スバル インプレッサ(ハッチバック) 「基本性能は高いがそれだけでは売れないのも事実」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

瓜生洋明
瓜生洋明(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

3

デザイン
3
走行性能
3
乗り心地
4
積載性
3
燃費
2
価格
3

基本性能は高いがそれだけでは売れないのも事実

2024.1.31

年式
2023年3月〜モデル
総評
スバルらしい質実剛健なつくりは、「良いクルマ」であることをひしひしと感じさせる。水平対向エンジンによる気持ちの良い走りや、熟成された足回り、視界と居住性に優れた室内など、クルマとしての基本性能は高い。その反面、デザインやパワートレインにある種の野暮ったさを感じる部分も多く、新しいものを好むユーザーはいくらかの不満を覚える部分も多いかもしれない。
満足している点
剛性の高いボディとしなやかな足回りが生み出すハンドリングは、このカテゴリーにおいて随一のレベルを誇るものだ。質実剛健なつくりのエンジンはもちろん、運転席周りの質感やシートの快適性、先進安全運転支援システムの充実なども含めて、ステアリングを握るドライバーの満足度は非常に高いと言えそうだ。さらに、それをこの価格帯で実現しているのは、運転を楽しみたいユーザーにとってはありがたいと感じることだろう。
不満な点
このクラスとしては必要十分なパワートレインを備えていることの裏返しとして、燃費性能は決して良くない。先進的な安全運転支援システムを備えている一方で、パワートレインに目新しさを感じないのは、ややチグハグ感を覚える。またスポーティなフロントデザインに対して、リアのデザインがやや鈍重に思える。それらを含めて「スバルらしい」と言えばそうなのだが、それを理解するスバルファン以外にもこのクルマの魅力を届けるためには、やはりもう少しわかりやすい魅力が必要かもしれない。
デザイン

3

フロント周りはスポーティかつ洗練された印象だが、リアのデザインはそれとは裏腹に鈍重さを感じてしまう。ただ、腰高なデザインが前方および後方の優れた視界の確保や、後部座席の居住性に貢献しているため、デザインよりも実用性を重視するユーザーにはそれほど気にならないかもしれない。インテリアについては、大型のディスプレイや握りやすいシフトノブなど、ドライバーを最優先に考えたデザインとなっている。それ以外はどちらかと言えば地味なほうだが、シートのホールド感の良さなど、目に見えない部分で質感の高さが感じられる。
走行性能

3

1.6リットル/2.0リットルともに、パワートレインに関しては必要十分以上のパフォーマンスを発揮する。スバルのコア技術のひとつであるシンメトリカルAWDとの組み合わせがベストだが、FFもよりクイックなハンドリングが感じられるという点では、選択する価値は大いにあるといえるだろう。一方、これらはあくまでも既存のガソリン車と比べたときの感想であることは注意しておきたい。ハイブリッド車のような、電動パワートレイン搭載車からの乗り換えとなると、その走りに野暮ったさを感じてしまうことがあるかもしれない。
乗り心地

4

剛性の高いボディとしなやかな足回りは、ドライバーはもちろんどの座席に座る人にも快適さを感じさせる。通常、このクラスのクルマは、後部座席の快適性が前席に比べてやや劣りがちだが、インプレッサの場合はホールド感の高いシートや居住性の高さも相まって前席と同等の乗り心地を実現している。ただ、静粛性についてはやや課題を感じる部分も。
積載性

3

ラゲッジルームの広さはこのクラスとしては平均的なものだが、開口部が大きい分、荷物の出し入れはしやすい。それ以外の収納についても特に過不足は感じない。ちなみに、USB Type Aに加えてUSB-Type Cのソケットも標準装備となっているのはうれしいポイント。
燃費

2

燃費性能には課題があると言わざるを得ない。郊外の一般道や高速道路では走りの良さが上回るが、スタート・ストップの多い都市部では燃費性能の低さを感じずにはいられないだろう。燃料タンク容量も平均的なサイズのため、航続距離も決して長くはない。せっかく走りの良いクルマであるだけに、この点は少々残念なところだ。
価格

3

300万円前後で購入可能なモデルとしては、十分以上の走りの質感や充実した機能装備を持っていると言えそうだ。ただ、このクラスをリードするトヨタ「カローラ」と比べると燃費性能の低さが目立つのも事実だ。ガソリン代などのランニングコストまで考慮に入れると、走行距離によってはコストパフォーマンスが高いとは言えなくなってしまうかもしれない。
瓜生洋明
瓜生洋明
自動車ジャーナリスト
1987年生まれ。大手IT企業や外資系出版社を経て2017年に株式会社ピーコックブルーを創業。現在では平均年齢25歳のメンバーとともに毎月300本超の記事を配信している。愛車のボディカラーを社名にするほどのエンスージアストだが、新しいテクノロジーへの関心も強く、最新モデルは常にチェックしている。
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