違いを楽しむ人の…
国内では月々わずか数百台とつつましい販売を続けるインプレッサのセダン。ギリシャ語で『安心』『信頼』を意味するという『アネシス』のネ
2009.11.24
- 総評
- 違いを楽しむ人の…
国内では月々わずか数百台とつつましい販売を続けるインプレッサのセダン。ギリシャ語で『安心』『信頼』を意味するという『アネシス』のネーミングも、なかなかどうしてこの車にふさわしい名前だと思うようになった。
ハイブリッドでもなければ3列目シートもない、燃費も馬力もそれなり、質素な内装とあいまってあまり多くの目には留まらないかもしれない。おまけに往年のレガシィファンからは『レガシィ』じゃなきゃヤダと言われる始末。実は先代レガシィB4と比べてもわずかに室内は広くなり、乗り心地や静粛性も良くなっているというのに。
偉大な兄レガシィを持つことの苦悩が忍ばれるこの車だが、見方によっては名立たる高級車や外車と並べても、積極的に選びたくなるキラリと光る個性を持っている。
- 満足している点
- 米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は車が単独事故を起こした際、死傷率の高い横転につながる危険性を調べるため、試験車両についてstatic stability factor:SSFという値を計測しホームページ上で公表している。
http://www.safercar.gov/
SSFはトレッド幅を重心高の2倍で割った値で、つまりタイヤの間隔が広く重心が低いワイド&ローな車ほどSSFは高く、横転の確率は低い。
Dセグメントの代表的なSSF
アテンザ 1.49、アウディA4 1.46、アコード1.46、スカイライン 1.45、レクサスIS 1.45、BMW3シリーズ 1.44、ベンツCクラス 1.43、カムリ 1.42など
Cセグメントでは
アクセラ 1.41、ボルボS40 1.40、インサイト 1.39、カローラ 1.36、プリウス1.36、ギャランフォルティス 1.36、VWゴルフ 1.36など)
ちなみに重心の高いSUVやピックアップトラック、ミニバンなどは1.0~1.3の間に分布する。
インプレッサセダンのSSFは1.44。この値はCセグメントの群を抜いている。1500mm以下のショートトレッドながら、ワンクラス上のDセグメント並みのスタビリティを備えているのである。しかも155mmというたっぷりとした最低地上高を確保しているあたりがいかにもスバルらしい。
このように、スバルが水平対向エンジンにこだわり続けるのにはそれなりの根拠があった。私は普段ハッチバックに乗っているが、確かに頭が左右に振られるような不快な揺れがなく、しなやかで安定感のある走りがとても気に入っている。
水平対向レイアウトには低重心のほかにも前面衝突の際にエンジンがキャビン内に進入するのを防いだり、ボンネット直下をスカスカにして歩行者の頭部保護性能を高めたりする副産物もある。
最近、米国道路安全保険協会(IIHS)は高い衝突安全性が認められる「2010トップセーフティピック」全27台を発表したが、スバルはラインナップすべてが選ばれた唯一のメーカーだという。
わが国の自動車アセスメントでも07/08年のインプレッサのグランプリ受賞をはじめ、翌年にはフォレスター、エクシーガともに優秀車、09/10年度前期の試験結果では新型レガシィがトップの成績を収めている。
- 不満な点
- 惜しむらくは、国内では『子供が生まれたらミニバン』のような固定観念が市場に定着してしまっていることではないだろうか。セダンというだけで見向きもしないユーザーも多いと思う。本当に家族のことを想うなら、ドア開口部や天井の高さばかりでなく、SSFの高さで車を選ぶべきだ。
但し、仮にも『安心』を名乗る車に横滑り防止装置のオプション設定すらないのはいかがだろうか。スバルのエンジニア曰く、シンメトリカルAWDはナチュラルVDCのようなもので、もともと慣性モーメントが小さくスピンモードに陥りにくいのだと言う。確かにVDCの出番は少ないだろうが、もともと雪国ユーザーの多い車だし、基本性能が高い車に電子制御を加えてこそ車の安全マージンは新たな広がりを見せるのではないか。
もし国内でもややグレードの高いタイヤを履き、カーテンエアバッグやVDC、アイサイトまでつけたまさに究極のアネシスがあったなら、ベンツやボルボもかくやと思わせる世界一安全な実用車になれるだろう。
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