爽快なトップレスのオープンカーは憧れの存在。「いつかはオープンカーに」、と心をときめかせるクルマ好きも少なくない。
国産オープンカーの雄といえばマツダ ロードスターだが、オープン専用モデルの同車以外に、基本は屋根付きのクローズドボディながら、かつてオープンモデルを設定していた車種も少なくない。
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そのひとつが日産を代表するスポーツカーのフェアレディZだ。2019年で50周年を迎えたことでも話題の同車には、2014年までロードスターが設定されていた。
そして、米国で販売されていたフェアレディZロードスターも、ついに2019年モデルをもって廃止されることが明らかとなった。
そこで、本稿ではフェアレディZを筆頭に、今では設定が消滅してしまった珍しいオープンモデルを改めて紹介するとともにオープンカーの今後を占う。
文:片岡英明
写真:編集部、NISSAN、TOYOTA、HONDA
オープンから始まったフェアレディ なぜクーペ主体に?
S130型フェアレディZ-T。特徴的なTバールーフを採用する形でオープンモデルが復活
日産は日本のオープンカー文化を牽引した自動車メーカーだ。フェアレディの前身となるS211型ダットサン・スポーツカーによって栄光の歴史は幕を開け、Z以前のフェアレディはすべてオープンカーだった。
だが、1969年秋に登場したフェアレディZはクローズドボディをまとって登場する。クーペボディのほうが空力性能はいいし、快適性も高いからだ。オープンカーに未練を残したが、フェアレディは北米市場に販売のウエイトを置いている。
この時期、アメリカでは衝突・転覆時の安全性を問う声が高まっていた。これに呼応し、お役人は安全性に対する規制を大幅に強化したから、フェアレディZはクーペボディを選んだのである。
だが、爽快なオープンカーにこだわるファンは少なくない。そこでフェアレディZは、2代目のS130型のときにルーフ部分を脱着可能にしたTバールーフを追加。クーペの快適性とオープンカーの開放感を、脱着式ルーフによって上手にバランスさせた。
スープラやNSXにもオープンモデルが登場・消滅
【1】スープラ エアロトップ(写真はA80型)。1986年にクローズドモデルから4か月遅れで初設定。モデルチェンジを経てA80型にも設定されたが、1996年に消滅
フェアレディZに続き、トヨタのスープラやMR2も同様の脱着式ルーフを設定した。オープントップなら転倒時も乗員を守りやすいから、ハードルはグッと低くなる。
A70系のスープラは1986年2月に登場。その4カ月後の6月には開放感あふれるエアロトップを追加している。
スープラはセンターピラーをロールバー風の処理とし、ボディの剛性を高めているが、これは脱着式のディタッチャブルトップを同時に開発していたからだった。
スープラは1993年5月に第2世代にバトンタッチしている。このA80系スープラのGZとSZには脱着可能なエアロトップを設定した。
最初はフラッグシップの2JZ-GTE型DOHC 2ウェイツインターボ搭載車にもエアロトップが用意されていたが、1996年のマイナーチェンジで消滅している。
【2】NSX タイプT/1990年発売の初代モデルに、1995年の改良で追加設定。マイナーチェンジを経て生き残ったが、現行型では消滅
1990年代にはホンダ NSXにも同様の脱着式ルーフが用意された。
このNSXは1995年3月にオープントップと呼ぶタルガルーフをカタログに加えている。が、走りにこだわる人はオープントップに興味を示さなかったから、両車は次の世代では採用しなかった。
フルオープン復活も再消滅! フェアレディZの平成オープン史
【3】フェアレディZ ロードスター。当初はクーペのみでスタートし、翌2009年に追加設定。日本で2014年に販売終了し、2019年モデルをもって米国でも廃止
この困難な課題に挑んだのが、ピュアスポーツのフェアレディZだ。年号が平成に変わった1989年の夏、4代目フェアレディZ(Z32型)が登場。
待望のフルオープンカーが加わるのは1992年夏だ。フェアレディ2000以来、絶えていたフルオープンモデルを復活させている。
コンバーチブルに搭載されているのは、3LのV型6気筒DOHCエンジンの自然吸気のほうだ。パワフルなターボ仕様は用意されなかった。爽快な走りを楽しむ、という考え方はマツダのロードスターと共通するところである。
フェアレディZは2年間の空白の後、2002年7月に5代目のZ33型が登場。この5代目Zも、2003年10月にソフトトップを備えたロードスターを設定している。
そして、フェアレディZは2008年12月に第6世代へと移行。このZ34型にロードスターを投入するのは2009年10月だ。
待望の電動トップが採用され、脱着からロックまでスイッチ操作によって開閉と収納が可能になった。また、インテリジェントキーによって外からでもオープンにすることができる。
さらにエアコンディショニングシートも採用したから、冬場だけでなく夏場でも快適なオープンエア・モータリングを楽しむことができるようになった。
だが、2014年にロードスターは日本での販売を終えている。海外では引き続き販売されていたが、これも終了すると発表された。伝統のオープンモデルが消滅するのは、とても残念だ。
マーチやレクサスISのオープンモデルも消滅
【4】マイクラC+C/2代目マーチにカブリオレが追加され、3代目マーチをベースとしたマイクラC+Cも2007年に限定発売。現行型4代目ではカブリオレの設定は廃止されている
オープンカーの爽快感を重視するラグジュアリーカーや2ボックスは、バリエーションのひとつとして21世紀になってもオープンモデルを設定した。
その筆頭がマイクラC+Cだ。マイクラは英国日産が生産するマーチの海外仕様である。マーチは2代目の後半の1997年夏にルーフを取り去ったカブリオレを加えた。
マイクラC+CはK12系マイクラのルーフをガラストップとし、電動ハードトップを採用したクーペカブリオレで、日産ではクーペコンバーチブルと呼んでいる。
日本でお披露目されたのは、2007年1月の東京オートサロンだ。そして7月に1500台限定の形で発売され、3年後の2010年夏、予定台数に達したので販売を打ち切った。2代オープンを続けたが、現行モデルにC+Cの設定はない。
【5】レクサス IS C/初代ISのデビューから約4年後の2009年に発売。2代目モデルの発売後も2014年まで生産を継続したが、同年廃止
もう1台、話題をまいたのが2005年に日本で立ち上げたレクサスのスポーツセダン、ISに設定された電動開閉式メタルトップのIS Cだ。
こちらも4人乗りのクーペカブリオレで、快適性も高かった。が、1代限りで生産を終え、現行モデルにクーペカブリオレはない。
◆ ◆ ◆
オープンカーが生産中止に追い込まれているのは、販売が伸び悩んでいるからだ。最大のマーケットであるアメリカでも人気がなくなってしまった。
安全性やセキュリティに不安があることが販売不振の理由のひとつだが、ユーザーの好みが変化したことも一因にあげられる。
また、高性能車が増え、剛性や安心感を重視する人が増えてきた。今は地球にやさしいクルマが求められているから電動化は必至だ。メカニズムが複雑になり、クルマも肥大化しているから、重量のかさむオープンカーは開発しづらい時勢なのである。
快適性を第一に考える人が増えたからオープンカーの未来は明るいとは言えないだろう。だが、ぜひとも技術革新によって爽快なオープンカーを残してほしいものである。
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