■ファン・トゥ・ドライブを体現する3台の「RS」とは
マイカーの普及が始まった1960年代から、着々と数を増やしてきたのがAT車です。イージードライブが可能なAT車は、時代とともに勢力を伸ばし、現在、新車販売におけるAT車比率は98%以上といわれています。
一方で、2000年代に入って急激に減少してしまったのがMT車で、今では完全にマイノリティと化してしまいました。
そんな数少ないMT車ですが、クルマを意のままに操る楽しさは不変で、あえてMT車を求めるユーザーも一定数存在します。
もはや選択肢が少ないMT車ながら中古車ではまだまだ選び放題で、なかでも安価に販売される軽量かつコンパクトなモデルは注目を集めています。
そこで、中古車価格が100万円未満で、とにかく乗って楽しいコンパクトMT車を3車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「ヴィッツRS」
1999年に、トヨタの次世代グローバル・コンパクトカーという重責を担ってデビューしたのが、初代「ヴィッツ」です。
ヴィッツはデザイン、操縦性、経済性、居住性が高く評価され、コンパクトカーの新たなベンチマークとなり、国内外で大ヒットを記録しました。
この初代ヴィッツに追加ラインナップされたスポーティグレードが「RS」です。その後、代を重ねてもRSは存続し、ヴィッツとしては最終モデルとなった3代目にもラインナップ。
2010年から2020年まで販売された3代目ヴィッツは、外観の違いなどから前期、中期、後期に大きく分けられ、前期型と中期型では「RS」、最終モデルの後期型では「GRスポーツ」もしくは「GRスポーツ“GR”」がスポーティグレードとなっています。
RSは最高出力109馬力を発揮する1.5リッターエンジンを搭載し、トランスミッションは5速MTとCVTを設定。
強化された足まわりに、ブレーキも4輪ディスクが奢られ、内装もスポーツシートや革巻きハンドルが標準装備されるなど、ヴィッツRSの伝統が受け継がれています。
また、2015年のマイナーチェンジでは、衝突被害軽減ブレーキを含む先進安全技術「トヨタセーフティセンスC」を装備。安全性能は現在のレベルと比べると見劣りしますが、標準装備されているのはうれしいところです。
前期、中期にラインナップされたRSのMT車は、比較的低走行の物件でも60万円台から80万円台が中心で、さらにボディ剛性を強化して専用のフロントフェイスが与えられた「RS G’s」もありますが、120万円以上の相場です。
ちなみに、後期型の「GRスポーツ」、「GRスポーツ“GR”」は160万円台から180万円台の高値安定傾向となっています。
●ホンダ「フィットRS」
2001年にホンダ「ロゴ」の後継として登場したベーシックコンパクトカー初代「フィット」は、優れた走行性能と低燃費を両立し、シンプルで洗練されたスタイルとクラストップの広い室内、そして低価格を実現したことで大ヒットを記録しました。
初代からMT車をラインナップしていましたが、2007年に登場した2代目では1.5リッターモデルとして「RS」グレードを設定。
そして、2010年のマイナーチェンジでRSはよりスポーティに変貌し、トランスミッションはクラス初の6速MTとパドルシフト付きCVTが設定され、足まわりやパワーステアリング、エキゾーストシステムが専用セッティングとなっています。
エンジンは最高出力120馬力のパワフルな1.5リッターi-VTECを搭載し、ショートストロークかつ1速から3速をクロスレシオ化された6速MTと相まって、走る楽しさが高められました。
外観は控えめながらも専用のエアロパーツが装着され、内装もブラックとオレンジを組み合わせたカラーリングと、見た目にもスポーティに演出されています。
2代目フィットRSの狙い目はやはり2010年モデル以降の6速MTモデルで、中古車価格は低走行の物件でも100万円を少し切る価格帯です。
また、2012年には「CR-Z」のパワーユニットが移植された「フィットハイブリッド RS」が登場しましたが、中古車の物件数が少ないため、選択肢が限られてしまいます。
なお、3代目フィットのRSは、現行モデルの4代目でMTが消滅してスポーティなグレードもなくなった影響からか、最終型に近い物件は200万円前後の高値が続いています。
■ローパワーながらも軽量な車体が大いに魅力の1台
●スズキ「スイフトRS」
現在、国内のラインナップのなかでも、数少ない「ホットハッチ」の代名詞的存在なのがスズキ「スイフトスポーツ」です。
2000年にリーズナブルなエントリーモデルとして登場した「スイフト」ですが、2003年に初代スイフトスポーツが登場すると、軽量コンパクトなスポーツモデルとして名を馳せました。
スイフトスポーツはスポーツモデルとしての地位を盤石なものとする一方、2010年に登場した3代目スイフトには、よりライトなスポーティグレードの「スイフトRS」が加わります。
2011年に登場したスイフトRSは、最高出力91馬力の1.2リッター直列4気筒エンジンを搭載した「XG」グレードをベースにした特別仕様車で、トランスミッションは5速MTとCVTを設定。
欧州仕様と同等の減衰力を高めたショックアブソーバーと、旋回時の応答性を高めたタイヤを装着し、アシスト量のチューニングで重めに設定されたパワーステアリングの採用などによって、コーナーでの安定感が向上しています。
また、フロントスパッツ、リア/サイドアンダースポイラー、ルーフエンドスポイラーなどのエアロパーツが装着され、スイフトスポーツほどの派手さはないものの、スポーツグレードであることを主張。
さらに2012年にはスイフトRSの一部仕様変更をおこない、2WD車も4輪ディスクブレーキにアップグレードされ、CVT車ではパドルシフトを採用するなど装備の充実が図られました。
わずか91馬力とローパワーなRSですが、960kg(5速MT)と軽量な車体は大いに魅力的で、パワーを使い切れる走りは、楽しさにおいてスイフトスポーツに引けを取りません。
RSで狙い目は2012年のマイナーチェンジ後のモデルで、相場は80万円台から60万円台が中心ですが、高年式のモデルでは100万円に迫っています。
なお、現行モデルの4代目でもRSはラインナップされており、新プラットフォームによって870kgと大幅に軽量化されて、先進安全技術も充実していることから大いに魅力的ですが、中古車は130万円前後とスイフトスポーツに近い価格帯が中心です。
※ ※ ※
今回、紹介した3台はどれも「RS」を名乗るグレードで、これまでもRSというとスポーティかつ高性能なグレードとしてさまざまなモデルで使われてきました。
国産車で先駆けとなったのはホンダ初代「シビック」で、RSは1974年に発売され、欧州仕様の足まわりに専用の13インチラジアルタイヤ、ツインキャブレターが装着されたエンジンなど、まさにスポーティなグレードでした。
一般的にRSというと「レーシングスポーツ」や「ロードスポーツ」などの略ですが、ホンダは運輸省(現在の国土交通省)の認可を得るために、「ロードセーリング」というマイルドな呼び方を余儀なくされたのは有名な話です。
いまでは考えられませんが、当時はスポーツモデルが冷遇されていた時代で、こんな細かなところも気を使わないといけなかったという、当時の苦労がうかがえます。
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みんなのコメント
これじゃないとダメということはない。
何でもいいから乗ってみることが大事。