デビューから5年経っても未だ長い納車待ち状態の現行ジムニー。その人気は過去最高レベルだが、かつてジムニーのイメージとほど遠いモデルが存在していたのだ。そうFRモデルだ。当時はまったく売れなかったのだが、今その状況が大きく変わっているのだ。真相はいかに!?
文/デグナー12(Team G)、写真/デグナー12(Team G)、スズキ
ま、マジで!? ジムニーなのに4駆じゃない……不人気だったFRジムニーの今が衝撃
■売っていたのはたった1年!! FRジムニーは2種類もいた
現行型の大ヒットの影に隠れた形の3代目。今も根強い人気を誇る
1970年に初代(LJ10)が誕生して以来、世界各国で300万台以上が販売されたジムニー。現行型は2018年に発売された4代目で、その前の3代目は1998年にデビュー。1型から10型まで進化しながら20年間も販売された。
3代目の長い歴史の中で、異彩を放つのが「ジムニーL」と「ジムニーJ2」(トップ画像の車両)。
エンジンこそ4WDモデルと同じK6A型インタークーラーターボを搭載しているが、駆動方式はなんとFR。どちらも1年足らずしか販売されなかったため、ジムニーファンの認知度は低く、幻のモデルと言っても過言ではない。
■ボディは一色のみ!? 専用パーツも満載だった
ジムニーLは2000年3月に発売。ジムニーの力強く機能的なデザインを街乗りで気軽に楽しみたい人向けのモデルで、ボディカラーは専用色のパールホワイトのみ。
さらにドアミラー、サイドアンダーミラー、ドアハンドル、前後バンパーをボディ同色とし、ファッショナブルな雰囲気に仕上げた。
また、スモークガラスやカジュアルなデザインの専用シートも装備。パワードアロックやキーレスエントリーなども標準で付いており、ジムニー本来のオフロード色は薄められている。
一方、ジムニーJ2は2001年2月に発売。コンセプトはジムニーLと同様だが、専用のボンネットフードやフォグランプ内蔵のフロントバンパー、メッシュタイプのフロントグリルなどが与えられ、4WDモデルと大きく差別化された。
また、タイヤサイズが16インチから15インチにサイズダウンされたため、乗降性が向上。より街乗りユースに適したモデルとなっている。
しかし、2002年のマイナーチェンジによりFRモデルは消滅。ジムニー=パートタイム4WDという強固なイメージの中で、常時2WDのジムニーはよほど不人気だったのか、今では完全に忘れ去られた存在となっている。
■当時は不発も今は再注目!? FRジムニーが今アツい
JB23Wにはいろいろな特別仕様車が存在したが、2WDモデルはジムニーLとJ2のみ
ところが最近、FRジムニーに対する注目度が上がっている。それがジムニーのサーキット仕様の流行。
2WDの部品を流用してFR化するので、ジムニーLとジムニーJ2の部品を使用する。軽量化と舗装路面におけるハンドリング向上がFR化のメリットで、JB23Wはもちろん、現行のJB64Wにも流用可能。
FRジムニーのクルマ自体にスポットライトが当たっているわけではないが、表舞台から姿を消して、約20年後にスポットライトを浴びるとはなんたる運命か。
しかし、それでも今のジムニーファンを支えていることに変わりはないのだから、ジムニーファミリーとしての責任(?)はしっかり果たしている。
おそらくジムニーLとJ2は、トライアルの意味が大きかったモデルなのだろう。だからジムニーの王道を行かず、ファッション性を追求したのだ。
都会派の軽4WDとして人気を集めていた、2代目パジェロミニに影響された部分も大いにあったはずだ。販売面での結果は不明だが、後発モデルが出ていないことを考えると……。容易に想像がつく。
これが知られざるFRジムニーのストーリー。モデルサイクルの長い車種だけに、こういった結末に至ったのかもしれないが、いずれにせよ、熱心なジムニーファンに支えられていることは間違いない。ジムニーは本当に奥の深いクルマである。
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