2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2013年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介したい。
新型クラウン(当時)への思い、「ピンククラウン」やレンジローバーへの印象……。豊かな筆致、読者からの質問に丁寧に答える姿に、決して枯れなることのない氏のクルマや自動車業界への情熱が垣間見える。
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(本稿は『ベストカー』2013年2月26日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)
■新型クラウンに思いを馳せる
新型クラウン(14代目)。徳さんが注目するのは直4、2.5Lのハイブリッドモデル。先代のハイブリッドに比べ190kgも軽くなっている点を評価している。試乗した結果チョイスとなるか? 徳さん自身も楽しみだと語る
新しい年が始まった。さて今年はどんな年になるだろうか?
気になるのは津波の被害を受けた東北の太平洋側の復興で、ほとんど進んでいないという。我々、東京に住むものにとって東北は遠いところだが、東北には多くの人々が暮らしており、その人々が昔の生活を取り戻し、平穏無事な毎日を送れるように日本中の人間が祈らねばなるまい。
さていよいよ“私の最後のクルマ”トヨタクラウンが発表された。試乗会は1月末だが楽しみでしかたない。そこで最後のクルマを買うか買わないか決めることになろう。
現在の足であるVWゴルフキャブリオレは健在だから、乗り換えるとしても春からになるだろう。
2.5Lと3.5Lがラインアップされるが、2.5LにはV6のほかに4発のハイブリッドがラインアップされた。これは相当燃費がいいだろう。ただし、高級車としてどうか? 試乗会でのお楽しみだ。
燃費がよくてもクラウンはやはり6気筒なのか、乗り比べてみよう。
ガスイーターでは困るが、ハイブリッドなら15km/L以上はいくだろう。V6、2.5Lのほうは8~9km/Lだろうか?
最後のクルマの候補として、クラウンに心が惹かれるいっぽう、かねてから探していたMGも気になる。ひさしぶりにクラシックでも見に行こうか?
そうそうクラシックといえば、先日フレンチが得意な店に出会った。そこにはシトローエンの4CVのきれいなのがあった。そのボスも臈長けた美しい婦人であった。フランス車の似合う女性にはやはり惹かれる。
VWゴルフキャブリオレは毎日の足として使っているが、このクルマのエンジンは静かでスムーズだ。トルクの出方もちょうどいいからとても扱いやすい。キャブリオレということもあり、春は絶好だろうと思っている。だから、乗り換えるにしても春からなのだ。
クラウンはハイブリッド比較で190kgも軽量化したという。凄いことだと思う。かつて日本車は燃費の優秀なクルマが多かったが、昨今の日本車は実燃費でいえばそれほど抜きん出た存在ではなくなっている。その原因のひとつがウエイトだ。さらにいえば装備品の多さといえるだろう。
ライバルのドイツ車は軽くなっている。車重こそが燃費を左右するポイントであることはいうまでもない。日本車の燃費向上のためにパーツメーカーも軽量化を考えねばなるまい。
三菱からアウトランダーPHEVが発表になり、話題になっているが、このメーカーもかつては軽くて丈夫なクルマを作っていたものだ。軽量化というものは、本来技術力の差が出るところだ。
かつての日本車は充分な安全性を得ないでの軽量化だった。現在の日本の法律では最高速度が100km/hだ。100km/hでぶつかっても生存を保証する。それくらいの目標がほしいものだ。
日本車のこれからの大きな目標のひとつは燃費と安全性であろう。こいつを画期的なまでに向上させてほしいものだ。この2つは世界の自動車メーカーに課せられた課題だが、日本メーカーが100km/hでの衝突から生還できるクルマを作ることができれば、世界をリードすることになるだろう。
自動車はボルボのシートベルトに始まって昨今の衝突安全ボディまでずいぶんと安全になったものだと思う。しかし、自動運転がまだ手に入らない今、純粋にクルマのみでは生命の安全は保証できていない。つまり、人間はリスクと安全をはかりにかけているのである。
これを解決するには自動運転以外には難しかろう。自動運転の技術はメーカーではすでにでき上がっているが、問題になるのは自動車に乗る自由と自分の生命を預けるとする考え方である。
たとえば我々日本人は二本差しがなくても平和な生活が送れるが、何人かのアメリカ人は拳銃がないと不安で生きていけないようだ。
それぞれの国にそれぞれの文化と価値観があって生活している。そう考えると、それぞれの歴史と文化を調整することはやはり大いに難しいことだ。
■ピンクのクラウン
(読者からの「ピンクのクラウンをどう思われますか?」という質問に答えて)
* * *
ピンクのクラウンには驚かされましたね。クラウンの伝統に背くのではないかというご指摘ですが、作り手の狙いもあるでしょうから、エンジニアの方とじっくり話をしてから結論づけたいと思います。
ただ、前文にも書きましたが、クラウンは自分で所有してもいいかなと思っています。これまでにも3度ほど所有していたことがあります。その時は目立たない地味な色にします。
クラウンのようなクルマは大量に出回るでしょうから、あえて目立たずさりげなく、足として使いたいなと思います。クラウンの話は改めてする機会があるでしょう。
■MT免許が欲しい
(読者からの「今年の目標はマニュアル免許を取ることです」に答えて)
* * *
自動車運転教習所は年々減っているといいます。おそらく意地悪な教官がいるようなところはなくなるでしょう。
またMT免許を取得する人が減れば、そのぶん手間がかかることになるでしょう。だから面倒でも今のうちに通って免許を取得してください。
クルマに乗れるといろんな意味で世界が広がります。彼女もマニュアルミッションでクルマをコントロールすることで自信が湧いてきたのでしょうね。
免許を取っていろんなところに出かけてください。早ければ早いほどいいと思います。
■ロードペーサーについて
ロードペーサーAP。全長×全幅×全高は4850×1885×1465mmと1975年の時点で堂々の3ナンバーモデルだった。GM傘下のオーストラリア、ホールデン社のプレミアをベースに13B、2ローターを搭載、最高出力は135psで3ATを組み合わせていた。「AP」はマツダの排ガス対策装置
(読者からの「ルーチェがあるのにマツダはなぜロードペーサーが必要だったのですか?」という質問に)
* * *
ロードペーサーありましたね。1975年に誕生していますが、当時としては珍しい堂々とした3ナンバーモデルでした。ホールデンはGM系なので、ボディはシボレー的でした。
このロードペーサーAPは13Bの2ローターを搭載していました。NAですが、ベースは後に登場するRX-7などと同じです。
当時の日本車は発展途上でいろいろなチャレンジがあったのですが、このクルマも、そんなチャレンジのひとつです。
マツダのフラッグシップにはルーチェがありましたが、ルーチェでは物足りない人がターゲットでした。しかし、3ナンバーのクラスはトヨタセンチュリーと日産プレジデントがあるだけでしたから、荷が重く成功とはいえませんでした。
しかし、ロータリーエンジンの特性であるコンパクトで軽いことを考えれば、この大きなクルマに搭載することは、アイデアといえたのかもしれません。
ロードペーサーの販売はマツダとしてもロータリーエンジンがたくさん生産できるということと、ロータリーのリファインのために発売に踏み切ったのでしょう。
■新型レンジローバーの印象
【新型レンジローバー】4代目となるレンジローバーはSUVとして世界初のオールアルミ製モノコックボディを採用。エクステリア/インテリアともモダンなもので新次元のプレミアムSUVとして納得、価格は1230万円からと高価
(読者から発表された新型レンジローバーの印象を問われて)
* * *
レンジローバーは発表会で見ましたが、まだ乗っていません。
5mを超えるボディにフルタイム4WDですから、オールアルミのモノコックボディを搭載したとはいえ、重く、スーパーチャージャー搭載モデルは2.5tを超えています。2.5tのクルマを走らせるエネルギーはそうとうなものです。JC08モード燃費は、スーパーチャージャーモデルで5.3km/Lといいますから、よくありませんね。
SUVはどれも大きく重いためガスイーターになりがちですが、ディーゼルやハイブリッドを採用するという手段はあります。特にディーゼルはトルクが太く重いモデルには有効ですね。
レンジローバーにもV6、3Lのディーゼルハイブリッドモデルが追加されるといいますから、こいつが導入されれば、期待していいのではないでしょうか。
ガソリンエンジンにはガソリンエンジンのよさがあり、一概にはいえないのですが、ランクルも選択肢としてディーゼルハイブリッドが欲しいですね。
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