フォルクスワーゲン Tロック 「SUV版ゴルフ」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

SUV版ゴルフ

2021.9.30

年式

2020年7月〜モデル

総評

実用面では弟分の「T-CROSS」との差が見つけにくく、パワートレインなどメカニズム的にはそれよりも上級とはいえ、価格を考えると魅力を見つけにくいというのが率直なところ。いっぽうでドイツ車濃度が濃いハンドリングなどには、国産車がない個性を感じることができる。そんな走りやデザインに魅力を感じたら積極的に選ぶのもアリだ。

満足している点

高速安定性やキビキビとしたハンドリングが楽しめるドイツ車らしい走りや、国産のこのクラスでは選択肢が少ないディーゼルエンジンの設定は魅力。長距離移動の相棒としては優れたパートナーになりそう。全長が長すぎないので、車幅の割には車庫入れなどもしやすい。

不満な点

新車価格の高さは否めない。また居住性や積載性などパッケージング面において、弟分の「T-CROSS」に対しての大きなメリットを見いだせないのも悩ましいところだ。メカニズム的にはT-CROSSよりも格が上なのは認めるが……。

デザイン

3

コンパクトハッチバックのフォルクスワーゲン「ゴルフ」をリフトアップしたかのような雰囲気。もちろんゴルフとは別設計のボディで、そもそも全長も約4.3mのゴルフに対して4.2mと短いのだが、プロポーションはよく似ている。フォルクスワーゲンは「クーペスタイル」と説明するが、リヤウインドウの傾斜はそれほど強いわけではなく、そのぶん実用性が確保されている。

走行性能

3

日本においては当初、2.0L 4気筒ディーゼルエンジンのみ展開。2021年5月に1.5Lの4気筒ガソリンターボエンジンが追加されている。発進加速の力強さを求めるならディーゼルが魅力だ。ハンドリングは「剛」を重視した、ちょっと懐かしいドイツ車のテイストを受け継いだもの。ドイツ車らしい乗り味に共感を覚えるクルマ好きも少なくないだろう。

乗り心地

2

このところのドイツ車は滑らかな乗り味のモデルが増えつつあるが、T-ROCは伝統的なドイツ車らしさを継承している。そのため、路面の凹凸を拾いがちな傾向にあり、乗員にゴツゴツと感じさせるシーンが多いのは否めないところだ。しかし、それはかつてのドイツ車を知るクルマ好きにとっては馴染みやすい乗り味と言えるかもしれない。

積載性

4

ラゲッジスペースは後席使用時で445L。テールゲートを開けた瞬間にちょっと驚くほどの大容量だ。荷室の床は2段階に上下調整がおこなえ、下げると荷室の天地高を稼げる。上段にセットすると床下収納スペースを拡大できるほか、倒した後席と段差のないフロアになるのが美点だ。後席は左右6：4で分割できるほか、センターアームレスト部分だけの貫通も可能。

燃費

4

ガソリンエンジンのWLTCモード燃費は15.7km/L。ガソリン車としては良好だが、燃費を気にするのであれば18.5km/Lのディーゼル車を選ぶのが正解だ。日常走行でもよほど発進/停止を繰り返すような状況でなければ12km/L程度には届くし、高速道路であれば20km/Lを超えることも珍しくない。そのうえ燃料の軽油もハイオクガソリンに比べて2割ほど安いので、ランニングコスト的にメリットが多い。

価格

2

355万円からの価格は、国産のCセグメントクロスオーバーSUVと比べると高めな印象。しかもこの価格ながら、カーナビを標準採用するのは「TDI sport」もしくは「TDI R-Line」以上だ。パワートレイン的にはこちらのほうが上位だが、実用性と価格のバランスで考えると弟分の「T-CROSS（ティークロス）」も気になってくるところ。