
■愛犬とのお出かけで重宝する機能が充実した特別仕様車
バモスホビオには標準仕様のほか、「トラベルドッグバージョン」という、愛犬のための機能と装備を充実させたモデルを特別仕様車として設定されていた。
トラベルドッグバージョンは、「愛犬とクルマで楽しく出かけてほしい」という発想から立ち上げた「Travel Dog」というウェブサイトで募ったユーザーの提案や意見が反映されたモデルで、期間限定で販売された。
また、同仕様には特別装備として、抜け毛やよだれを簡単に掃除できるワイパブルドアライニング、泥などの汚れを簡単にふきとれるワイパブルマット、制菌、防臭、防ダニ加工を施した専用フロアカーペットマット、寒い日も効率よく後席を温めるリヤヒーターといった機能のほか、専用ステッカーや専用色アタッチメントフック、専用色ユーティリティフックといったアイテムを備えていた。
こうした愛犬との外出に配慮した装備を充実させながら、車両価格はベース車比で3~5万円アップにとどめ、多くの愛犬家から注目を集めることになる。
バモス ホビオLとターボをベースに、愛犬家と愛犬のための装備を充実させた「トラベルドッグバージョン」を特別仕様車として設定
乗用タイプと商用タイプのPro(プロ)という車種構成でスタートしたバモスホビオは、2003年に登場から2018年5月に生産終了となるまで15年にわたって販売された。
ロングセラーを続けられた理由は、やはり広い室内空間と多彩なアレンジが可能な荷室の利便性によって日常からレジャーまで幅広く活用できたこと。また、背の高さをさほど意識させない操縦安定性と乗り心地のよさ。さらにリーズナブルな価格設定もウケた理由として挙げられる。
15年の間に、クルマを取り巻く環境やユーザーのニーズは大きく変わったが、それでも長い期間売れ続けられたのは、マイナーチェンジや改良によって熟成を重ねていたことはもちろん、基本設計の高さが大きく影響している。
バモスホビオはホンダの狙い通り、創造性と遊びのアイデアを大切にしたい趣味人に欠かせない存在となり、その思想は後継モデルとして登場したN-VANへと引き継がれる。
【画像ギャラリー】 ハイルーフボディを活かして1180mmの室内高を確保したバモスホビオの写真をもっと見る!(12枚)
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みんなのコメント
宅配、土木仕事の関係を装えば街中でも「浮かない、怪しまれない」 欠点…遅い、パワーがない、女子ウケは皆無くらいですかね? クルマは動く「ツールボックス」と割り切れば最高です(笑)
助手席畳まなくても十分な積載量を持ちリアシートも前後スライドは無かったが折り畳みとリクライニングを両立していた。
そしてミッドシップゆえの重量バランスからくる動的な運転のしやすさ、楽しさ。
うちのバモス(ワゴン)も屋根は低いがその特性を持つ。アクティやホビオよりローダウンセッティングされて走りもよりキビキビ。